くれない
2008年08月17日
19:59
ナレーション 「つ、ついに・・・! むらさきとアイリスが5年ぶりに再会をする瞬間(とき)が来ました。
この二人が接触することにより、物語の歯車はこれからどう噛み合っていくのでしょうか・・・
それでは、さっそく・・・ご覧頂きましょう~。。。レディィィィィィィィィィィ・・・ゴォォォォォォォオ!! !!! ! 」
ピーンと空気が張りつめている甲板の上をひとり歩いて、帆船の中央あたりまで移動したむらさき・・・
黒衣の貴婦人の名に相応しく、その外観はもちろんのこと・・・内部の調度品ひとつひとつに至るまで、
一流の匠の技が施されている・・・
これほどまでに美しく雄大なセント・ライラ号であるが、辺りにまったく人影はなく・・・
あちらこちらに無造作に置かれている棺おけだけが、まるで何かを語りかけてくるようだ。
・・・その姿は例えるならば、永遠(とわ)に漂流することを運命づけられた・・・巨大な墓標のようである。
その緊張を破るように・・・闇の貴公子、魔王・・・いや、むらさきはそっとやさしく囁きかけた。
アイリスとは留学している時に、共に同じ研究チームに5年ほど一緒にいた訳だが・・・
互いに尊敬し合ってる間柄だと、むらさきは認識していた。。。
もちろん、当時のアイリスの気持ちにも、当然気づいてはいたのだけれども・・・
それから、祖国日本の恩師に封印の研究の件で急遽、呼び戻されることになり、アイリスの目の前から、
逃げ出すような格好で姿を消したのであった。
その帰国した日本で、恩師の一人娘である小紅と会うことになるのだが・・・
一方、アイリスはというと・・・むらさきが去ったあとも、一途にむらさきだけを想いつづけ、いつか再会し、
その胸に飛び込んでいける事だけを信じて、今日までやってきたのだった・・・
このままでは、心臓が爆発してしまうのでは?・・・と思えるほど高まる胸を、必死におさえつつ、
アイリスは一歩一歩、踏みしめるようにゆっくり歩きながら・・・姿を現した。
アイリス 「・・・あ、会いたかったわ・・・むらさき、ずっとずっと・・・会いたかったの」
むらさき 「・・・元気そうだね、アイリス」
アイリス 「・・・何もかも、貴方の為よ。。。貴方の為にしたことなの・・・わかってくれるわよね?」
むらさき 「・・・小紅をどうしたんだ、アイリス」
アイリス 「・・・私、ちゃんとわかっているのよ・・・むらさきが私の為に、封印の生贄として小紅を
用意しててくれたって事もね・・・だから、そうしたのよ。。。
やはり、貴方が選んだだけのことはあるわ・・・
小紅の潜在能力は、私の思っていた以上のものだった・・・素晴らしい逸材ね。。。
見事に、生贄として役に立ってくれたわ・・・」
むらさき 「っく、アイリス・・・キミは、なんてことをしたんだ。。。」
アイリス 「・・・あら、全ては貴方の為なのよ・・・むらさき」
目の前にいるアイリスは、むらさきの知っているあの純粋無垢なアイリスではなかった・・・
いまの彼女は、すでにいくつもの封印を解除し、その能力を自分に取り込んでる間に・・・
自分自身も気づかないうちに違う人格らに憑依されており、己の意志以外のものに操られていたのである。
アイリス 「・・・それほど気になるのなら、自分の眼で確かめてみたらいいわ、小紅ならそこにいるから」
そう言ってアイリスが指差した方向に現れたのは、ひときわ異彩を放つ漆黒の棺(ひつぎ)であった。
むらさき 「・・・小紅!」
アイリス 「・・・ねぇ素敵な棺でしょう?・・・私、最高のものを用意したのよ、新しい門出を祝うものだしね」
漆黒の棺に、静かに横たわっている小紅・・・彼女はすでに息をしていない。。。
ぱっと見た感じだけなら、まるでただ眠っているかの如く・・・呼べばいまにも起きてきそうなのに。。。
むらさきは、すぐにも駆け寄って小紅を抱きしめたい衝動にかられたが、なんとかそれを抑えた・・・
むらさき 「・・・どうやら、私の知っていたあのアイリスは、もういないようだな。。。」
むらさきは必死に己を制御しようとしていたが、自分の中にいる魔王を制御することは出来なくなっていた。
みるみると己の形相が変わっていくのを感じる・・・自分を抑えられなくなった時、むらさきは魔王になる・・・
そう魔王に取り込まれてしまうのだ・・・!!
アイリス 「・・・忘れていたわ、貴方も面識あったのよね・・・BARのちょびさんとは。。。
彼女もその役目をちゃんとまっとうしてくれたのよ・・・
小紅が承諾したのも、ある意味彼女のおかげよねぇ・・・でも、その方法は聞かないでね。。。うふふ」
アイリスの足元遥か下、セント・ライラ号の最下層に、いくつもの棺おけと共に・・・
横たわっているちょびママさんの姿があった。
な、なんという事なんだろう・・・無残に討ち捨てられたその姿は、首が異様な角度に折れ曲がり、
胸には刺されたような傷跡・・・そして、辺りには大量に溢れ出してできた血溜まりもある。
アイリス 「・・・小紅も生贄になってくれた事だし、もう不要になってしまったの・・・それだけの事よ。」
むらさき 「・・・!」
あまりの事に、むらさきは我を忘れてしまった・・・そう自制心をなくしてしまったのだ。
むらさきの中の魔王が、その一瞬の隙を見逃すこともなく・・・いままで抑えられていた邪悪な力が、
噴火する火山のように・・・マグマのように噴き出してしまったのだ。。。
さっきまで息を潜めるように静かだったのだが、それに呼応するかのように・・・
この黒衣の貴婦人・・・セント・ライラ号はいっきにその秘められた能力を開放するかのように、
爆発的なエネルギーを止め処もなく押し出し始めた。。。
アイリス 「・・・いよいよなのね。」
これまで封じ込められていた、凄まじいまでのパワーが溢れ出してきて、そのため、この周りの空間さえも
巻き込んで歪んでしまっている。
小紅の生贄、そして、魔王の邪悪な力の解放という2つの条件を満たし・・・封印は解除されたのだ。
この時のアイリスは、これが開けてはならない「パンドラの箱」であったことをまだ知らない・・・
この封印を施されたセント・ライラ号は・・・我々、人類が踏み込んではいけない領域のものだったのだ。。。
しかし、もうすでに時は遅し・・・パンドラの箱は、開け放たれてしまったのである
神話に残る伝承のように、あらゆる数の禍々しいものたちが一斉に飛び立ってしまったのだ・・・
箱の中に残されたものは・・・「希望」という名の「絶望」だとも知らずに。。。
何も知らず喜びに打ち震えているアイリスであったが・・・
彼女の姿にも変化が訪れていた・・・
開放された封印の力が彼女に降臨してきている・・・
この黒衣の貴婦人、セント・ライラ号に封印されていたのは・・・
禍々しいものたちを封じ込めていた力の源である。。。
・・・それは、なんと「天使」の能力であった・・・
いつしか、まばゆく光り輝く羽根を有し、アイリスは徐々に、美しい天使の姿になっていったのである・・・
こうして見ている分には、いっさいの邪悪なことなど感じることはなかった。。。
アイリスは己の変貌していく様に、歓喜していた・・・
アイリス 「・・・みえる?むらさき。。。私やったわ、私やったのよ・・・貴方の為に手に入れたの・・・
ねぇ、褒めてくれる?・・・これからは私だけをみていてくれるでしょ?」
そう熱く語りかけてくるアイリスに、魔王の返事はなかった、いや、できなかったのだ。。。
その圧倒的なパワーの前に、身動きすらできなかったと言ったほうが正しかった・・・
だが、そのことにより・・・再び、むらさきが魔王を封じ込める事が可能となった。
むらさき 「・・・アイリス、キミを止められなかった私を許してくれ・・・」
驚異的な変化をとげていくアイリスを目前にして、むらさきは悲しそうに、そう呟いていた・・・
このやりとりを、遥か上空から眺めていたのは・・・ボルドその人である。
前回同様、彼は、誰にも気づかれないまま、全てをみていた・・・
まるで、さも予定通りに事が運んでいるというように平然としたままにだ。。。
これまでの言動から考えてみても・・・彼、ボルドの目的は一切、見えては来ない。。。
しかし、ただ単に「人のいい坊ちゃん」・・・というだけでは済まされない状況だ。
今回、傍観者を決め込むような素振りをしてはいるが・・・どこか油断ならない存在である・・・
この後、彼がこの物語にどのようにして絡んでくるのかはまだわからないが・・・
最後まで、ただ傍観しているという事は決してないであろう。。。
では、次回・・・ついに封印を解除し、天使の能力を手に入れたアイリスと、真っ向から対立する、
魔王、むらさきの攻防をお見せすることにしよう。。。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・セント・ライラ号に封印されていたのは、天使の能力だったのですね~ ^^;
しかし、神の御使いである天使の力であれば・・・手に入れても、魔王の力よりよっぽど有益であり、
人類の為にもなるというものですが・・・それって、使う人の心によるって事ですかね (謎)
・・・この期に及んでも、我らが主人公、くれないはいったい何をしているのでしょうか?!
ぐずぐず、もたもたとしてる間に・・・小紅やちょびママさんが、あんな事になってしまいました。
これって、お気楽お笑い探偵ものじゃなかったのかーーーー!! !!
ハァハァ・・・失礼、ちょと興奮してしまいました・・・
このままの感じですと、どこかの某アニメ監督よろしく、皆殺しの○○・・・作品のように、
登場人物全員が、悲壮な最期を迎えて・・・THE・END って事にもなるかもしれないなぁ・・・ (謎)
そんな事にならないように・・・みんなも応援しててね w
ではでは、また次回、この場所、この作品でお会いしましょう~。。。♪」 ←さらっと逃げるなー!