くれないの使命

くれない

2009年03月08日 10:24


どもども~っ、今回も引き続き・・・好評のあの “ 偽くれない ” シリーズっす ♪
前回、ちょびママさんに拒否られて~傷心のまま逃げ出したくれない(偽)なのですが。。。

・・・では、どちら様もごゆっくりとご覧くださいませ w 




 ※ ほどよく彫刻の施された浴槽にひとり、ゆっくりと身をゆだね物思いにふけるご存知、マスターボルド


ここは、ボルドの隠れ家になっている城塞都市の奥深く・・・
いくつかある浴室のひとつなのだが、瞑想ルームにもなっている場所である。


先ほど、くれない(偽)から “ 脱出してこちらへ向っている ” と報告があったばかりである。


彼がここへ戻ってくるのは、2号・・・いや美々と共に、
あのモザイク・グラスへ送り出して以来になるから、けっこうな時間が経っていることになる。


前回、空母から逃げ出す際に使ったプロペラ機は早々に乗り捨てて、
あえて公共の交通機関を乗り継いでの脱出劇・・・彼の足跡は、闇にまぎれてみえはしないだろう。


 ボルド 「・・・やはり、オリジナルの持つ “ 弱さ ” が出てしまったのだろうね。」


くれないのオリジナルといえば、もちろん、この物語の主人公、
我らの “ くれない ” のことになるのだが・・・。




 ※ 連絡を受け、駆けつけた2号こと美々と一緒に・・・ふたりで、彼の帰還を待っている暖炉の前のボルド


 美々 「・・・そろそろ、彼が指定してきた時間ですね。。。マスター


 ボルド 「そうだね、彼は律儀だから・・・きっと予告通り、定刻に現れると思うよ。」


そう答えるマスターを熱い視線でみつめている美々と、
それを充分わかって、やさしく微笑をたたえている・・・ボルド


 美々 「やはり、向こうで何かあったのでしょうか?」


 ボルド 「・・・彼は繊細だからね、向こうでは困難の連続だったのじゃないかな。」


 美々「そうかもしれませんね。」


 ボルド 「ふっ、人を想うということは容易いことではないさ・・・、ん、着いたようだね。」   


そう言って、言葉を遮るようにボルドはこちらに向ってくる人影をみつめた。




 ※ あまり元気がない様子でやってきた、偽くれないと・・・久しぶりに対面を果たす美々ボルドであった。


その姿は、みるからに落胆しているのがわかる様相で、
全身からマイナスのオーラを存分に醸し出していた。


それでも、ここへ来るまでは・・・懸命にそれを隠してきたのであろう。

敬愛するマスターの顔を見て、いっきに気が緩んでしまったと思われる。


 くれない(偽)マスター・・・ただいま戻りました。すいません、任務を遂行できませんでした。」  


 ボルド 「おかえり、よく無事で戻ってくれたね・・・それが何よりだよ。」


 美々 「おかえりなさい、ご苦労さま。」  


くれない1号 ” として、このふたりがモザイク・グラスに派遣されてから、
まぁ実際にはそれほど多くの時間はかかっていなかったのだが・・・


この世界に誕生して、まだ3年にも満たないくれない(偽)には、離れて過ごした初めての長い期間になる。


それは、ほんとの肉親ではないのだが、唯一無二の親でもあり兄でもある存在、
またまこと心を許しているマスターボルドに会えないという、強い不安もあったことだろう。




 ※ 安心したのか、いっきに心が砕けてしまい、駆け寄ったボルドにその身を預けて抱擁される偽くれない


 くれない(偽)マスター、俺、俺っ・・・!」 


 ボルド 「つらかったろうね、いいのだよ・・・好きなだけ泣くといい。」


 くれない(偽) 「う、ううう・・・。」


まるで子供のように泣きじゃくり、目からは熱い涙がとめどなくあふれ出た・・・  

しばらくすると、ひとしきり泣いてすっきりしたのか、
さっきまでの嗚咽もなりをひそめ・・・静かに落ち着いたようである。


 くれない(偽) 「・・・取り乱して、すいませんでした。。。報告致します。」


 ボルド 「そんなことは、ちっともかまわないよ・・・積もる話もいろいろしたいのだけど、

 まずは、キミの心と身体の疲れを癒すことが、何よりも大切だとボクは思うよ。」  


 くれない(偽) 「・・・マスター。」


 ボルド 「さぁさぁ、立ち話も何だから・・・まずは椅子に腰掛けたまえ。」  




 ※ 本当は、・・・心の中ではいったい何を考えているのか全くわからない、この先の鍵を握る人物ボルド


そうボルドに促されるようにして、やっと席についたくれない(偽)であった。

そのふたりの様子をじっと黙ってみつめていた美々は、ちょっと心中複雑な思いであったのだが。。。


 くれない(偽) 「先ほど申し上げたように、任務はまだ遂行できていません・・・」 


 ボルド 「・・・そのようだね、でもそんなに簡単にできるものじゃないさ、

 キミに課せられた任務・・・いや与えられた “ 使命 ” ってものはね。」


あくまでも、やさしく微笑みを浮かべながらボルドはそう諭すのだった。


 くれない(偽) 「・・・はい。」


 ボルド 「それに、いつまでもその姿でいることもないのだよ、僕たちの前なのだしね。

 キミ本来の・・・キミの本当の姿に戻ってかまわないのだよ、ねぇそうだろ?しゅろ」   


なんと、この偽くれないの正体は・・・あの “ しゅろ ” だったというのか !?




 ※ 偽くれないのペンダントが、いままでになかったほど、眩く黄金に輝き出して・・・彼を包み込んでいく。




 ※ そして、その輝きが赤く変わった時・・・姿を現したのは、あの創作絵本作家である “ しゅろ ” であった。


くれないの細胞からボルドが密かに誕生させたクローンであるしゅろは、
実は、オリジナルと全く同じにはなれなかった・・・


そう、いってみればそれは失敗作と言える出来であったのだ。


何が原因でそうなったのかは、流石のボルドにもわからなかった・・・
それこそ、神の領域・・・神のみぞ知るといったところだろうか。


このしゅろと同じく、美々こと2号も・・・ボルドの下で、3年という月日を過ごしている。


その間に、彼らはボルドから様々な特殊訓練を受けて育ち、
またオリジナルである “ くれない ” や “ 1号 ” がまだ持っていなかった力、
特定の任意の人物に変身できるという能力を身につけていたのだ。


しかしそれは、単に姿かたちを真似ているだけなので、
その人物の持つ能力までをコピーして、手にしている訳ではなかったのだった。




 ※ 彼らが入れ替わり立ち代りして演じることにより、さもその人物が存在するかのようにみせていたのだ。


先に情報収集目的のため、モザイク・グラスに潜り込んでいたしゅろが、
ほとんど公の場所に姿を見せなかったのも・・・これがその理由であった。

くれないとして旅立ったあとは、2号である美々が “ しゅろ ” 役を引き継いでいたのである。


・・・で、いまだ明らかにされていない「くれないの使命」とは何なのだろうか? (謎)

                                                        
                                                       ・・・つづく。



 ナレーション 「つ、ついに!・・・とうとうその正体が判明しました、偽くれないは、しゅろだったのです!!  

 うちの企画段階において、彼が誕生したのは・・・まだまだ “ 魔王編 ” の真っ最中 w


 もう初めから、くれないのクローンとして運命(さだめ)を受けておりまして、

 ずっと正体を隠してきた訳なんですけど、お気づきだった方はおられましたでしょうか?   ←え、自慢?


 本当であるならこのタイトルも、 “ くれないの使命 ” ではなく、 “ くれないの正体 ” と、

 したいところでしたが~。。。せっかくですしねぇ・・・ ^^; 」   ←なにがどう、せっかくなんだよ!




 ※ 謎のマスターボルドを頂点とする第三の勢力、くれないのクローンであるしゅろ、アンドロイドの美々。
闇の黙示録編 第二部