対決の小樽運河

くれない

2009年06月19日 04:42


ニセコにあるマリエくんのミュージアムをあとにしたくれないは、
どうしても気になる場所があり・・・超マシーン “ 疾風 ”  を駆って、続いて立ち寄ることにした。

・・・そう、そこは自分たちの出発点。。。原点でもある思い出の地、懐かしの小樽であった。


 

 ※ 愛車、疾風にまたがり・・・観光地とも知られてる小樽運河に出没し、何の思惑だか記念写真を1枚。


勝手知ったるものからか・・・足が自然とあちこちに向かう。

あらかた見て廻った後だろうか、オルゴール堂を背にふと足が止まった・・・
このあたりなど、普通にチョビ太郎♂との散歩コースであったのだ。


・・・そんな、たった数年前がいまはとても遠くに感じる。


 くれない  「いったいどこで歯車が狂ってしまったんだろうか・・・。」


しばらく行方不明だった兄、むらさき魔王として挑んできてから、
本当に目まぐるしいように事態が急変していった。

これまでは知ることもなかったこの世界のの遺産 “ 封印 ” を巡る争いに、
否応なしに巻き込まれてしまう破目になるなんて誰が想像できただろうか。


くれないは、走馬灯のように想いをめぐらし、自分たちに起こった様々な不思議な現象を振り返っていた。




 ※ 複雑な気持ちで考え事をしているくれないの背後から、そっと気配を殺し近づいてくる影があった・・・。


 くれない 「ここへの爆撃を阻止してくれたのは、あなたの仕業なのか?・・・ちょびさん。」


 ちょび 「・・・まぁね、でもあたしのモザイクは跡形もなくなってしまったわ。」


そこに現れたのは、いまやマダム親衛隊の一員となった・・・ちょびさん、
みんなのモザイク・グラスのオーナーである、あのちょびママさんの激しく変貌した姿であった。


こうして、ふたりが直接対峙するのは・・・実に3年ぶり以上の事になる。


この小樽にあった旧モザイク・グラスの一角で産声を上げた彼らの探偵事務所・・・
初期のメンバーは、くれない小紅ローズマリーチョビ太郎♂・・・そして、それを見守るちょびさん。


それから、まだたいして月日は流れていないのだが、何故だか・・・もうずっと昔のことのように思われる。


 くれない 「・・・しばらくぶりだよなぁ、向こうでは元気にしてたのかい?」


 ちょび 「えぇ、特に問題なかったわ・・・あなたこそ何も変わってないのね。」


そんな・・・まるで、ただ久しぶりに再会したかのような普通の挨拶が交わされた。


 

 ※ あの頃と今も変わらない小樽と、全く変わってしまったこのふたりを運河はただみつめているだけだ。


そのやりとりは・・・現時点では敵と味方に別れて戦っているなんて、全くないかのような素振りであった。


先ほど再会を果たしたオルゴール堂やルタオのあるメルヘン交差点から、
堺町通りを西へ六花亭や北一ガラスを横目にふたりは黙して運河の方へと歩いて移動した。


その服装云々を別に考えれば、単にカップルが小樽を散策しがてら、いつものデートをしてるようにも見える。


・・・しかし、以前とちがって今のふたりは互いに闘い合う敵同士の組織に所属する間柄。

相手がどのタイミングで、いつ襲ってくるかもわからぬままの危険なデートであった。


 ちょび 「ねぇ、くれない・・・あなたに恨みはないのだけれど、マダムのために死んでもらえないかな?」


美しい運河を背にして、ちょびさんの口からさりげなく出たのは、そんな空虚な台詞であった。 


 ちょび 「・・・だって、あなた絶対にこっちの言うこと聞いてくれないでしょ。。。だから仕方ないのよ。」 


 くれない 「・・・。」


 ちょび 「でも安心して、とどめはちゃんと・・・あたし自身でするからね。」  


そう言って、ちょびさんが指をパチン!と鳴らした途端に左手のブレスレットが妖しく輝き、
まるでテレポートでもしてきたのか、マダム親衛隊隊員のBeeたちが瞬時に現れ、立ち塞がったのだ!




 ※ 打って変わってギラギラと殺気をみなぎらせたBeeたちが、いまにもくれないに襲いかかろうと・・・ !?


せめて、この半分の人数であったなら・・・いまのくれないの実力でなんとか対応できたかもしれない。

しかしながら、如何せんこれは人数が多すぎる・・・それに向こうにはちょびさんもいるのだ。


 くれない (・・・まずいな。。。これだけの人数とやりあうとなると、ちょびさんを巻き込まないで、

 やり過ごすなどできそうにないぜ!・・・いったいどうすればいいんだ。) 


 ちょび 「心配しないでいいわよ、できるだけ苦しめないで殺してあげるから・・・迷わず成仏してね。」


次の瞬間だった・・・Beeたちが一斉に飛び掛かろうとしたその時、
短い断末魔の声を上げて・・・炎の柱に包まれて次々と消滅していくではないか・・・!! !

 
 Bee 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~っ !?」  

 
 くれない 「・・・なに?」


 ちょび 「な、なにが起こったというの?! 」  


ふたりがそう思ったのも無理はない・・・
あれほどの数のBeeたちが、すぐ目の前で・・・一瞬で燃え尽きてしまったのだから。。。


 ・・・マダム軍のこういう方法は、ボクは好きではないですね。」 




 ※ ふたりが声のする方向をみると、そこには、なんとあのボルドがガス灯の上に座っているではないか。


 ちょび 「おまえは!。。。・・・いや、あなた様はマスターボルド!」


 くれない 「なんだと、ボルドといえば。。。たしか、ちょび太の主治医だったあのボルドか?」


 ボルド 「お久しぶりですね・・・ちょびさん、くれないさん。」


 くれない 「しばらく見ない間に、随分と人が変わったようだな・・・しかも半端ないオーラ出してやがる。」


 ちょび 「・・・くれないは知らないでしょうけど、ボルド様は、本当に大変すごいお方なのよ。

 たとえば、Reiさんやアイリスを陰で操っていたり・・・あのセント・ライラ号でも暗躍されていたりとかね。」


 くれない 「な、なんだと !?」 


どうやら、ちょびさんは麗華さまに教育を施されたのか、いくらかは知っている感じであった。。。


・・・そうである、このマスターボルドの隠されてきた真の正体といえるべき姿を・・・!!


 ボルド麗華のやつ、ちょびさんまでこんな事に巻き込んで・・・感心できないな。」       




 ※ ガス灯からすべる様に降りて、ふたりの間を割るように、ゆっくりと歩いて近づくマスターボルド


 くれない 「・・・っく、なんだこの威圧感。。。ボルド、てめぇ~いったい何者なんだよ!! 」 


 ちょびボルド様は・・・このお方は。。。あの・・・」


なにかを言いかけていたちょびさんであったが・・・
ふと、電源が落ちたように突然固まって、ピタッと動かなくなってしまった。 


 ボルド 「・・・やれやれ、本当に麗華ったら、まったく感心できないですね。」 


 くれない 「貴様!・・・ちょびさんに何しやがったんだ !?」 


 ボルド 「・・・ふふふ、大丈夫です何も問題はありませんよ・・・くれないさん。」 


風雲急を告げ、緊張の走る小樽運河には・・・ただボルドの涼しい笑い声だけが響いていた。



                                                           ・・・つづく。



 ナレーション 「ついに、あのマスターボルドが堂々と表舞台に躍り出る日がやって参りました。


 このあと、この小樽運河にて・・・くれないボルドのふたりに何が起こるのでしょうか?

 そして、・・・フリーズして固まってしまったちょびさんの安否は?


 では、この続きをお楽しみにお待ちください・・・次回もまたここで。」




 ※ その光景をこっそり背後から伺う影があった・・・そう、それは監視するもの、龍騎士りんどうである。

闇の黙示録編 第三部