くれない
2008年10月02日
03:00
既にむらさきも倒れ、くれないも消え去った・・・いまの小紅はたった一人で、目の前にいる最凶の相手、
堕天使、アイリス・・・いや大魔王と戦わなければならない。
この状況においても、小紅の有する封印は目覚める気配もなく、ただ小紅を守護し続けてる・・・
果たして、このままで、小紅に勝機はあるのか・・・?
それとも、大魔王の手により闇の黙示録は実行されてしまうのだろうか・・・ !?
ナレーション 「・・・すでに戦いはもう戻れないところまできていた、一見すると、単にむらさきを巡る、
二人の女性同士の争いと取れない事もないが、そこに世界の平和がかかってくるとなると、
・・・もう話は全然、別な側面をみせることになる。
己の限界を超えて、いま出せる最大限の力でもって攻撃を仕掛けてくる大魔王に対して、
一方の小紅はというと、ただ防御するだけしか出来ないのである。
いまのままで、どちらが有利であるかは目に見えてはっきりとしていたのだが・・・。」
絶対的不利なこの状況においても、小紅は実に冷静に、この展開を見ていた。
もしも、こうだったらいいのに・・・と楽観的な考えは持ち合わせず、最悪の場合を想定しつつ、
二手三手先を読みながら行動していたのであった。
そして、最後に残された方法をとる、最高のタイミングを計っていた・・・
だが、それは、とても大きな賭けでもあったのだ。
アイリス 「・・・どうした、・・・そう逃げてばかりでは、・・・何も解決せぬぞ、・・・もうよいではないか、
・・・観念して、・・・楽になったらどうだ、・・・もはや誰も助からんのだしな。。。」
小紅 「・・・。」
アイリス 「・・・ふっ、・・・なんと、・・・強情な娘だ。。。」
そういう強気な発言をくり返す大魔王にも、かなり疲れが見え始めた・・・
元来、この最終形態を維持するという事は、とてつもなくエネルギーが必要なのである・・・
とても永い時間の封印から復活したばかりであるし、アイリスの器の許容力も関係もあって、
あまり長く続けていられないのだ。
そこらの事情も考慮して、小紅は状況を判断していたのだが・・・
ベストのタイミングというには及ばず、打って出るまでには至らないでいたのだ。
アイリス 「・・・こうしていても、・・・埒があかんな、・・・では先に、・・・そこのむらさきなる、
・・・その亡骸から、・・・無に帰してやるとするかな。。。」
小紅 「・・・!! 」
こういってはアレだが、死者を冒涜する事など・・・魔族には何の躊躇いもないのであろう、
その点において、大魔王ともなると、さぞかし平然とやってのける事なのだと・・・頷けもする。
最悪の場合も想定していたはずだったが、そこはそれ、対人間相手の範疇でしかなかった・・・
これには、さすがの小紅もいつもの冷静さを失ってしまった。
そして、大魔王が行動に移す前に、韋駄天よろしく・・・、― きっと、考える前に身体が動いてた ―
まるで瞬間移動したか如く、大魔王の目前に突如現れた小紅渾身の怒りを込めた必殺の、
捨て身アタック!が・・・その憎むべき大魔王のどてっ腹めがけてヒットしていたのだ!
小紅に残された秘策とは、そう、それは・・・小紅自身を標的目掛けてぶつけるという特攻であったのだ!!
しかし、それは、小紅を守護してる封印の力が足りなければ自滅してしまうという、諸刃の刃でもあった。
幸いながら、そのガードの防御能力は有効で、小紅の身体にさほど影響しなかったのだが・・・
タイミング的には、お世辞にも最良といえるものでもなかったので、その威力は思ってたほどは出なかった。
≪~ 実際、小紅は一族に代々伝わる封印の唯一の継承者として、幼い頃よりローズマリーらと共に、
厳しい訓練を受け、己を律するよう教育を受けてきた。
その実力は、ローズマリーにも決して負けてはいない・・・そう相手がただの人間であれば、そうそう簡単に、
遅れをとる事などないよう修行をし、常日頃から鍛錬しているのである。 ~ ≫
アイリス 「・・・ぐはっ!・・・な、なんだと。。。」
小紅 「そんなことは、させないわ!」
そんな小紅の激しいまでの感情を大魔王は、予想していなかった・・・それ故の直撃とも言えた。
・・・が、しかし、よろめいて、うずくまっただけで、すぐさま起き上がり・・・先程のくれないへの攻撃同様、
横たわっているむらさき目掛けて弧を描くように、口から凄まじい衝撃波を放ったのだ。
小紅 「・・・はっ!」
アイリス 「・・・くかかかっ、・・・愚か者め、・・・所詮は、・・・人間の小娘風情が、・・・この我輩に、
・・・楯突くなど、・・・な、なに?。。。」
すごい衝撃波の直撃を受けて、さき程同様、何も存在しない「無」の空間がそこにあるはずだった。
しかし、そこには、むらさきを庇うように立ちふさがっているひとつの影があったのである・・・
そう、それはさっき、大魔王の攻撃の前に敗れ去って、塵と化したはずのくれないであった。
彼が再び、大魔王の野望を阻止せんが為に、地獄の闇の底深くから颯爽と蘇ってきたのだ!
くれない 「よっ、待たせたな小紅、・・今度こそ、あとは俺に任せろ!」
小紅 「・・・くれないくん、無事だったの?」
くれない 「いや、さっきので確実に1回死んだよ・・・だけど、その事により、俺の中のリミッターが、
やっと解除されたみたいでな、さらに進化したというか・・・また生まれ変わったというか・・・ (謎)
なんか、うまく説明はできないが、これがアンデッドの持つ力のひとつらしいな。」
アイリス 「・・・性懲りもなく、・・・またやられに、・・・舞い戻ったのか、・・・この歴然とした、
・・・力の差を、・・・何度でも、・・・思い知るがいいわ!。。。」
しかし、今度のくれないは・・・いままでとは違っていた。
再び、小紅にむらさきのガードについてもらい、入れ替わるようにくれない自身は、
・・・大魔王に向ってゆっくり平然と歩いていった。
あの強敵である大魔王の次々と繰り出してくる、強力な衝撃波にかすりもしないのだ。
・・・いや、その衝撃波がすり抜けるといった方がいいのか、どうやら、直撃する瞬間に身体が霧状になり、
全て、受け流してるのである・・・これもヴァンパイアの得意とする技のひとつであった。
くれない 「ふっ、遊びは終わりだ、もう一度永い眠りにつくがいいぜ。」
アイリス 「・・・なんだと、・・・これでは、・・・あの時と、・・・同じではないか !?。。。」
くれない 「へんっ!・・・あんたのご自慢の衝撃波も、当たらなければどうってことないからな。」
そして、真ん前までやってきたくれないの全身全霊を込めた、ヴァンパイア奥義のひとつである、
「必殺!魔神斬り!! 」が、大魔王を・・・そう、大魔王だけを貫いたのである・・・
見ての通り、いくつもの無数の剣が、同時に相手を貫いて・・・その相手の魔の部分だけを、
切り離すという、対悪魔用の最終兵器なのである!
アイリス 「・・・ぐわーっ!・・・なんということだー !?・・・この我輩が、・・・よもや。。。!! ! 」
くれない 「・・・いまだ、小紅!・・・こいつを封印してくれ!! 」
小紅 「・・・えっ?・・・何言ってるのくれないくん。」
くれない 「・・・大丈夫、俺を信じてくれ、小紅はただ祈ればいいんだ・・・さぁっ!」
半ば、くれないに言われるがままに、小紅は両手を合わせ、精神統一して祈りの言葉を捧げた・・・
咄嗟の事であったが、昔から小紅の一族に口伝でのみ伝えられてきた言葉が自然と口から出たのだ。
― でも、もう誰もその言葉の意味を理解してるものは生きてはいないのだが。。。 ―
すると、どうだろう・・・小紅の身体がさらにも増して輝きだして、もう目を開けていられなくなるほどになった。
そして、そこらの辺りに散乱してた比較的大きく立派な棺のひとつに強固な結界が張られ、
その中に、大魔王を封じ込めてしまったではないか・・・
そう、しかも・・・大魔王の邪悪な心だけを封じ込めるという奇跡の御業を起こしたのである。
そのあと、小紅を纏っていた光は、眩い黄金色に変わり・・・黒衣の貴婦人、セント・ライラ号を包み込んだ。
それは、帆船全体を優しく、暖かい光で満ち溢れさせて・・・いつしか、消えていった。
くれない 「・・・やっぱ、すげえよな。。。記憶にあった通りだったなんて。」
そのくれないの声で、まだ放心状態であった、小紅も意識を取り戻した。
小紅 「・・・何が起こったの?・・・あたしに」
くれない 「・・・さっきのが小紅が受け継いでる封印の力の一部なんだよ、相手を封じ込めてしまうという、
とてつもない事が、小紅にはできるって事だな・・・まぁ多少の条件はあるだろうけども w」
小紅 「・・・そう、そうなの。。。でも、そんな事よりも・・・あたしは。。。」
両手放しで喜んでいるくれないの手前もあり、小紅はその先の言葉を飲み込んだ・・・、
するとその時・・・さっきまで、大魔王であったアイリスがヨロヨロと立ち上がり、意識を取り戻したのだった。
アイリス 「うぅっ、・・・あ、頭が・・・いえ、身体中が引き裂かれてしまったように痛むわ。。。」
くれない 「おっ、アイリス、無事だったのか・・・そいつは、なによりだったな。」
アイリス 「・・・私も、自分の中に閉じ込められてはいたけど、なんとか全て見て聞いてたわ、
・・・いろいろと、小紅にも、他の人にも酷いことをしてしまったかもしれないけれど、
でも、・・・でも、それよりも・・・むらさきが、むらさきが !?」
小紅 「・・・。」
そんな3人の様子を遠巻きに伺いながら・・・静かに息を吹き返したひとりの姿があった。。。
そう、それは・・驚くべきことにむらさきであった。
あの大魔王との戦いで絶命していたはずの、魔王こと・・・むらさきが、なんと生き返ったのである。
これは、どのような仕組みで蘇ったのかわからないが、小紅から発せられた黄金色の光が、
むらさきを包み込んで、離れてしまったはずの魂と身体を再び結びつけたのだとしか考えられなかった・・・
ますます、謎は深まるばかりである・・・小紅の持つ、封印の正体とはいったい・・・ (謎)
小紅 「・・・むらさきさん!」
アイリス 「あぁ~っ、私の、私のむらさき・・・生きて、生きていたのね!! 」
くれない 「に、兄さん・・・ !?」
三者三様の驚きの声に、むらさきも何がなんだか・・・まだ状況がよく飲み込めてないようだったのだが。
むらさき 「・・・あっ、えっと・・・その、ただいま ^^;」
日頃、常にクールなむらさきらしくもなく、若干照れ笑いして、三人に熱く迎え入れられたのだった。
その様子を、こっそりと、もうひとり、上空より最初からずっと伺っていた人物がいた・・・
そう、それは、未だその正体がわからないままの獣医、ボルドである。
そんな不気味な発言を残して、少し雰囲気にも変化が訪れているみたいなボルドのその姿は、
この異次元にある異空間の景色にスッと、とけて見えなくなった・・・
彼の正体はいったい何者なのだろうか・・・そして、その目的とは?
(~ それは、きっと次の闇の黙示録編にて・・・徐々に解き明かされていくのであろうが ~ )
・・・結局、最初から最後まで、誰にも気づかれる事なく、彼の姿は露と消えてしまったのである。
そんな事など、当然知らない甲板の4人は、お互いの無事を祝い、互いの情報を交換したりして、
これまで起きた様々な事を少し整理していた・・・。
小紅 「・・・もしかしたら、ちょびさんも今ごろ生き返ってるかしら?」
≪~ だとしても、首が異様な角度に折れ曲がったりしてたままだったら怖いよなぁ、どうしよう ~ (謎)≫
アイリス 「残念だけど、その可能性はないわ。だって、あれも精巧に似せて造ったアンドロイドだもの。
修理することはもちろん可能だけども・・・あそこまで壊れると、いっそ造り直した方が早いわねぇ。」
そんなアイリスの言った事など、まるで聞こえなかったかのように・・・小紅は続けた。
小紅 「・・・そうだわ、さっき、記憶がどうのって言ってたわよね、くれないくん。」
くれない 「あぁ、ヴァンパイアの力と共にその歴史の記憶を一緒に受け継いだんだよ・・・」
むらさき 「そいつは、すごいじゃないか、くれない。」
すでに、今の格好は・・・もう魔王ではなく、本来の姿である人間のむらさきであった。
くれない 「・・・ったく、茶化すなよな。。。それで、蘇った時にその記憶の一部がすっと入ってきたんだよ。
ずっとその昔に、あの大魔王を封印したのは、この俺に力を与えてくれたアンデッドの王・・・、
暗闇の支配者でもある、通称(コードネーム):伯爵ってヴァンパイアと、もうひとりはと言うと・・・
とても重要な役割を果たした、ひとりの日本人女性だったんだって事がな。。。
つまり、その女性ってのが小紅の何代も前にあたる、当時、封印を継承してたご先祖様だったという訳さ。
今回、偶然か奇跡か、またその条件が揃ったことで、あの大魔王を封印することができたって事だな。」
その話を、興味津々で聞いていたアイリスは・・・好奇心に満ち、目を爛々と輝かせていたのだった。
アイリス 「あとで、じっくり詳しく聞かせて頂戴ね、くれない。。。早速、レポートにまとめるわ。」
くれない 「・・・おいおい ^^;;」
くれない 「・・・しかし、考えてみると、すごいことの連続だったな・・・こんなことが実際あるなんて、
数日前の俺なら、ほとんど信じるなんてできなかったぜ。」
むらさき 「まぁ、積もる話はあとにしようか・・・この封印を完全にする為にも、ここにもう一度、
外から強力な結界を張らなくてはならないな・・・、じゃあ、ひとまず我々の世界へ帰るとしよう。」
むらさきのその合図に合わせるかのように一行は、協力して新たに空間を繋げ・・・
この不思議な異次元の異空間を、名残惜しくも後にしたのだ・・・
いざ、さらば!・・・黒衣の貴婦人、セント・ライラ号よ。。。再び、末永く、静かに眠っていてくれ!!
魔王編 -完-
ナレーション 「・・・はいっ、長かったこの魔王編シリーズもようやく終わりまで、こぎつけました。
これもひとえに、作者ひとりの努力の賜物でありまして。。。~といいたいところですが。 ←おい!
・・・途中で投げ出し放置してた時にも暖かい目で、『・・・はやく、続きが読みたいわ』。。。と、
叱咤激励してくださった読者のみなさんのおかげでございます ♪
ところで、あれやこれは、いったい・・・どうなったんだよ !? ・・・と疑問も多々ありましょう ^^;
そこで、これから数回?に渡りまして、魔王編 -エピローグ-として、その後の登場人物たちを追っていき、
みなさんに、そのご報告をしたいと思います。 ←それって、完結したとか言わないだろ !?
まぁ、とにもかくにも、あの大魔王の恐怖から我々人類はついに解放されたのです、よかった、よかった。
― しかし、すでに闇の黙示録はもう始まってしまったともいわれています・・・ ―
・・・で作者が、この続きを書くか、書かないかは~、あなた次第です!」 ←また他人任せかい!! !