2009年04月30日
闇の黙示録編 第三部 「プロローグ ~終わりの始まり~ 」
前回はやっぱりかー!の参考資料 “ 闇の黙示録編 第二部:登場キャラ紹介 ” でしたね~ ^^:
・・・ってことで、今回こそは~「闇の黙示録編 第三部」~のプロローグです! ←結局すすまん!!

※ ややこしや~なのですが、これは “ くれない ” ではなく、 “ 作者さま ” なのです~区別つかんわ !?
前回の “ 闇の黙示録編 第二部:登場キャラ紹介 ” を作成する際に、
「闇の黙示録編 第二部」を通しで全部読み返してみました・・・
おぉ~そうだったか・・・!と思い出すことや、
予想よりも、あんまし話の展開が進んでないことを再認識したりと、
・・・個人的には面白い発見も多かったです w
みなさんにそれを強要はできませんので・・・よかったら~、「チーフの解説ブログ」にある、
“ 魔王編 ” “ 闇の黙示録編 ” の各あらすじを読んでもらえればと思います ♪ ←宣伝っすね。
いよいよ始まる “ 闇の黙示録編 第三部 ” なのですが、
「プロローグ ~終わりの始まり~ 」 とありますように、
これまで以上に、なにかが起き、大きな終焉を迎えるという事なのでしょう・・・。
謎の “ 救世主の封印 ” を巡る戦いの末・・・それを手にするものにいったい何が起こるのか?
・・・そして、その結果この世界はどうなってしまうのか!! ! (謎)

※ ついに覚悟を決めた作者さまは、寄り道の番外編に走らず、本筋の本編を書くことができるか・・・?!
作者 「・・・この先を書くことを考えるだけで、夜も寝られない日々が続くんですよ。」
こんな戯けた作者さまに・・・明日は来るのだろうか!・・・いや、来ないと困るぞっっっ!
・・・つづく。
ナレーション 「・・・流石に、もうこれ以上は引き伸ばす限界を超えたと観念したんでしょうな w
渋々ながらも・・・先に進む模様っすなぁ~。。。まぁいつもの如く油断なりませんけどね ^^;
この先の展開は、これまでのようにのんびりとしたものではないかもしれません。
それもあって、意図的に作者は避けていたのかもです・・・ (謎)
最後にもうひとつ・・・この物語は “ フィクション ” です、ここで何が起ころうと~っ、
SLの世界に影響が出るということはありませんので、安心してお読みくださいね w
ではでは・・・また次回会えるのを楽しみしています ♪」 ←逃げるなよ!

※ とても落ち着きがなく、せわしくチョロチョロしてますなぁ~やはりそれほどに第三部の展開とは (謎)
2009年06月04日
勃発
くれないたちに由縁のある施設や建物が次々とマダム軍の絨毯爆撃を受けたのである。
なんとか無事に残ったと言えるのは、むらさきの誇る鉄壁の砦・・・ “ 鉄 -くろがね- の要塞 ” と、
あの伯爵が守護する封印の場所とされる・・・マリエくんのミュージアムくらいであった。

※ あえて何も語らないが、小紅の静かな憤りはひしひしと・・・くれないの心にまで響いてくるのであった。
数時間前になるだろうか・・・むらさきにより緊急のスクランブルがかかり、
主だったメンバー全員が集められ、核の攻撃にも耐えうる地下において会議が開かれていた。
その際、普段はモザイク・グラスにいるしゅろにも徴集がかかったのだが、
・・・この火急の事態を見込んでのむらさきの計らいだったのならそれも納得ができる。
のちに判明したのだが・・・今回の空爆を指揮したのは、
マダムの私設軍隊責任者であるというバレンシュタイン大佐で巨大な浮遊要塞の総司令でもある。
・・・的確に要所だけを狙って爆撃を仕掛けてきており、その名に恥じぬ凄腕を証明してみせた。
しかし、これほどまでの攻撃でさえも、マダム軍にとっては単なる警告でしかなかったようで、
一通り爆撃を終えたら、来たとき同様・・・すぐ様かき消すようにいなくなってしまったのである。
そして、なかでも・・・もっとも被害をこうむったのは他ならぬ “ モザイク・グラス ” であった。

※ 文字通り、全く影も残らないように綺麗に消失してしまった “ モザイク・グラス ” 跡地に立つふたり。
当面は危険がないとむらさきが判断して、くれないと小紅は急ぎモザイク・グラスへと向った。
そんなふたりの眼に映ったものは・・・あるべきはずのものが、
・・・跡形もなく消え失せた、ただの更地だけだったのである。
特殊なレーザーでも使ったのだろうか・・・モザイク・グラスのあの建物は綺麗さっぱり無くなっていた・・・
実際に、この新しい “ モザイク・グラス ” にはまだそれほど馴染みはなかったくれないであったが、
やはり特別な意味を持つものの象徴であるに違いはない。
ましてや、小紅にとってはここ数年ずっと過ごしてきた場所であるのだ・・・。
小紅 「・・・あっちにとっては、ほんの手始めってとこなんでしょうね。」
くれない 「まぁ、そんなとこなんだろうな・・・だが、やつらは俺たちの心を踏み躙りやがった。」
小紅 「・・・そうね、わからせてあげないといけなくなったわ。」
そう語る小紅の瞳の奥底には・・・冷たい炎がメラメラと燃えさかっているように思えた。

※ モザイク・グラス跡地に立ち・・・これまで以上に新たな気持ちで決意をする小紅とくれないであった。
・・・まだ戦いの火蓋は切って落とされたばかりなのだ。
そう、これからが “ 救世主の封印 ” を巡る本当の戦いの幕開けになるに違いない・・・。
・・・つづく。
ナレーション 「1ヶ月以上の長い沈黙を破り、やっと再開された本編・・・闇の黙示録編 第三部。
今回は、マダム軍の本気をうかがい知るだけに留まりましたが・・・まだまだほんの序章に過ぎません。
この先、どのようなことが起こっていくのか・・・まったく予断を許しませんが。。。
・・・再びこの時間に、ここでお会いできたことを嬉しく思います。
ではでは、また・・・この続きを是非ともお楽しみにお待ちくださいませ。」

※ ペットの虎型メカを連れて・・・ふたりを迎えにやってきたちょび1号の瞳もどこか哀しく輝いていた。。。
2009年06月09日
BUZZING Bees
ブツブツと独り言をいいながら、ひとり百面相をくり返す姿は異様でもある。
麗華 「でも、始まったものは今さら仕方ないわ・・・もう後戻りはできないのだから。」

※ バレンシュタインの浮遊要塞内部であろうか・・・不可思議な行動をみせる悩める麗華さまである。
モザイク・グラスまで迎えに来てくれた1号に、無理やり小紅を預け・・・くれないはとある場所に急いだ。
「まだひとりでは危険よ」・・・という、小紅の忠告にも耳を貸さないようにして、
いまだ詳細のわからないマリエくんの元へと向ったのだった。
マリエくんのミュージアムそのものは、まったく無傷の無事であるという連絡は知っている。
しかし、マリエくん自身がどうなったのかは・・・まだわかっていないのだ。
くれない 「あの伯爵がついているのだから、特に問題はないと思うんだが・・・。」
・・・そうは思っている、けれども、・・・この目で確認しておきたかったのだろう。
それから間もなくして、ニセコにあるマリエくんのミュージアムに到着したのだが・・・。
いつもなら、彼女が休憩したり “ 寝落ち ” したりしてる定位置付近に、
まったく別の見知らぬ女性がひっそりと鎮座してるではないか。
・・・不審に思い、用心しながらゆっくりと近づいてみた。

※ 報告のとおり、ミュージアムは何の損傷も受けておらず、流石は “ 伯爵 ” ・・・やはり只者ではない。
くれない 「おい、・・・まだ危険な状況のままだぞ、キミはマリエくんの知り合いなのか?」
しかし、そのくれないの誰何に女性からの返答はなかった。
くれない 「聞こえているはずだろ・・・返事くらいしたらどうなんだ?」
Bee 「・・・くっくっくっ、なんだあたしに言ってたのかい。。。また新手なナンパかと思ってたわ。」
くれない 「・・・何をふざけているんだ、いまはそんな場合じゃないだろ!」
Bee 「ふっ・・・ナンパに失敗しての逆ギレってやつかい 、困った坊やだね~っ ^^; 」
くれない 「・・・何を!」
Bee 「せっかちな男は嫌われるだけだよ・・・はいはい、それじゃ、任務にうつるとするかねぇ~ ♪
・・・全ては、マダム・マルゴのために!! 」
すっくと立ち上がり、不気味に微笑みながら・・・くれないに近づいてくる妖しい女性。
※ そう言い放つと瞬時にしてマダム親衛隊の正式な衣装を身にまとい・・・Beeは戦闘態勢をとったのだ!

※ けれども次の瞬間には、くるりと背中を向けて・・・声高らかに怒鳴ったりなどする始末で。。。 (謎)
Bee 「あはははっ、そういやオマエ吸血鬼だったね~これはたっぷりといたぶってやれるじゃないか!」
くれない 「・・・なんだコイツは、これがマダム親衛隊なのか?・・・どこが選抜エリートなんだよ!」
くれないがそう疑問に思うのも無理はなかった・・・。
マダム・マルゴの正規軍各部署から選りすぐりのエリート女性たちが志願して、
あの麗華さま率いる親衛隊の隊員に抜擢されるのだが・・・
その難関のテストに見事合格したものは、さらに最終試験としてマルゴに真の忠誠を誓い、
己の人格も見た目も等しく改造されるのである・・・そうそれがマダム親衛隊隊員のBeeたちなのだ!!
その結果、手に入れた脅威のパワーと裏腹に・・・情緒不安定に陥ったりする者もいるが、
すべからくマダムのための働き蜂と化し、強靭な意志を持つ戦闘員・・・ “ Bee ” となってしまうのだ。
・・・ 「ブンブンと騒々しく・・・、安らかな刹那の眠りを・・・、妨げるものは・・・、うぬか、そこな女よ・・・!」

※ 声のする方に悠然と立っていたのは、紛れもなく・・・あの闇の帝王、 “ 伯爵 ” その人であった!!
伯爵 「先ほどの爆撃といい・・・、我れはいま機嫌がよくないのだ・・・、如何にアレの手のものであれ・・・、
我が領土内にての・・・、愚かな争いごと・・・、黙って見過ごすわけには・・・、いかぬぞ・・・・。」
くれない 「おぉ~、お師匠さま・・・やはりご無事でしたか w 」
Bee 「うげげ・・・!貴方様は我らが美しき女王である・・・マダム・マルゴ様の。。。っぐ !?」
しかし、Beeが全てを言い終える前に、伯爵の気が凄まじく膨れ上がり、
・・・それ以上は、何も言えなくしてしまったのである。
くれない 「・・・ん?なんだって伯爵とマルゴが何・・・だと言おうとしたんだ?」
伯爵 「戯言である・・・、滅するがよい・・・。」
くれないのそんな言葉などまるで聞こえぬかの様に、伯爵はさらに気を高め・・・力を解放していった。

※ その凄まじさに大地が揺れ・・・何もかもが吹っ飛んでしまうのではないかと錯覚を覚えたくらいである。

※ 為す術もなく、巨大な力に飲み込まれるかの如く・・・Beeの身体は跡形もなく消し飛んだのだった。
Bee 「・・・うぎゃーーーーーーっ!! ! !! ! 」
何の抵抗も一切できぬまま・・・ただ断末魔の叫びを残して、親衛隊隊員Beeは哀れ消滅してしまった。
くれないが感じたBeeの底知れぬ力は、それなりに凄いものであったし、
いまのくれないの軍団のメンバーたちでは、一騎打ちをしたら下手をすると相打ちか玉砕であろう。
くれない 「・・・やっぱり、お師匠さまの潜在能力は。。。計り知れないってことか。」
伯爵 「案ずるな・・・、マリエなら・・・、我れがちゃんと預かっておる・・・、心配などは無用じゃ・・・。」
くれない 「おぉ、ありがとうございます。。。いや~、それが聞ければ問題ありません・・・安心しました。」
伯爵 「うむ、おぬしは・・・、早々に戻り・・・、小紅たちと・・・、次の対策でも・・・、じっくり練るがよい・・・。」
そういう風に、師匠でもある伯爵に促されては・・・さすがのくれないも何も言い返せず、
ふっと現れたとき同様・・・いつの間にか姿が見えなくなっていた伯爵がいた辺りを、
・・・ただただ立ちすくみ、茫然とみつめていたのだった。

※ 「うおおおぉぉぉぐおおおおおぉーーーーーーーっ!! ! 」・・・突然、大声で絶叫する麗華さま。
マダムより預かる大事な部下であるBeeの悲惨な最期を感知したのであろうか。
・・・麗華さまは、誰はばかることなく。。。声を荒げて叫び出したのだ。
麗華 「うぐぐっ、ついに伯爵さまが・・・旦那さまが~マルゴさまと争う姿勢をお見せになられたっ!!
もうだめだわ・・・もう止められない、この麗華の力などでは・・・どうにもならないのよーっ!! ! 」
その半ば雄叫びにも似た麗華さまの叫び声は・・・ただ無情に響いて要塞内にこだましていった。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・つまり、 “ Bee ” というのは、ある個体を指すのではなく、
マダムの親衛隊正規隊員、全てを指す呼称であったのですね・・・。
・・・だとすると、いま親衛隊にいるサフランやアイリス・・・また、ちょびママさんもいずれは !?
もしかすると、もう手遅れになっているのかもしれないですけど。。。 (謎)
それでは、どちらさまも・・・また近いうちに、ここでお会い致しましょう。」

※ ほんの少し垣間見えたマダム軍の不気味な力に・・・思わずぞっと背筋が寒くなったくれないである。
2009年06月19日
対決の小樽運河
ニセコにあるマリエくんのミュージアムをあとにしたくれないは、
どうしても気になる場所があり・・・超マシーン “ 疾風 ” を駆って、続いて立ち寄ることにした。
・・・そう、そこは自分たちの出発点。。。原点でもある思い出の地、懐かしの小樽であった。
※ 愛車、疾風にまたがり・・・観光地とも知られてる小樽運河に出没し、何の思惑だか記念写真を1枚。
勝手知ったるものからか・・・足が自然とあちこちに向かう。
あらかた見て廻った後だろうか、オルゴール堂を背にふと足が止まった・・・
このあたりなど、普通にチョビ太郎♂との散歩コースであったのだ。
・・・そんな、たった数年前がいまはとても遠くに感じる。
くれない 「いったいどこで歯車が狂ってしまったんだろうか・・・。」
しばらく行方不明だった兄、むらさきが魔王として挑んできてから、
本当に目まぐるしいように事態が急変していった。
これまでは知ることもなかったこの世界の謎の遺産 “ 封印 ” を巡る争いに、
否応なしに巻き込まれてしまう破目になるなんて誰が想像できただろうか。
くれないは、走馬灯のように想いをめぐらし、自分たちに起こった様々な不思議な現象を振り返っていた。
※ 複雑な気持ちで考え事をしているくれないの背後から、そっと気配を殺し近づいてくる影があった・・・。
くれない 「ここへの爆撃を阻止してくれたのは、あなたの仕業なのか?・・・ちょびさん。」
ちょび 「・・・まぁね、でもあたしのモザイクは跡形もなくなってしまったわ。」
そこに現れたのは、いまやマダム親衛隊の一員となった・・・ちょびさん、
みんなのモザイク・グラスのオーナーである、あのちょびママさんの激しく変貌した姿であった。
こうして、ふたりが直接対峙するのは・・・実に3年ぶり以上の事になる。
この小樽にあった旧モザイク・グラスの一角で産声を上げた彼らの探偵事務所・・・
初期のメンバーは、くれない、小紅、ローズマリー、チョビ太郎♂・・・そして、それを見守るちょびさん。
それから、まだたいして月日は流れていないのだが、何故だか・・・もうずっと昔のことのように思われる。
くれない 「・・・しばらくぶりだよなぁ、向こうでは元気にしてたのかい?」
ちょび 「えぇ、特に問題なかったわ・・・あなたこそ何も変わってないのね。」
そんな・・・まるで、ただ久しぶりに再会したかのような普通の挨拶が交わされた。
※ あの頃と今も変わらない小樽と、全く変わってしまったこのふたりを運河はただみつめているだけだ。
そのやりとりは・・・現時点では敵と味方に別れて戦っているなんて、全くないかのような素振りであった。
先ほど再会を果たしたオルゴール堂やルタオのあるメルヘン交差点から、
堺町通りを西へ六花亭や北一ガラスを横目にふたりは黙して運河の方へと歩いて移動した。
その服装云々を別に考えれば、単にカップルが小樽を散策しがてら、いつものデートをしてるようにも見える。
・・・しかし、以前とちがって今のふたりは互いに闘い合う敵同士の組織に所属する間柄。
相手がどのタイミングで、いつ襲ってくるかもわからぬままの危険なデートであった。
ちょび 「ねぇ、くれない・・・あなたに恨みはないのだけれど、マダムのために死んでもらえないかな?」
美しい運河を背にして、ちょびさんの口からさりげなく出たのは、そんな空虚な台詞であった。
ちょび 「・・・だって、あなた絶対にこっちの言うこと聞いてくれないでしょ。。。だから仕方ないのよ。」
くれない 「・・・。」
ちょび 「でも安心して、とどめはちゃんと・・・あたし自身でするからね。」
そう言って、ちょびさんが指をパチン!と鳴らした途端に左手のブレスレットが妖しく輝き、
まるでテレポートでもしてきたのか、マダム親衛隊隊員のBeeたちが瞬時に現れ、立ち塞がったのだ!
※ 打って変わってギラギラと殺気をみなぎらせたBeeたちが、いまにもくれないに襲いかかろうと・・・ !?
せめて、この半分の人数であったなら・・・いまのくれないの実力でなんとか対応できたかもしれない。
しかしながら、如何せんこれは人数が多すぎる・・・それに向こうにはちょびさんもいるのだ。
くれない (・・・まずいな。。。これだけの人数とやりあうとなると、ちょびさんを巻き込まないで、
やり過ごすなどできそうにないぜ!・・・いったいどうすればいいんだ。)
ちょび 「心配しないでいいわよ、できるだけ苦しめないで殺してあげるから・・・迷わず成仏してね。」
次の瞬間だった・・・Beeたちが一斉に飛び掛かろうとしたその時、
短い断末魔の声を上げて・・・炎の柱に包まれて次々と消滅していくではないか・・・!! !
Bee 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~っ !?」
くれない 「・・・なに?」
ちょび 「な、なにが起こったというの?! 」
ふたりがそう思ったのも無理はない・・・
あれほどの数のBeeたちが、すぐ目の前で・・・一瞬で燃え尽きてしまったのだから。。。
・・・ 「マダム軍のこういう方法は、ボクは好きではないですね。」
※ ふたりが声のする方向をみると、そこには、なんとあのボルドがガス灯の上に座っているではないか。
ちょび 「おまえは!。。。・・・いや、あなた様はマスター・ボルド!」
くれない 「なんだと、ボルドといえば。。。たしか、ちょび太の主治医だったあのボルドか?」
ボルド 「お久しぶりですね・・・ちょびさん、くれないさん。」
くれない 「しばらく見ない間に、随分と人が変わったようだな・・・しかも半端ないオーラ出してやがる。」
ちょび 「・・・くれないは知らないでしょうけど、ボルド様は、本当に大変すごいお方なのよ。
たとえば、Reiさんやアイリスを陰で操っていたり・・・あのセント・ライラ号でも暗躍されていたりとかね。」
くれない 「な、なんだと !?」
どうやら、ちょびさんは麗華さまに教育を施されたのか、いくらかは知っている感じであった。。。
・・・そうである、このマスター・ボルドの隠されてきた真の正体といえるべき姿を・・・!!
ボルド 「麗華のやつ、ちょびさんまでこんな事に巻き込んで・・・感心できないな。」
※ ガス灯からすべる様に降りて、ふたりの間を割るように、ゆっくりと歩いて近づくマスター・ボルド。
くれない 「・・・っく、なんだこの威圧感。。。ボルド、てめぇ~いったい何者なんだよ!! 」
ちょび 「ボ、ボルド様は・・・このお方は。。。あの・・・」
なにかを言いかけていたちょびさんであったが・・・
ふと、電源が落ちたように突然固まって、ピタッと動かなくなってしまった。
ボルド 「・・・やれやれ、本当に麗華ったら、まったく感心できないですね。」
くれない 「貴様!・・・ちょびさんに何しやがったんだ !?」
ボルド 「・・・ふふふ、大丈夫です何も問題はありませんよ・・・くれないさん。」
風雲急を告げ、緊張の走る小樽運河には・・・ただボルドの涼しい笑い声だけが響いていた。
・・・つづく。
ナレーション 「ついに、あのマスター・ボルドが堂々と表舞台に躍り出る日がやって参りました。
このあと、この小樽運河にて・・・くれないとボルドのふたりに何が起こるのでしょうか?
そして、・・・フリーズして固まってしまったちょびさんの安否は?
では、この続きをお楽しみにお待ちください・・・次回もまたここで。」
※ その光景をこっそり背後から伺う影があった・・・そう、それは監視するもの、龍騎士のりんどうである。
2009年06月23日
悪夢は、何度でも・・・。
ついに・・・この小樽運河において、くれないやちょびさんの前に堂々とその姿をみせたのだ。
・・・はたして、彼の思惑とはいったいどういうものなのだろうか。

※ 在りし日のちょびさん・・・以前のような、元のあのやさしい姿に戻れる日はやってくるのであろうか。。。
くれない、ちょびさん・・・そして、マスター・ボルドの三竦みの状態を遠くから発見したのは、
監視するものの使命を帯びた龍騎士のりんどうと、もう一匹・・・探偵犬チョビ太郎♂のコンビであった。
飼い主というか家族であるちょびママさんの存在を敏感に感じたのであろう・・・
他のSIMでパトロールしていたが、大好きな主の匂いをかぎつけ急いでやってきたのだった。
チョビ太郎 「・・・わん、わんわん!」
くれない 「おぉ、チョビすけ・・・やっぱり来たか w 」
ボルド 「これはこれは、チョビ太郎くん。。。お久しぶりですね。」
いっときであったが、ボルドは獣医時代このチョビ太郎♂の主治医であったことがある。
・・・流石の名犬、チョビ太郎♂も困惑を隠せないでいるのが、くれないにもひしひしと伝わってきた。
ボルド 「ちょびさんのことなら、心配いりませんよ・・・。チョビ太郎くん。。どうかボクを信じてください。」
さっき、くれないに言った同じような台詞をチョビ太郎♂にも優しく投げかけた。

※ りんどうとチョビ太郎♂が駆けつけるも、肝心のちょびママさんはフリーズして固まったままである。
くれない 「なぁ、ボルド・・・なにが、どう問題なく、かつ心配ないのかってちゃんと説明してみろよ!」
ボルド 「ふふふ、そんなせっかちでは嫌われますよ・・・くれないさん。」
りんどう (・・・彼が、噂のマスター・ボルドその人か。。。さすがというか手強いな、読めない相手だ。)
超絶的な能力を有する龍騎士であるりんどうにも、
このボルドの持つ底知れぬパワーは、そう簡単には量りしれないようである。
ボルド 「いまのちょびさんは、麗華によって潜在意識の奥深くで洗脳をかけられている状態なのです。
・・・つまり、無意識の内に暗示にかかっていて、そうと知らずに操られているという訳ですね。」
くれない 「それと、いまの石化のままと、どう関係あるってんだ!」
ボルド 「こうして、動きを封じ込めてないと・・・意に沿わぬ暗殺をあなたに仕掛け続けるということです。
おわかりいただけましたか?・・・くれないさん。」
その短いやりとりの間にも、また新たにふたりが・・・この緊張の走る小樽運河へと駆けつけてきた。

※ りんどうから緊急連絡を受けたローズマリーと、どこから嗅ぎつけたか・・・謎多き青年ゆーいちも来た。
特殊な訓練を受けて育ったローズマリーはこういう時でも冷静沈着で見事なものだ。
・・・しかし、相反するようにこのゆーいちときたら、緊張のせいなのか落ち着きもなく、
はたまたいつものおちゃらけからなのか、身構えるポーズもなんかおかしい (謎)
ボルド 「おやおや・・・、くれない軍団の面々に続々とお越しいただいて、これは恐縮ですね。」
くれない 「さぁ、観念して・・・ちょびさんをこっちへ渡してもらおうか!」
ボルド 「ふふふ・・・ここに小紅さんも加われば、相当やっかいになるのでしょうけど。。。
・・・では、そうなる前にさっさと退散するといたしましょうか。」
くれない 「てめぇ、逃げようって魂胆か・・・そうはさせるか。。。っうぅ!! 」
今度はくれない自身も、金縛りにあったように身体の自由がまったく利かなくなった。
ボルド 「ふふふ・・・それはまた次回にでもね。。。くれないさん。
さぁ、チョビ太郎くんも一緒においで、キミが来てちょびさんをちゃんと守ってあげるといい。」
チョビ太郎 「・・・わん!」

※ 最後まで涼しく微笑みながら・・・マスター・ボルドは時空間を歪ませて、その姿を消してしまった。
その消えるまでの瞬間、その場にいた誰もが身動きすら取れなかった・・・
たしかに、ほんの一瞬の出来事ではあったのだが、くれないを始めローズマリーや、
あの龍騎士であるりんどうでさえもボルドに動きを一切封じられてしまったのだ。
そして、さきほど予告したように、ちょびさんもチョビ太郎♂の姿も当然辺りには見当たらなかった。
マスター・ボルドの手により連れ去られてしまったのである・・・そうまたしても誘拐されてしまったのだ。
くれない 「・・・っくそーっ、目の前にいながらまんまと奪われてしまうなんて!! 」
ローズマリー 「・・・ちょびさま、どうかご無事で。」
それから、しばらくして・・・時間にして数分後かに、
むらさきに用事を頼まれていて遅くなった小紅と1号が駆けつけてきたのだ。
小紅 「・・・そう、またちょびさんが。。。」
1号 「・・・くれない、ねっ、元気だしなよ。」
・・・その場の誰もが、くれないを責めようとはしなかった、だがそれが逆に心に痛いのも事実である。

※ 悲しみだけが残った小樽運河に立つくれない軍団のメンバーたち・・・またさらなる決意を胸に秘めた。
結果として、あのボルドに圧倒的な実力の差を見せつけられるだけで終わった。
・・・またしても悪夢のように、ちょびさんは何度目かの誘拐をされてしまったのである。。。
今回、唯一救いといえるのが・・・愛犬チョビ太郎♂も一緒にという事だが、それもただの気休めに過ぎない。
いったい、いつになればみんなで平和に暮らせる日がくるのだろうか・・・
・・・つづく。
ナレーション 「まぁ、なんという事でしょう・・・またもや、ちょびママさんの本領発揮といえばいいのか、
またまたまたまた・・・、誘拐されちゃいましたね。。。これで本当に何回目なんだろうか?
・・・さて、おかげさまで。。。このブログも無事に1周年を迎えることができました。
それもこれも、全て皆様の応援の賜物でありまして・・・、まことにありがとうございます。
これからも、引き続きよろしくおつきあいくださいませ・・・では、また次回お会いしましょう!」

※ もうすっかり、くれないの扱いに慣れている1号・・・メンタル面のフォローもお手の物だぞ ^^; (謎)
2009年06月29日
交差する思惑
いつからだろう~、じっとみつめる熱い視線がルタオの上にあった。
それはくれないの実兄であるむらさきこと・・・闇の貴公子、 “ 魔王 ” の妖しい双眸である。

※ いまや完全に “ 魔王 ” の能力を自分のものとしたむらさきの心に映るビジョンとは何であろうか・・・。
これまでの “ 救世主の封印 ” をめぐる熾烈な争いには、
くれないたちのサポート役に回り、あまり表立って行動をみせていないむらさきであるが・・・
己の探究心とでも言えばいいのだろうか、その欲求は他の誰よりも強いはずである。
あのマダムの四天王でもある主任のゾラをも取り込み、
一心不乱に封印の研究に没頭しているかと思えば・・・相変わらずのこの暗躍ぶり。
むらさき 「ふっ、・・・ひとつの側面からだけでは、真実など違ってみえてくるものだな。」
いまはこうして、ことの成り行きを眺めているようだが・・・事と次第に依れば、
どのように出てくるのか、実際はわかったものではないと言えよう。
この魔王、むらさきが真に求めているものは、はたして光なのか闇なのか。。。

※ マダム親衛隊の制服から着替えて、ビンテージもののコスチューム姿で横たわるちょびママさん・・・。
ここは、ボルドの巨大な城塞都市内部にある封印研究施設の一室。
意識があるのかないのか・・・静かに横になり、瞳を開けたままのちょびさんがそこにいた。
チョビ太郎 「・・・くぅ~ん。」
ボルド 「大丈夫ですよ、心配要りません・・・チョビ太郎くん。」
不安げな表情で、やっと会えた主であるちょびママさんを見守るチョビ太郎♂に、
やさしく諭すように声をかける元主治医でもあるマスター・ボルド。
すぐ傍らには、アンドロイドのちょび2号こと・・・ “ 美々 ” と、
くれないのクローン体である “ しゅろ ” の変身した姿、偽くれないの顔もそこにあった。
美々 「どうされるおつもりですか?・・・マスター。」
しゅろ 「・・・ちょびママ。」
ボルド 「麗華によって、ちょびさんにかけられている暗示を解かなくてはなりませんね。」

※ 皆の見守る中、ボルドは手をかざし・・・ちょびさんの深層意識の奥深くへと確実に分け入っていく。
この暗示をかけたのは、あのマダム親衛隊隊長である麗華・・・昔、ボルドの教育係でもあった相手だ。
ちょび 「・・・ううう、うぅ!」
ちょびママ本人でさえ、気づかぬ様に巧みに仕掛けられた複雑な暗示・・・
もし、ほんの少しでも解除方法を間違ってしまえば、ちょびさん自身もただではすまない。
そんな危険を冒してでも暗示を解く必要が、はたしてボルドにあるのだろうか。
~じっと主人を見守るチョビ太郎♂、~憎い仇だと教えられている美々、~そっと想いを寄せるしゅろ。
ちょびさんへの思いは三者三様、それぞれであるが・・・いまはただ黙ってみているしかなかった。
・・・程なくして、難解なパズルを解読する如く、麗華によって施された巧妙な暗示を見事に解いたボルド。
ボルド 「これで、ちょびさんの命にかかわる心配は全て回避されました。」
今回のマスター・ボルドの行動の意味は何を指すのか・・・?
この後、ちょびさんとチョビ太郎♂の安否はどうなってしまうのだろうか・・・。。。

※ それぞれの思惑が複雑に絡み交差する中、渦中のちょびさんはいま安らかな寝息をたて眠ってる。
マダム軍の攻撃もまだまだ始まったばかり・・・今後ますます激しくなっていくだろう。
・・・動き出した歯車は、さらに大きな歯車へとその力を伝えていくことになる。
真の鍵を握る存在という、マスター・ボルドの思惑はいったいどこへ向かってるのであろうか・・・。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・ひとまずは、ちょびさんの安全は確保されたようです。
しかし、それは本当の意味での安全なのでしょうか・・・けっして、そうではありません。
くれないたちは、強大なマダム軍と、さらにボルドたちとも向かい合っていかなければならないのです。
・・・では、この続きは、次回のこの時間にお送りいたします。」

※ 途方にくれながらも、鉄 -くろがね- の要塞内にある大浴場でひとり疲れを癒す主人公・・・くれない。
2009年06月30日
魔王の眠り
闇の貴公子・・・むらさきはいろいろと思考をめぐらしていた。
この己自身が本当に求めているのは、いったい、何なのであろうか・・・と。

※ むらさきの魔王としての能力は、3年前に比べて・・・比較にならないほど飛躍的に進化を遂げている。
思えばこうして、・・・あまりひとりになれる時間も、ここ最近はずっとなかったように思う。
研究室に泊り込み、寝る間も惜しんで封印の解析をしたり、
くれないたちをサポートするアイテムを開発したりと、とにかく忙しい毎日であったのだ。
あまりにやることが多すぎて、まったく時間が足りない・・・そう感じ焦っていたのもあった。
肝心の “ 救世主の封印 ” についても、まだ全然詳しい事が判明していないのが現状で、
謎の力に阻まれているのか・・・、遅々として研究が進んでいないのである。
・・・そこに、マダム軍からついに本格的な攻撃が始まってしまったので、
気持ちを変える意味もあって、自らが直接偵察をと・・・鉄 -くろがね- の要塞を離れやってきた訳である。
むらさき 「マダム・マルゴか、マスター・ボルドか、さらには。。。さてさて、誰が真の所有者となるか。」
“ 救世主の封印 ” の力を手に入れて、世界がどう変わっていくのかについては、
むらさき自身も非常に興味がある、むしろ、それをこの手で実現できるのならば、してみたいとさえ・・・?!

※ テーマ別に用意される、むらさき専用のバスタブにはゾラによって真紅のバラが散りばめられていた。
むらさきの強靭な精神力により、闇深く封印され眠りについている “ 魔王 ” の本体!
これが真に目覚めるとき、魔王の・・・いや、むらさき自身に何が起きるのか、
また隠されたむらさきの野望が開放されてしまうのか、それはまだわからない。。。
・・・できうるならば、生涯目覚めることないように願うばかりである。
・・・つづく。
ナレーション 「これまで、あまりスポットを当てられることがなかった “ むらさき ” の心情・・・。
そのむらさきの中に眠る “ 魔王 ” の心 (:本体)はかなりの部分で融合もされており、
このまま、いつしか吸収され消え去ってなくなってしまうのかもしれませんね。
ただ・・・闇の魔王と化す、むらさきの姿も正直見てみたいと思ってしまいますが・・・。
ではでは・・・また、ここでお会い致すことにしましょう。」

※ 紅く染まってく空に突き進んでくむらさきの中の“ 魔王 ”の眠りは、いつしか覚めるのであろうか? (謎)
2009年07月02日
ゾラとキャンティ -邂逅!羊蹄山-
非常時にのみ使う、緊急連絡の暗号通信を送り、
同じく四天王のゾラを極秘でここへ呼び出したのだ。

※ 涼しい顔をして、平気で悪事を企てるキャンティ・・・それすらも四天王筆頭としての条件なのだろうか。
このキャンティの持つ能力は、謎に包まれており・・・ほとんど知られていない。
“ マダムの子ら学園 ” においても非常に優秀で、幼い頃からその頭角を現していた・・・
自らもとても有能であるのだが、他人を使うことにも長けていてマダムにその実力を買われている。
・・・実は、四天王制度を確立したのも彼女の案によるものだと言われているのだ。
そんな彼女の有する封印の力は、いまだ明らかになっていないが、
いくつもの顔を併せ持つ彼女に畏敬の念を抱く者も、数多く存在しているのも事実である。
キャンティ 「ごめんなさいねぇ~、多忙なあなたを急に呼び出したりしちゃって・・・ゾラ。」
ゾラ 「それは、かまわないけど・・・で、何用なのかしら?」
同じマダムの信頼厚い四天王同士であるのだが、ゾラとキャンティは何かとぶつかることが多かった。

※ 四天王は、それぞれ得意分野があり、緊急時以外はあまり接触する機会がないシステムとなってる。
・・・どちらかと言えば研究好きの寡黙で実直なゾラと、
自由きままに暗躍を企てるキャンティは以前からあまり相性がよくなかったのだ。
お互い、どちらも優秀であるが故にそこもまた問題となっていたが・・・
しかし、表面上は大人としての態度を崩すまでの事態には・・・これまで至ってなかった。
キャンティ 「今日、あなたを呼び出したのは他でもなくてねぇ~・・・そろそろ戻ってきてもらえないかと、
そういう事なのよ、ゾラ・・・無論、手ぶらでは困るのだけど。」
ゾラ 「・・・それはマダムの意向なのかしら?」
キャンティ 「いいえ、マダムはあなたが可愛いんだもの・・・何もおっしゃりはしないわ。
これはねぇ~・・・四天王筆頭としてのあたし個人の意向なのよ。」
ゾラ 「・・・それじゃ、聞けないわね。。。と言ったらどうするつもり・・・キャンティ。」
キャンティ 「あら、それは困ったわねぇ~、さて、どうしたらいいのかしら・・・悩んじゃうわ、あたし。」

※ もちろん、このふたりがぶつかり合えば・・・どちらも無傷で済まないことは百も承知している間柄だ。
かなり危険で気まずい空気が、こののどかなふもと周辺を包みこんでいたのだが・・・
キャンティ 「そうねぇ~・・・だったらまた出直してくるわ、それまでに考え直してちょうだいね・・・ゾラ。」
ゾラ 「・・・あたしの気持ちは変わらないと思うわ。」
・・・互いに睨み合ったまま一歩も譲る気配もなく、まさしく、一触即発のムードである。
キャンティ 「そうそう、忘れるところだったわぁ~・・・あなたにお土産持ってきてるのよ、ゾラ。」
そう言ったキャンティの眼は冷たい輝きをみせ、さしものゾラをもゾクっと緊張させた。
キャンティ 「・・・どうしても、あなたに会いたいって言うから特別に連れてきてあげたの。
ちゃんとお相手してあげてねぇ~、可愛がってたあなたの後輩だものねぇ~・・・ゾラ主任。」
目の前まで押し迫ってくるようなキャンティの眼がさらに異様な輝きを増し、
するどい怪光をはなったかと思うと・・・ゾラの左側に、覚えのある気配が突然現れてきたのだ!

※ 眩いピンクの輝きを放ち、突如空間を裂いて姿を見せたのは少し前に送り出したはずの少女であった。

※ 一瞬、その少女の出現に気をとられた隙に、四天王筆頭・・・キャンティの姿は忽然と消え失せていた!
・・・そうして、入れ替わるように現れたのは、むらさきとふたりで自分の未来は自分で切り開くようにと、
マダムの下へ送り出したはずの見習い研究生、あの可愛いサフランの変わり果てた姿であった。
ゾラ 「・・・サフラン!」
サフラン 「・・・会いたかったです、ゾラ主任。」
ゾラ 「そう、ガーデニアには会えなかったのね。・・・心配してた通りになった訳か。」
こういう形での再会も、・・・多分にあるだろうとある程度の予測はしていたゾラである。
サフラン 「・・・主任、お願いがあります。」
ゾラ 「・・・何かしら?」
サフラン 「これを、くらえ!! 」
ゾラ 「・・・っくぅ。。。!」
そういうと・・・有無を言わさず、サフランは懇親の力を込めて、ゾラに襲いかかってきた。

※ マダム親衛隊の制服に身を包み、どこか大人びた面持ちではあるが間違いなくサフランであった !?
その一撃は、とっさに避けたゾラであったが、なおもサフランの攻撃の手は休まることを知らなかった。
全て、寸でのところでなんとか身をかわしつつも・・・ゾラはじっと考えあぐねていたのだ・・・。
ついさっき、再会を果たしたばかりのこの優雅で雄大にそびえ立つ羊蹄山のふもとニセコ町は、
たったいま、・・・このふたりにとっての虚しい戦場と化したのである。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・知略家であるキャンティから見て、裏切り者同然のゾラへの置き土産は、
あの可愛らしい少女であったサフランがすっかり変貌してしまい、刺客となったものであった。
だが、ゾラとても・・・、みすみす命をとられる訳にもいかない、
・・・かといって傀儡状態にあるサフランをどうあしらうか、まだ決めかねているようである。
はたして・・・このまま、サフランは阿修羅への道を歩むことになるのだろうか・・・?!
ではではまた次回まで。。。この続きを楽しみにし、・・・お待ちください。」

※ 現在、キャンティの手に落ちてるとはいえ、真に“ パピヨンの紋章 ”が目覚めれば・・・あるいは (謎)
2009年07月05日
パピヨンの舞
この主任のゾラと研究留学生サフランは、同じマダムの命により寝所を共に研究に励んだ仲である。
しかし、運命の女神はこのふたりをここ、・・・雄雄しくそびえ立つ羊蹄山のふもとを戦いの舞台としたのだ。

※ サフランの次々と繰り出す攻撃をなんとかかわしていたゾラであったが、ついに捕らえられてしまった。
それはまるで、蝶が舞うかのように大きく優雅な技の連続であった。
サフランとの間合いの限界を見定めて、ずっとかわしてはいたのだが、
どんどん激しくなる一方の攻撃に、もはやなす術もなくなっていたのだ・・・。
ゾラ (・・・っく、このままでは、いつかやられてしまう!)
そう考えたのもつかの間、逃げ続けるゾラの背後を、ついにサフランに押さえられてしまったのだ!!
全神経を研ぎ澄まして、サフランの攻撃を察知してきたゾラであったが、
その相手であるサフランが背後において、1人、2人、3人と・・・増えていくではないか !?
さらに、4人、5人、6人・・・10人、11人。。。と、
まるで分身の術かのよう残像を残し、等しく同じ気配のサフランが増殖していく!
ゾラ 「・・・これは、ガーネットの!! 」
そうゾラが叫ぶのと、いっきに12人にまで増えたサフランが、
・・・またひとつに重なり攻撃を仕掛けてきたのはほぼ同時であった。

※ 辛うじて、直撃だけは避けたが・・・サフランの華麗な分身の舞の一撃をくらってしまったゾラである。
マダム四天王のひとり、ガーネットはあらゆる格闘技、武術の達人で・・・
他の誰よりも、その筋において長けており・・・自らマダムの護衛役をしているほどである。
サフラン本人は、おそらくまだその事実を知らないであろうが、
彼女は、そのガーネットの細胞からマダムが錬金術を駆使して造り上げたクローン人間であった。
・・・まぁ、当然、その素晴らしいまでの武闘家としての素質は備わっていた訳である
サフラン 「・・・流石です、ゾラ主任。。。あれをかわすとはお見事です。」
ゾラ 「・・・く、褒めてもらえて、光栄だけど・・・、あなたがまだ完全じゃなくてよかったわ。」
サフラン 「何を言うですか・・・わたしはもう完璧です!」
ゾラ 「いいえ、残念ながら、あなたの額の “ パピヨンの紋章 ” はまだ眠ったままだわ。」
そう・・・完璧な状態の “ パピヨンの舞 ” であったならば、ゾラはこうしていま立っていられなかっただろう。
あんなに攻撃をされながらも・・・また痛む左肩を押さえつつも・・・、
このゾラの口調はサフランに対し、どこまでもどこまでも優しかった。
同じ四天王同士でも、筆頭だが性悪なキャンティとは違い、
とても実直なガーネットとは、共にお互いを尊重し合う間柄であったし・・・交遊もそれなりにはあった。
でも、何よりも・・・サフランはいっときでも一緒に過ごした仲間であり、いまでも可愛い愛弟子なのだ。

※ 少し山手側に立つサフランを見上げていたゾラであったが、次の瞬間にはその背後に回っていた!
何の素振りも見せずにゾラは、左手のリングが輝き瞬間移動する直前のサフランのすぐ後ろに立った。
これぞまさしく、目にも留まらぬ早業といえばいいのか・・・テレポーテーションなどではなく、
実際にゾラがこの距離を脅威の瞬発力を持って、瞬時に移動したのであった。
マダム親衛隊が装備している左手のリングには近距離であれば、
ある程度自由に・・・物理的にワープが可能な装置が組み込まれている。
この間の小樽運河で、ちょびさんがやったように、連動する仲間たちを呼ぶことも可能なようであるが・・・
ゾラに背後に回られた刹那、またそのリングの力によって、
山手からふもとへと、すぐさま瞬間移動をしたサフランであったが・・・その動きを見逃すゾラではなかった。
ゾラもまた、獲物を見据えた蛇の如く・・・鋭利な鎌首をもたげて、
移動から着地したサフランの左肩目指して、膝からの一撃をお見舞いしたのである。
サフラン 「・・・きゃーーーーっ!」
その攻撃力も、その場所さえも・・・サフランが放ち、
ゾラが受けた一撃と合い等しいものであったのだが、受ける側のキャパの差がものをいい、
まだまだ耐久力においても未熟なサフランは絶叫し、その場に倒れ気絶してしまったのだ。

※ ゾラの放ったニー・キックは、寸分狂いなく正確に己が受けた力をそのまま相手に返した形となった。
このゾラがちょっと本気を出せば、こうなることはわかっていた。
だが、可愛いサフランをできれば傷つけたくなかったので・・・、
執拗な攻撃をかわしつつ、ずっと逃げ回っていたのだが、
サフランの戦闘能力が予想以上に高かった為、仕方なしに、最後の手段をとったと言う訳だが・・・
そこは、古の忌み嫌われた “ 蛇神 ” の血が流れているという一族の末裔のゾラである。
目には目を、歯に歯を・・・ということだろうが、もう少し手加減してもよかったのかもしれない。
ゾラ 「・・・ごめんね、サフラン。」
己の一撃で、ぐったりと倒れてしまったサフランを見下ろしながら、ゾラは寂しくそうつぶやいた。
ゾラ 「さて、どうしようかしら・・・また、教授のところへ連れて行くのもね。。。」
またしても、考えあぐねていたゾラであったが、
いざという時の人質になるのは、自分だけでよいのだ、・・・そう己ひとりならどうとでもできるから。
そういう意味もあって、以前、このサフランをマダムのところへと送り返したのである。
しかし、次の瞬間・・・時空間を歪ませて、もの凄い波動がこちらへ向って突進してくるのがわかった。

※ どのような原理であるか、皆目見当もつかないが・・・空間を突き破り、あの麗華さまが突如目の前に!
麗華 「・・・そこまでよーーーっ!、ゾラさん!! 」
凄まじい圧倒的な存在感を持って、マダム親衛隊隊長である麗華が、
野獣の如きスピードで、サフランをはさみ対峙するように・・・ゾラの目の前に立ちふさがったのである。
麗華 「このサフランは、マダムから親衛隊で預かってる大事な娘さんなの・・・
ここからは、この麗華に任せてもらいますわ。。。ゾラさん」
ゾラ 「麗華さま、・・・ですけども。」
麗華 「またキャンティさんに、謀られ連れ出されて・・・こういう事になったのは謝るわ。
でもね・・・これはマダムのお考えになっていることなのよ。」
ゾラ 「・・・では、ガーネットは承知してることなのですか?」
麗華 「・・・これはマダムのご意志によるものなの・・・わかるわよね、ゾラさん。」
大恩あるマダムのご意志・・・そう言われてしまえば、もう何も言えなくなるゾラであった。
どこかやりきれない虚ろな気持ちで、さっきまで戦場であったこのニセコ町を寂しくひとり後にするゾラ。
そして、あとに残されたサフランと、その彼女を迎えにきた麗華の前に・・・、あのお方が姿を見せた。

※ まったく気配さえも感じさせずに、いつからそこにいたのか~あの伯爵が麗華の前に現れたのである。
伯爵 「・・・騒々しいと思えば、・・・そなたであったか、・・・久しいな、・・・息災であったか、・・・麗華。」
麗華 「・・・はっ、だ、旦那さま!・・・旦那さまにおかれましてはご機嫌麗しゅう。。。」
伯爵 「・・・ふっ、・・・麗しゅうもないがな、・・・まぁよい。」
麗華 「旦那さま・・・奥さまが、マルゴさまがお待ちです!・・・さぁ、麗華と一緒に参りましょう。」
伯爵 「・・・あれのことは言うな、・・・おまえの顔を見に参っただけだ。」
麗華 「しかし、奥さまはいまでもずっと・・・旦那さまがお帰りになるのを待っておられるのです!」
伯爵 「・・・くどいぞ、・・・麗華、・・・我は、・・・会えぬのだ。」
その伯爵の強い口調には、流石の麗華も二の句を告げなかった。
・・・辺りには、羊蹄山から吹きおろす静かな風だけがそよそよと流れていたのである。
・・・つづく。
ナレーション 「サフラン、ゾラ、麗華、・・・また、伯爵やマルゴの思いを知ってか否か、
・・・今日も悠然とそびえ立つ羊蹄山は、ただそこにあり、全てをみているだけである。
そうそう、何百年も前に、伯爵は出て行っているのだが・・・それを顔見知りの麗華さまって、
けっこうな長寿さんなのですよね。。。登場人物のみなさん、ご長命で羨ましいです。
ではでは、また次回・・・ここで、お会いしましょう。」

※ 遥か遠く過ぎ去った日々に想いをよせ、ひとり悠久の時を生きる闇の帝王・・・ヴァンパイアの伯爵。
2009年07月13日
麗華の決意
見事・・・・一撃で打ち倒してしまったマダム四天王のひとりゾラは、とても複雑な思いでいっぱいだった。
そこを怒涛の如く登場した、マダム親衛隊隊長である麗華に促されて・・・この場をそっとあとにする。

※ ここ壮大なる羊蹄山のふもと・・・ニセコ町において、女たちの攻防が静かに繰り広げられていたのだ。
そして、そのゾラが立ち去ったすぐあとに・・・麗華の前にあの伯爵が姿を現したのだった。
深き闇の帝王でもある “ 吸血鬼 ” の伯爵は、長く留守にしているとはいえ、
麗華にとって主であるマダム・マルゴの唯一の夫という特別な立場の存在である。
この麗華の願い・・・それは、“ マダムと伯爵が共に仲睦まじく暮らし、
そこに、ご一緒にボルド坊ちゃまもおられる ” ・・・という、実は単純な、しかし、相当に困難な事だったのだ。
現在、伯爵はとある理由により、もう何百年以上という長い年月・・・
かつて深く愛しあった・・・妻であるマルゴのところへは一度も戻っていない。
そんな伯爵がまだマルゴと共に暮らしていた遥か昔に、
麗華はマルゴに新たに命を吹き込まれ、この世に再びよみがえったのである。
・・・麗華は、発見された時、完璧な状態で “ 封印 ” を施されていた “ ミイラ ” であったのだ。
実際、発掘し見つけたのは伯爵であったのだが、それを開封し復元したのは妻のマルゴであった。
その時以来、麗華は忠実にマルゴのために、とても献身的に尽くしてきたということになる。
・・・ちなみに、発掘された “ ミイラ ” はもう一体あり、
それが誰なのかはもう言うまでもない事なのだが、あのバレンシュタインその人である。
(その彼が、麗華にとって夫であったのか、また兄弟であったのか、・・・その関係は不明のままなのだ。)

※ そんな麗華の願いも、伯爵に一喝されてしまい、どうもできないと思い知らされてしまったのだが・・・。
あまりにも哀しく、またまっすぐな瞳で立ちすくむ麗華をみて、
不憫にでも思ったのだろうか、少しの沈黙の後、伯爵はこう切り出した。
伯爵 「・・・とはいえ、・・・そなたのあれに尽くす態度、・・・我れは、・・・感心しておるのだぞ。」
麗華 「だ、旦那さま・・・もったいないお言葉であります。・・・麗華はただ当たり前のことをしてるだけで。」
伯爵 「・・・そうはいうが、・・・なかなかにはできぬ事だ、・・・礼をいおう、・・・麗華。」
この思いがけない伯爵の感謝の言葉が、ちょっと思い込みの激しい麗華の琴線のどこかに火をつけた。
麗華 「麗華は、これからもずっと・・・これまで以上に奥さまのために尽くしていくことを誓いますわ!」
伯爵 「・・・ふっ、・・・そなたはいつも真っ直ぐなのだな、・・・そういう生き方もまたまことなのかもしれん。」
眼前の伯爵の微妙な心の揺れは、もう半ば舞い上がっている麗華に気づかれることはなかった。
孤高な “ 闇の支配者 ” 、伯爵もまた素直になれない煩わしい想いを抱えているのであろう。
伯爵 「・・・我れともあろうものが、・・・戯言であったな、・・・あまり無理をするでないぞ、・・・麗華。」
この去り際に伯爵が言った台詞などは・・・ほとんど麗華の耳に届いてなかったようである。

※ 時空を歪ませ、サイケに景色を染めて、その姿を潜めた伯爵、一瞬、かすかに微笑んだようにみえた。
すぐ目の前から、伯爵が消え去ったあとも・・・麗華はひとり自分の心の中に惑っていた。
おそらく・・・脳内より、大量であろうドーパミンがどくどくと溢れ出ていたのだ。。。
麗華 (・・・旦那さまが、この麗華に頼まれたのだわ。。。奥さまと、そして、坊ちゃまと共に暮らせるよう、
これからも尚いっそう励むようにと!・・・そうだわ、その為ならこの麗華・・・命さえも惜しいと思わない!! )
この時の麗華は、明らかに自分の考えに酔いしれていた。
麗華 「もうしばらくだけ、お待ちくださいませ!・・・奥さま、旦那さま・・・そして、ボルド坊ちゃまーっ!! 」
静まり返った羊蹄山のふもとには、そんな麗華の魂の叫びだけが・・・いつまでもこだましていたのだ。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・麗華さまは、如何な理由か不明だが、封印されていた “ ミイラ ” だったんですね。
いったい、いつの時代に誰がどんな目的で “ 封印 ” したのか・・・まったく謎なのですけど。。。
しかし、それを復元?してしまうマダム・マルゴの能力もまた不可思議なのでありますが、
それにしても麗華さまって、思い込んだら・・・なんとやら~、ほんと正しい方向に進んでほしいものです。
・・・では、また次回、ここにてお会いしましょう。」

※ 迎えに来たはずのサフランなど、気にも留めずに・・・ただ妖しい想いに浸っている様の麗華であった。
2009年07月17日
HOLD Me TIGHT?
その後も、研究所である鉄 -くろがね- の要塞とは別に・・・むらさき個人の根城として活用してきたのだ。
そんな寂れた場所に・・・馬に乗ったあるひとりの制服姿の女性がやってきたのだが・・・

※ 立派な黒馬にまたがってやってきたのは、FBIの新人封印専任捜査官である・・・ゆかり嬢であった。
彼女は、むらさき教授が率い、・・・その東洋一、いや世界一とも謳われている封印研究の成果を、
わかりやすくリポートをするために、本国アメリカより特別に派遣されていたわけだが・・・、
マダム軍との闘いが激化したことにより、所長であるむらさきの判断によって強制送還されていたのだ。
そんな彼女が何故に、この辺鄙な場所へとやってきたかというと。。。
ゆかり 「・・・ったくぅ~、このゆかりちゃんをのけものにしてさぁ、きっとすごい事があるに違いないわ。」
・・・やはり何か勘違いというか、きちんと事態を把握していないようである。
ゆかり 「いっくら新人とはいえ~っ、このゆかりちゃんもFBIの立派な端くれなのよ・・・、
世界に誇る情報網をなめんじゃないかんね~おっと・・・ここね、ミスタ・むらさきの秘密のアジトって ♪」

※ どこから調達してきたか、とても毛並みのよい馬を颯爽と乗りこなす・・・乗馬経験は豊富なようである。
ゆかり 「ここには、教授のもうひとつの顔である “ 魔王 ” としての秘密が隠されているに違いないわ。
その特ダネを入手するために、上司に偽りの休暇届まで出して・・・わざわざやってきたんだものね。」
何やらブツブツとつぶやきながらも、目指す旧アジト前の建物まで到着したゆかり嬢であった。
そこには、背筋を正し・・・まっすぐな姿勢で腰掛けている黒髪の女性の先客がいた。
・・・その正体は、マダム親衛隊の隊員である “ Bee” であったのだが、
悲しいかな・・・最前線を離れていたゆかりは、まだその事実を把握できてなかったのである。
Bee 「・・・こんにちは、素敵な馬ね~それに頭もすごくよさそうだわ。」
ゆかり 「あら、わかる?・・・・・・そうなの、とても賢い子なのよねぇ w 」

※ ざっくばらんに話しかけてきて、馬をやたら撫で回しながら、不審な行動をとる親衛隊隊員のBee。
Bee 「わたしは、むらさき教授のところで家政婦をしている者なの・・・教授に何かご用かしら?」
ゆかり 「わぉ~、そうなんだ・・・わたしは雑誌の記者なんだけども~何か面白いネタは持ってない?」
Bee 「・・・そういえば、あの話は知ってるかしら。。。教授が夜な夜なね・・・。」
ふって沸いたような特ダネのスクープ予感に、専任捜査官ゆかりの胸はときめいた。
ゆかり 「是非とも、ひとつ聞かせて欲しいわぁ~、ねっ、それって~どんな内容な・・・」
・・・しかし、どさっと馬上より転げ落ちたゆかりの口から、その続きを聞けることは永遠になかった。
背後からBeeの指先より、放たれたレーザービームのようなものが、
このゆかりの心の臓を真っ直ぐに貫き・・・一瞬のうちに絶命させられたからである。
そう、彼女は永遠に何も語ることのない・・・ただの虚ろな骸と化してしまったのだ。

※ 親衛隊の制服に身を包み、冷静に、何事もなかったかのように、ゆかりであったものを見下ろすBee。
Bee 「悪く思わないでね、あなたがいけないのよ・・・せっかく助かってた命をわざわざ捨てにくるから。」
任務のためなら、どんな非情にもなれる・・・それが、この “ Bee ” たちの恐ろしいところでもある。
Bee 「むらさきを待っていたのだけど、とんだエサが手に入ったわ。。。さぁ、何が釣れるのかしらね。」
そんな惨劇のあと、かれこれ数時間が経過しただろうか・・・。
いつもの定時偵察に来たくれないが、まったく何も知らないで・・・この周辺までやってきたのである。
ゆかり 「・・・きゃーーーーっ!、助けてーっ!! 」
警戒しながら遠くを偵察していたくれないの耳に、聞き覚えのある悲鳴めいたものが届いた。
くれない 「ん?・・・あの声はたしか。。。」
背中にある紅の2枚の翼を巧みに操り、くるっと向きを反転させて・・・声のした方へと急いだのである。

※ 少し先のホバークラフトの上にいるのは、先ほどBeeにより絶命させられた・・・ゆかりであった。
くれない 「やっぱりそうか、間違いない・・・あれはFBIから派遣されてた、ゆかりって人だな。
しかし・・・たしか、もうこっちは危険だからって本国へと送り返されたはずだったけどなぁ~。」
くれないは、低空飛行しながら近づき、目の前を旋回しつつ・・・ゆかりのそばにすっと降り立った。
くれない 「いま悲鳴が聞こえたみたいけど、大丈夫だったのか?」
ゆかり 「・・・おぉ、ミスタ・くれない。。。いいところにきてくれたわ。
さっきまで、そこに黒髪の同じ顔をした女性たちが群れてこっち見てたのよ!・・・怖かったわぁ。」
くれない 「うげげ!・・・そいつらは、マダムの親衛隊の “ Bee ” って、やっかいなやつらだぞ。
大丈夫だったか?・・・何もされなかったか?・・・あいつらは女子供だろうが容赦なんてしないからな。」
それを聞いて、ゆかりは顔が青ざめたようになって・・・ちょっとふらついた。

※ このくれないが気がつかないのだから・・・ここにいるのは、もしや本物のゆかり嬢なのであろうか?
くれない 「とにかく、ここにいたら危険だ。。。場所を変えないとな・・・よし、すぐ移動しよう。」
ゆかり 「我々、FBIで極秘に入手したある情報を持ってきたんだけど、ずっと尾行されてる気がして・・・」
そう言いながら、ゆかりは予告もなしにくれないの大きな胸へと躊躇なく飛び込んだ。
ゆかり 「・・・やだ、怖いわ。。。ねっ、お願い・・・少しの間でいいの、このままでいさせて。」
くれない 「えっ・・・いや、その・・・なんて言うか、ま、まぁ・・・少しくらいだったら、あれなんだが。。。」
ゆかり 「この際だから言っちゃうけど、実はずっと気になっていたのよ・・・貴方のことが。」
そんな腕の中のゆかりの突然の告白に、戸惑うばかりのくれないに、尚も畳み掛ける専任捜査官である。
ゆかり 「でもね、貴方には・・・1号さんや小紅さんがいるじゃない、ゆかりずっと歯痒かったのよ。」
※ もちろん、これまではそういう対象として彼女を意識したことはなかったくれないであったのだが・・・。
ごく一般的な男の立場としていうなら、女性から告白されて・・・そう悪い気はしないものである。
ゆかり 「貴方が、吸血鬼だってことも承知で言ってるのよ、なんだったら・・・今すぐにでも、
この首筋に、その牙を立てて血をすすってもかまわないの・・・もし、お望みならば。。。それ以上だって。」
くれない 「い、いや、その気持ちはうれしいが・・・そ、それはできない。」
若干、しどろもどろになりながらも・・・くれないは精一杯の理性でもって、己が衝動を抑え込んでいた。
ゆかり 「・・・いいのよ、この身体を思うまま、貴方だけのものにしてほしいの。」
尚も力いっぱい抱きついてくるゆかりの大胆な行動に、翻弄されながらもまだなんとか耐えていた。
ゆかり 「誰にも何も言わないわ・・・たとえ一度きりの契りでもかまわない、ねぇ、・・・お願いよ!」
そう言って、髪をかるくかきあげて・・・白いうなじを見せながら挑発してくる姿は、
吸血鬼の一員であるくれないの本能を揺さぶるに充分足りている仕草であったのだ・・・。

※ くれないの耳元で囁く様に誘惑してくるゆかりの白い顔に、あの “ Bee ” の証でもある隈取が・・・ !?
ゆかり 「・・・きつく抱きしめていてね。。。そう、永遠に離れないように、ギュ~っと力強くよ。」
耳たぶをなぶる様に、熱い吐息をかけながら・・・ゆかりの姿をしたものは、ぐいぐいと腕で締め付けてくる。
それは、まるで万力のようなすごいパワーで、くれないをしっかり固定させて身動きできないようにした。
くれない 「・・・っくぅ、なんて力なんだ。。。ダメだ、動けん!」
ついに、その正体を現した!・・・やはり、ゆかりではなく “ Bee ” の変身であったのだ。
・・・こともあろうに、ゆかりの生皮を器用に剥ぎ取り、すっぽりとそれを被っていたという、
あまりにも類を見ない非常に悪質な手段でもって、このくれないさえも騙していた訳なのである。
くれない 「くっ、貴様は・・・やはり、Beeか!・・・て、てめぇ、彼女をいったいどうしたんだ!! 」
Bee 「けけけ・・・心配するな、直に会えるさ・・・あの世でだけどな w 」
※ 両のまなこから、妖しく光を発し・・・その全身を半径2m四方だろうか、透明のバリヤーが包み込んだ。
くれない 「・・・なんてこった、抵抗などできない弱いものを !?」
Bee 「くっくっくっ、あたしゃ~慈悲深いって有名なんだよ・・・何の苦痛も感じさせずに、
楽に逝かせてやったさぁ~、きっと自分が死んだことにも気づいてないくらいにね!・・・あははっ!! 」
みるみると目に見えないバリヤーみたいなものがくれないたちをすっぽりと包み覆ってしまったのだ。
Bee 「むらさき本人がターゲットだったけど、まぁいいさ・・・おまえで我慢してやるよ。。。
このあたしと一緒に地獄までランデブー♪・・・って洒落込むとするかぃ~、ほら、光栄に思うんだね w 」
この “ Bee ” は、特殊な任務を自ら名乗りを上げて、ここで待ち構えていた一種の人間爆弾なのである。
まさしく・・・自爆テロをかけることにより、その命と引き換えに絶大な効果を得る特攻部隊なのであった・・・。
Bee 「・・・すべては、マダムのために!。。。マルゴさま万歳!! 」

※ まばゆいまでの閃光の中、Beeの自爆によって・・・くれないの身体は木っ端微塵に消し飛んだのだ。
くれない 「う、うぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!! ! 」
特殊なバリヤーであったのだろう、凄まじい衝撃であったにもかかわらず、
直径4mを越えては・・・なんら影響が出ることもなく、周りの建造物にもまったく被害は及ばなかった。
・・・しかし、そのバリヤーの中に閉じ込められていたくれないは、
文字通り塵ひとつ残ることなく、跡形もなく、この世から姿を消し去ってしまったのである。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・ついに、恐れていたように、マダム軍の手段を選ばないやり方に、
こちら側の被害者が出てしまいました。。。そして、くれないもまた然り・・・。
ただ、吸血鬼であるならば・・・一握りの灰でもあれば、そこから復活できる可能性もあります。
しかしながら・・・その灰さえもなく木っ端微塵となると、その方法さえももはや不可能だと言えるでしょう。
この先、どんどんと犠牲者がでてしまうのでしょうか・・・ではまた次回、お会いしましょう。」

※ こんな風に、七夕飾りの前で佇むくれないの勇姿を、また見れる日がやって来るのでしょうか? (謎)
2009年07月20日
混沌 -カオス-
実は、監視カメラにもれなく記録されており、その主であるむらさきの知ることとなったのだ・・・。
・・・さらに詳細を調査するべく、他の誰にも教えずにこの場所までやってきた訳である。

※ 映像に残されていた通りの場所に立ち、何か情報がないかと仔細に現場を捜査する魔王:むらさき。
むらさき 「ゆかり嬢・・・、彼女がこっちへ戻ってくることは充分考えられる範囲内の事象であったが、
まさか、監視をつけておいたはずのFBIの目をすり抜けてくるとは・・・、そこは誤算であったと言えるな。」
そう、FBIの知人を通じて派遣されていた新人の封印専任捜査官、ゆかりは “ Bee ” の一撃により、
あえない最後を遂げ、その生皮を剥がされてしまい・・・それを、くれないの殺害に利用される破目になった。
むらさき 「ヴァンパイアという、特殊かつ強力なパワーを持つ存在のくれないでさえ、
その正体がすぐに判断できないほどの完璧な変身術・・・やはり、マダム軍の持つ脅威の科学力、
・・・いや、それだけではない恐るべき力は、想像以上のものであると言える結果となったか。」
ひとり現場を物色するかのように徘徊するむらさきは、ここで起きたことを冷静沈着に解析していた。
それは・・・とても被害者の身内のものではないような、ある種とても冷めた分析であったと言えるだろう。

※ 魔王と化した時にみせる、この2枚の大きな黒い翼が・・・彼の姿をより一層、孤高なものへと映し出す。
むらさき 「・・・さて、この事実を隠さず皆に伝えるべきか、否か。。。どうすることにしようか。
ただ、くれないに関しては・・・まだわからぬ事もある、これらのデータだけでは判断も出来かねないな。」
どうやら、くれないの件については保留、ゆかり嬢の件は皆に報告するということに決めたらしい。
・・・利用できるものは、たとえそれがどのような内容であっても、うまく活用し役立てるということらしい。
そう、彼がもし判断を誤ることがあれば・・・それはすなわち、くれない軍団壊滅の引き金となってしまうのだ。
しかし、そのようなプレッシャーともいえる重圧を、むらさき自身が感じているのかは不明であるが・・・
むらさき 「・・・あの映像から判断するしかないが、直径4mほどのドーム型の遮断された空間、
すぐにこいつを何とかしないと、これからもまた新たな犠牲者がでてしまうだろうな。」
強大なマダム軍に対し、まだまだ非力であるくれない軍団の参謀としては、
これくらいのことで、悲しんでる時間など持ち合わせていない・・・ということであろうか。。。

※ その頃、跡形もなく吹き飛んでしまったくれないは、深い、深い~深遠の闇の中にただただ漂っていた。
くれない (・・・ここはいったい~~、どこなんだろう~~、俺はどうしてしまったんだろうか~~。)
そこには上も下もなく、広いのか狭いのか・・・その境目もわからない謎めいた暗黒の空間であった。
もしかしたら、・・・時間という概念も存在しないのかもしれない。。。
くれない (・・・あぁ、なんだか~~、とても気持ちがいいな~~、このまま溶けてしまっても~~、
かまわんかもしれん~~、もうなんだか疲れてしまった~~、俺はここで休むことにすっかな~~。)
くれないは、どこか耐え難いその誘惑にいつしか抗うことも忘れ、その身をゆだねようとしていた。
・・・ 「・・・何を弱音を吐いておるのだ、・・・そこは、“ 無 ” の中なのだぞ、・・・しっかり意識を持たんか、
・・・それくらいで根を上げるとは、・・・我れらヴァンパイアの風上にもおけんわ、・・・この痴れ者めが!」
それは、とても聞き覚えのある・・・あの方のどこか暖かい叱責の声であった。
・・・どうやら異空間より心話を飛ばし、直接くれないの心に語りかけてきているらしい。

※ いまくれないの身体を形成してるのは、生きていた時の記憶に基づいたものであり、実存のではない。
くれない 「・・・おぉ~~、そのお声は、たしかに我が師匠~~、お懐かしゅうございますぅ~~、
お元気でおられましたか~~、その節は大変お世話になりました~~、本日もよいお日柄で~~。」
伯爵 「・・・戯け、・・・何を寝惚けておるのじゃ、・・・我れには、そのようなバカ弟子など、・・・おらぬわ。
・・・よいか、・・・そなたは冥府の入り口を彷徨っているのだ、・・・このままの状態では近いうちに、
・・・たとえヴァンパイアといえども、・・・混沌と同化すれば、・・・二度とよみがえることが叶わんのだぞ。」
くれない 「・・・えぇっ !?~~、 それは困ります~~、どうすればいいんですか~~。」
伯爵 「・・・まったく、・・・そなたには手がかかるな、・・・よいか、・・・しっかり自分を持て、・・・そこは、
・・・強い意識を持つものしか、・・・その存在を許されんところなのじゃ、・・・生きる意志を示すのだ。」
半ば呆れたといえる態度ではあったが、やはりどこか暖かな言葉の響きであった。
※ 伯爵の言葉が、くれないの中に流れ込むと・・・失われていた力が再びみなぎってくるのがわかった。
くれない 「俺にはまだ、やらねばならん事がたくさんあるんだ~~!・・・このままではおれん~~!! 」
伯爵 「・・・そなたの身体は、・・・いまは無いものなのだ、・・・故に、・・・すぐに復活という訳にはいかぬが、
・・・まだ打つ手がない訳ではない、・・・そのためにも、・・・ここでカオスと一体化してはならぬのだ。」
この伯爵の言葉を深く噛み締めて、くれないは己を再認識し・・・なんとか留まることが出来た。
だが、完全に復活するには・・・現世に己の肉体を持たなくてはならないようだ。
・・・いったい、その方法とは何なのであろうか?
・・・つづく。
ナレーション 「・・・残念ながら、普通の人間でしかなかったゆかり嬢は、現状のままでは、
もう二度と再び、生きて現世に帰ってくることはできないようである・・・。
しかし、またもや伯爵の助言などにより、真の意味での消滅を免れたくれないには、
・・・まだいくらかの可能性が残されていることが判明した。
さて、その復活の儀式に必要なものとは何なのであろう・・・それは誰の手によって行われるのだろうか?
ではでは、また次回・・・ここでお会いしましょう。」

※ その復活の時まで、己自身を見失わないようにひとり懸命に奮い立たせているくれないであった。
2009年07月29日
黒&白の旋律(メロディ)
・・・そして、くれないが現在、消息不明になっていることが皆に知らされた。
そのこともあり、ローズマリーは定時連絡も兼ねて・・・急ぎゼブラと落ち合うことにした。

※ 自ら進んで “ はぐれ隠密 ” として・・・過酷な任務に身を投じる凄腕のくのいち、・・・その名はゼブラ。
今回、待ち合わせ場所として、彼女が指定してきたのは地中海を望むとある別荘地であった。
ますます激化するマダム軍の攻撃・・・それに伴い監視の目も当然激しくなり、
これまでのように、潜入しながらスパイ活動を続けていくのもかなり厳しい状況となってきた。
以前は、世界各国から派遣されている間者も数多くいたのだが、
見つかり次第、闇から闇へと処分されており・・・その数も激減している現状である。
マダム軍による “ スパイ狩り ” は・・・もうすぐそこまで追跡の魔の手が伸びていると言えるだろう。

※ 自称: “ 通りすがりの踊り子 ” として世界中どこへでも単身、諜報活動に出向くゼブラに休息はない。
ゼブラが毎回指定してくる場所は、とても景色がよく・・・ひと気のないリゾート地であることが多い。
これは、ローズマリーにせめてもの気分だけでも味わってもらおうという、
同じく激しい任務についている者同士だからわかる・・・ゼブラからの心遣いと言えた。
本当であれば、お洒落をしたり・・・恋をしたりと、そういうお年頃であるのだが、
彼女たちの背負った哀しい運命は、そんな当たり前のことですら許されるはずもなかった。
・・・けれども、それよりも、もっと熱い想いが彼女たちの中にあることは間違いない事実であったのだが。

※ いつものように定刻通り、寸分の狂いもなく待ち合わせ場所に姿をみせた黒いドレスのローズマリー。
すぐに、水辺に腰掛けて佇んでいるゼブラの姿をみつけ、同じように横に座った。
ゼブラ 「・・・うふふ、元気そうでよかったわローズマリー。。。それで、あたしの姫さまのご機嫌はどう?」
ローズマリー 「えぇ、・・・やっぱり少し落ち込んでおられるみたいだわ。」
ゼブラ 「そっかぁ、まぁ知り合いがあんなことになったんだもの・・・しかたないわね。
それに、あのくれない氏が行方不明って件も・・・実のところは怪しいものだしねぇ。。。」

※ 屈託なく微笑む幼馴染のゼブラに対し、その身を案じ・・・とても複雑な心境のローズマリーであった。
彼女たちも、それなりに深い経験を積んできたエキスパートである・・・
入手した乏しい情報だけで判断することはなく、
総合的にあらゆる可能性を考慮し、物事を全体的に考察するクセが身に染みついているのだ。
ローズマリー 「あれは、明らかに・・・むらさきさまのお考えがあっての発表だと思われるわ。」
ゼブラ 「・・・うふふ、あのお方も相当に食えない殿方だともっぱらの評判だものねぇ~ ♪
あっ・・・当然なんだけど、いま言ったことはあたしの姫さまには、絶対内緒にしといてよね w 」

※ 本能的に何者かの気を感じ取り・・・心配な目をするローズマリーをそそくさと送り出そうとするゼブラ。
“ はぐれ隠密 ” という特殊な任務に携わるゼブラは、誰よりも危険に対するアンテナが敏感であった。
ゼブラ 「あぁ、ごっめ~ん。。。あたしさ、このあと情報提供者と会うことになってるんだよね・・・
そいでさぁ、悪いんだけど~、今日のところはこのへんで、おいとましちゃうわ ^^; 」
ローズマリー 「それは、しかたないことね・・・わかってると思うけど、くれぐれも油断はしないで。」
ゼブラ 「あいあ~い、ほんと心配性なんだから~会えてよかったわ、またね、ローズマリー姉さん w 」
普段から、少し強引な性格だとわかっていたので、ローズマリーもあまりおかしくは思わなかった。

※ そのふたりのやりとりを気配を殺し、そっと岩陰から様子を伺っていたのは・・・あのスージーであった。
なかば強引に、ローズマリーを追い返した形になったが、なんとか危険区域から離すことには成功した。
それで気が抜けたのか、ぺたんっと、その場にしゃがみこみ・・・力なく座り込むゼブラである。
ゼブラ 「ふぅ~、そこでコソコソと隠れてる方、もう出てきていいわよ・・・堂々と姿をみせたらどうなの?」
スージー 「あらあら、威勢がいいわぁ~・・・たしか、自称:通りすがりの踊り子さんだったわよね w
仲間をこっそり逃がしてあげるなんて~、浪花節っていうのかしら?・・・泣っかせるわねぇ~っ www 」
そんな悪意に満ちた毒々しい台詞を吐きながら、スージーはその姿を悠々とみせるのだった。

※ まるで見下すように、眼前のゼブラを睨みつけ・・・無言の威圧で相手を圧倒するスーツ姿のスージー。
ゼブラ 「通称、気まぐれスージー・・・しかしてその実態は、マダム四天王筆頭。。。キャンティ女史ね。」
キャンティ 「ふふふ・・・、なかなかお利口なネズミさんだことねぇ。。。褒めてさしあげてよ!
でも残念よね~、せっかく苦労して逃がしてあげたみたいだけど、さっさと、あなたを殺したら~っ、
すぐあとを追って彼女にも死んでもらうことになるんだものね~・・・あははははははっ。w 」
ゼブラ (・・・ダメだわ、この圧倒的な実力の差を埋めることは不可能ね。。。ふっ、しかたないかな。)
どう足掻いてみても、その持てる力の差は歴然としており、万に一つも勝ち目などなかった。

※ 獲物を見据えた猛獣の如く、スージー・・・いや、キャンティのハンターとしての顔つきが変わっていく。
キャンティ 「いろいろと嗅ぎまわってくれてたようだけど、ただ泳がしてあげてただけなのよぉ~っ、
あなたやローズマリーが死ねば・・・あの小紅姫ったら、どんな顔するんでしょうね~楽しみだわ w 」
ゼブラ 「マダムの右腕とも言われ、その実力は確かなようだけど・・・あんた、ほんと性格悪いわよね!」
キャンティ 「・・・あら、褒められちゃったわ。。。お礼に丁重に葬ってあげないとね~っ www 」
そのキャンティが攻撃態勢に入るまさに直前・・・一瞬先に行動に移ったのはゼブラの方であった。
・・・全神経を集中させ、持てるすべての力を込めて。。。その生涯、最期となる “ 舞 ” を披露したのである。

※ “ はっ! ” “ ハーッ!! ” “ 破ーっ!! ! ” ・・・すさまじい気合のもと、渾身の一撃が放たれたのだ!
その舞から繰り出される必殺の一撃は・・・自らの命を力と変えて攻撃する究極の技、最終奥義であった。
一方、キャンティも油断していた訳ではなかったが、
ゼブラの決死の覚悟が強かったこともあり、避ける間もなく、まともに直撃をくらってしまったのである。
キャンティ 「・・・ぅぅぅううううううおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーっ!! ! 」
しかしながら、やはりというか、・・・その攻撃でさえもキャンティに止めを刺すまでには至らなかった・・・
キャンティ 「。。。うううっ、窮鼠猫を噛むだっけ・・・やるじゃないか、まったく、たいしたもんだよ。。。
まぁ、こっちがただのネコじゃなかった訳なんだけどさぁ~、それにしても・・・このあたし相手に、
・・・くっ、ここまでの深手を負わせるなんてねぇ~っ、これだから面白いねぇ・・・人間ってのはさっ !? 」

※ まるで眠るように静かに横たわるゼブラを、そっと抱き寄せて・・・妖しく満足げに微笑するキャンティ。
・・・力尽きて、もう二度と動くこともしなくなってしまったゼブラを傍らに引き寄せ、
自分自身もかなり満身創痍のキャンティは、ベンチに腰掛け・・・その亡骸を愛しげに愛撫した。
キャンティ 「くっくっく・・・壮絶だったねぇ~、これじゃ流石のあたしも一歩も動けないって訳だわ。
あんたのその命を懸けて友を救った行為に免じて、今回は諦めるとするよ・・・あっはっはっはっ w 」
眼鏡の向こうの相貌を、妖しく輝かせて・・・マダム四天王筆頭、キャンティは高らかに笑った。
キャンティ 「まぁ、敬意を表してさ、あたしの力の源である水のところへ・・・あんたを葬ることにするよ w 」

※ 滝壺へと打ち捨てられたゼブラの骸、・・・やっと彼女にもゆっくりできる時間が訪れたのかもしれない。
こうして、またひとり貴重な命が消え、・・・新たな犠牲者となってしまった。
マダム軍による包囲網は、音もなく忍び寄り・・・もうほんのすぐそばまで迫ってきているのだ。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・次から次へと、くれない軍団側の被害は広がっていきます。
このまま、巨象に踏み潰される蟻のように・・・抗うことなく消し飛ばされてしまうだけなのでしょうか?
たとえ、この先・・・くれないが現世によみがえる事があったとしても、
その時にはもう取り返しのつかない事態に陥ってるかもしれないのです。
・・・では、またこの時間に、ここでお会いしましょう。」

※ 清らかな水の流れにその身を任せ、ゆるりと受けた傷を癒す四天王筆頭、・・・何思うのかキャンティ。

※ この時のローズマリーは、ゼブラが命をかけて・・・我が身を守ってくれたことをまだ知る由もなかった。
2009年08月01日
幽閉されたプリンセス
彼女はマダムの研究施設に派遣されていたのだが、渡仏したちょびさんの誘拐にあわせる様に、
その身柄を拘束され・・・そして、何らかの洗脳を受けて、あのマダム親衛隊の一員となっていたのだ。

※ 彼女なりのポリシーであろうか・・・親衛隊制服ではなく、あえて着物に身を包んでの登場となっている。
アイリスといえば、若き天才科学者として・・・その名を馳せており、実力は申し分ないのだが、
しかし、その性格もかなり独創的で、そのことが “ 魔王編 ” においても遺憾なく発揮されていたのである。
彼女の歪んだともいえる、むらさきへの熱い想いがボルドに利用され、大魔王への道を歩むことになり、
その結果、様々な事件が封印を中心に起こった。。。・・・というのが簡単な“ 魔王編 ”のあらすじである。
そんなアイリスが、これまで静かになりを潜め、表舞台に立っていなかった訳であるが、
この状況に至って、ようやく動き出した真相とは、いったい・・・いかがなものなのだろうか。

※ 龍神族長老の孫娘、すみれ・・・龍騎士であるりんどうの婚約者にして悩みの種でもあるお転婆姫君。
あの時のちょびさん同様、アイリスにも親衛隊隊長である麗華自らの手により、
かなり深いレベルの意識の奥で、洗脳が施されているとみて・・・まず間違いはないであろう。
しかしながら、大魔王の封印を持つアイリスにそれがどこまで有効なのかは謎のことなのである。
普通の人間でしかないちょびさんのように、実際にその本人の知らぬところにおいて、
ちゃんと洗脳の効果があるのかは、それを施行した麗華にでさえはっきりわかってなかったと言えるだろう。
まぁ、あのアイリスの性格からすると・・・現在、おとなしくしてるところがその何よりの証だと言えるのだが・・・

※ 真紅の着物をまとい、何やら怪しげな孤島の浜辺にて、待ち合わせの相手、りんどうと会うアイリス。
パトロール中のりんどうに、Beeを使って渡りをつけ・・・指定した島へと密かに呼び出したのである。
そう、その内容とは・・・もちろん、 “ すみれ ” の消息に関することであった。
アイリス 「わざわざ、ご足労願って悪いわね~りんどう・・・いえ、龍騎士さんと呼べばいいのかしら?」
りんどう 「・・・御託はいい、用件をさっさと言ってもらおうか。」
アイリス 「ふん、あんたもせっかち派タイプなのかい・・・やっぱり、あたしのむらさきよりも、
いい男なんてこの世にはいないって事なんだねぇ~ そりゃまぁ、当然のことなんだけどさ w 」

※ のら~りくら~りと自分のペースで話すアイリスに苛立ちを隠せないでいるまだ若い龍騎士、りんどう。
りんどう 「・・・!」
アイリス 「おぉ、怖い顔だこと・・・あたしに手出ししても無駄だよ、あたしはただのメッセンジャーなのさ。
あんたの大事な姫君を預かってるさるお方から頼まれてここに来てるだけなんだからねぇ~。」
りんどう 「・・・だから、何が目的なのか話してくれと言ってるんだ。」
アイリス 「ふっ、まぁいいさ、あんまり焦らしてばかりも・・・若い身にはつらいだろうからね。
ようは簡単なこと、あんたの婚約者・・・すみれ様はこっちで丁重に預かってるって話だよ。」

※ いつものように冒険心からか、こっそり抜け出した先で、屈辱にも捕獲され幽閉されてしまったすみれ。
アイリス 「まったく、健気じゃないか・・・あんたの役に立ちたかったんだろうねぇ~、
お供もなしで単身、敵地のど真ん中に飛び込んでくるなんてさ。。。命知らずにも程があるわね。」
りんどう 「・・・くっ、なんという早まったことを!」
アイリス 「もちろん、たいそう高貴なお方だし・・・極めてご丁重に扱ってはいるのよ、
下手に怒らすと、どうなるかくらい想像がつくからねぇ~、ゆっくり眠ってもらってるところさ。」
りんどう 「・・・それで、俺に何をどうしろと言うんだ?」

※ りんどうのその言葉を待っていたかのように、アイリスの表情は一変し、大魔王の片鱗をみせたのだ。
アイリス 「ふふふ、話の早い男はすきだよ・・・そうだね~、小紅を片付けてくれるとありがたいんだけど、
まぁ、それよりも順番から言えば~あの裏切り者のゾラを消し去ってもらいたいところだよねぇ~。。。
これまでおくびにも出さなかったのに、このあたしのむらさきに色目使うだなんて・・・許せないんだよ!! 」
りんどう 「・・・。」
アイリス 「でもね、これは無理強いなんかじゃないの・・・あんたにはこれまで同様にね~、
ただ “ 監視 ” だけをしててくれたらいいんのよ。 ・・・それで大事なプリンセスは無事でいられるって訳。
・・・まぁさっきの条件をクリアーしてくれたのなら、釈放してもらえるように手を回すんだけどねぇ~っ ♪ 」

※ 本当に洗脳をされているのだろうか?。。。己の欲望にのみ従い忠実に生きる女・・・堕天使、アイリス。
なおも渋るりんどうを軽くあしらい、話はこれまでだと・・・とっとと追い返してしまったアイリス。
この先、彼女の奥深い中で封印され眠っている大魔王がまた目覚めてしまうこともあるのだろうか・・・
そして、龍神族の有力者でもあるすみれ姫を幽閉できるほどの実力者とはいったい誰なのか?
・・・つづく。
ナレーション 「・・・またしても恐れていたことが起こりました。。。あのすみれ様の幽閉です。
冒険好きということで、想像ができる結果でありましたが・・・またもや足枷が増えてしまいました。
して、アイリスのいう “ さるお方 ” なのですが、そういえば四天王には、確かもうひとり誰かが・・・
ではでは、またここでこの時間に・・・お会いしましょう。」

※ 意識を奪われ力を失い幽閉されてる我が主、すみれを救おうと必死に炎を吐きつづけるドラゴンの幼生。
2009年08月06日
チョビ太郎
そんな中、忘れてはいけないのが、もうひとつの勢力であるあの “ マスター・ボルド ” の動向であり、
また彼に連れ去られたちょびさんと、その警護のため一緒についていった愛犬チョビ太郎♂の存在である。

※ 優秀な探偵犬でもあるチョビ太郎♂は、大好きなちょびママを・・・影に日向にいつも見守っているのだ。
“ 闇の黙示録編 ” ・・・その真の鍵を握ると言われているのがマスター・ボルドであるのだが、
いまだに彼が大きく動いたという気配は聞こえてこない・・・しいて言うなら、ちょびさんの誘拐?であろうか。
それに、マダム親衛隊の麗華によってちょびさんに施された洗脳を解いてみたりと、その動きも謎である。
一説には、チョビ太郎♂の主治医時代に何かと世話を焼いてもらった恩もあるということだ。
また、当時からチョビ太郎♂自身とも個人的に付き合いも深かったりと・・・特別な間柄であったりもする。
※ ちょびママとチョビ太郎♂との出会いはとあるペットショップで・・・ちょびさんの一目ぼれであったという。
謎の魔人ではあるが、人間と違い裏切ることがないチョビ太郎♂によせる想いというのは確かにあるだろう。
・・・彼もまたある意味、チョビ太郎♂の魅力の虜になったひとりであると言える。
そう考察すると、まだボルドが非情にならずにいるのは・・・このふたりのおかげなのかもしれない。
・・・つづく。
ナレーション 「ボルド、ちょびさん、チョビ太郎♂・・・彼らの間には、こんな意外な繋がりがあったようです。
この関係をも超越して、マスター・ボルドが動き出す・・・その時、きっと大きな “ 革命 ” が起きるでしょう。
それでは、またここで・・・この時間に、お会いする事にいたしましょう。」
※ ボルドが救世主となるのかどうか、その鍵を握っているのは・・・ちょびママ&チョビ太郎♂かもしれない。
2009年08月09日
小鈴と小紅
その圧倒的な力を持って襲いかかるマダム軍に対し、ただ翻弄されるままのくれないの軍団、
激しい戦いの最中、それぞれの思惑が複雑に交差するが、ついにあの方が動きをみせたのだった・・・。

※ この誰かと瓜二つの女性は・・・もちろん、小紅ではない。。。何代か前にあたるご先祖さまなのだ。
こちらの女性の名前は “ 小鈴 ” といい、小紅と同じく・・・当時の封印継承者である。
・・・そう、あの伯爵らと共に “ 大魔王 ” を封じ込めることに成功した功労者のひとりでもあるのだ。
その時の怪我が元で、一時的にだが不死身の身体ではなくなった伯爵の介抱をしたのも彼女である。
そして、伯爵が愛しきマルゴのところへ帰らなくなってしまった原因も・・・彼女、小鈴にあるというのだが・・・
そんな小鈴の性格はと言えば、やはりそこは小紅のご先祖さまである、俗にいう “ ツンデレ ” で、
聡明であり、凛としていて・・・また時折みせる優しさに、普通の男であればイチコロといったものであろうか。
この小鈴らの生きていた時代といえば、いまより遥かに世界は混沌としており、
魑魅魍魎の類や、幻想の世界の住人どもが、大手を振って闊歩していたのである。

※ 先程とまた変わるが、こちらが本来の小鈴の姿で・・・封印継承者ではない素顔の彼女がここにあった。
それら異形の能力者どもを統べるべく立ち上がったのが、
闇の支配者・・・伯爵であり、勢力的に活動し、闇と光の秩序を保っていた訳なのである。
・・・だがしかし、大魔王という未曾有の強敵が封印より蘇ったため、
協力を求め、手を結んで共に闘った仲間が小鈴たち人間の能力者であったのだ。
これまでにも数々の強敵、難敵を打ち負かし配下に加えてきた伯爵であったが・・・
彼女の協力なしでは、あの不倶戴天の敵、大魔王の封印は叶わなかったと言えるほど苦戦を強いられた。
・・・小紅は、その小鈴より一子相伝で綿々と続く正当な封印の継承者であって、
潜在する能力は底知れないのだが、未だ、その全貌はみえておらず・・・開花するに至ってないのである。
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※ この衣装の小鈴が封印継承者として目覚めた時のスタイルで、超絶な力を発揮したと伝えられている。
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そんな小紅に、伯爵自らが・・・極秘に呼び出しをかけて、自身の統治する地へと招き入れたのだ・・・
それは異例中の異例のことであり、これまで何百年以上もの間・・・全くありえなかった稀有な事象である。
小紅 「・・・お招きいただき、やってまいりました。。。小紅と申します。」
伯爵 「・・・うむ、・・・やはり、・・・よく似ておるな、・・・よくきた小紅よ、・・・そなたに頼みがあるのだ。」
何やら、意味深な言葉を投げかけつつも・・・伯爵は躊躇なくこう切り出した。
伯爵 「・・・くれないのことだが、・・・あれはいま肉体を失い、・・・冥界の入り口を彷徨っておる状態なのだ、
・・・このままでは、・・・いずれか近いうちに、・・・本当に滅び去ってしまうことになるであろう。」
小紅 「・・・くれないくんが、この世から消滅してしまうという事なのですか?」

※ 伯爵と小紅・・・このふたりがこうして直接会い、いや間接的に会話するのも今回が初めての事になる。
伯爵 「・・・この我れ等、・・・不死のヴァンパイアといえども、・・・能力が未熟なものは、・・・封印されたり、
・・・また滅ぼされるものもおる、・・・あれもまだまだ未熟者だが、・・・このまま捨て置くのも忍びない。」
小紅 「・・・伯爵さまは、そこまでくれないくんを思って下さっているのですね。」
伯爵 「・・・ふっ、・・・そなたといると、・・・小鈴といる気持ちになる、・・・それは遠い過去のことだが。」
小紅 「・・・ “ 小鈴 ” というのは、伯爵さまとご一緒に闘ったというあたしのご先祖さまのことですか?」
伯爵 「・・・うむ、・・・知っておったか、・・・あれもまた、・・・そなた同様、・・・心根の強い女性であった。」
小紅 「・・・たしか古い文献の中で、その名前を拝見した覚えがございます。」
伯爵 「・・・その見目もまた、・・・まるで生き写しのように、・・・似ておる、・・・我れの記憶にあるままにな。」

※ それは幻の姿であったのだろうか、伯爵の記憶に残る小鈴の映し身が・・・小紅の横に現れたのである。
小紅 「・・・本当に、あたしとそっくり。。。いえ、あたしの方が似ているという事になるのね。」
伯爵 「・・・小鈴には、・・・世話になった、・・・その想いは、・・・いまも決して忘れることなどない。」
・・・どれくらいの時間が経過したのかわからないが、伯爵は感慨深い目で小紅をじっと見つめていた。
伯爵 「・・・くくくっ、・・・戯言であったな、・・・いまはまず、・・・くれないの件を優先させねばなるまい。」
小紅 「・・・では、その方法というものを教えていただけますでしょうか。」
伯爵 「・・・とり急ぎ、・・・やつの肉体を用意せねばならぬ、・・・それにはいくつかの条件が必要となるのだ、
・・・ひとつは、・・・やつの現存する細胞組織、・・・できるだけ新しいものがよいな、・・・あともうひとつは、
・・・やつを強く思うものの新鮮な血、・・・その数や量は、・・・多ければ多いほどよいのじゃ。」

※ 伯爵のふたつの眼が紅く光ると・・・そこに現れたのは、人狼吸血鬼であるデュークの姿であった。
伯爵 「・・・事態は急を有し、・・・一刻の猶予もない故、・・・そなたのもとに、・・・やつを遣わすことにする。」
デューク 「・・・まぁ、なんだ~お手柔らかに頼むぜ。。。小紅姫さまよ w 」
・・・生死を彷徨うくれない復活に向けて、小紅たちはいま本格的に動き出した。
・・・続く。
ナレーション 「・・・ついに、あの伯爵さまが間接的にとはいえ、行動を起こしました。
そして、小紅のご先祖さま・・・ “ 小鈴 ” に関する情報もほんの少し垣間見ることができました。
しかし、まだまだ・・・明らかにされていない本当の隠された真実があるはずなのです。
そうです、伯爵が妻であるあのマルゴのもとへ帰らなくなった理由というものが・・・
ではでは、またここで・・・この時間に、お会いいたしましょう。」

※ その復活の時を信じて、いまにも消えそうになりながらも、悠久とも思える時間の中を混沌 -カオス- にて、
・・・ひたすら彷徨い続けているくれないの精神体。。。はたして、無事に蘇ることはできるのだろうか !?
2009年08月12日
選択の刻
彼には、 “ 創作絵本作家 ” という表の顔の他に、もうひとつ、周囲には隠している裏の顔がある・・・、
そう・・・それは、運命の悪戯か、 “ 偽くれない ” となるべく生まれてきた哀しきクローンとしての姿であった。

※ 美しい海と隣接する静かなSHOPの中庭に、突如、呼び出されたしゅろ・・・その胸中はどんなだろうか。
自分にとって絶対の存在である敬愛するマスター・・・、そのボルドの命令でなければ、
いますぐにでも飛んでいき、いまだ意識が戻らないちょびママのそばにずっとついていたいしゅろである。
彼は、生まれて初めて接し、やさしくされた人間の女性であるちょびママに、
とても心を許し、その彼女をこの手で守りたいという・・・強い気持ちがあった。
・・・一度などは、恩あるマスターにも背き、心のままに単身渡仏したほどである。
しかし、その行動でさえも・・・ボルドにとっては想定内のことであったにすぎないのだが。。。

※ ここに、しゅろを呼び出したのは・・・小紅であり、急遽助手に任命された人狼吸血鬼のデュークである。
待ち合わせの場所に音もなく現れたのは、封印継承者・・・小紅と、 “ 追われる男 ” デュークであった。
小紅 「・・・よく来てくれたわ、呼び出した理由だけど、大体の見当ついてるわよね?」
しゅろ 「いえ、指し当たっては何も、・・・このボクにどんなご用があるのでしょうか?」
デューク 「いいんだよ、兄弟・・・ネタは上がってんだ、もうここで隠す必要なんかはないんだぜ。」
しゅろ 「はぁ・・・そう言われましても、まったく思い当たる節がありませんので。。。」
そんな感じで、ふたりの追求を・・・あくまでも、すっとぼけるしゅろであった。

※ 人狼であったデュークは、伯爵に修行され吸血鬼になったので、伯爵には頭が上がらないのである。
デューク 「ったく、おめえんとこのボルドってのは、たいしたやつなんだな・・・俺たちをここまで謀り、
その正体を気づかせないなんて、すんげぇ~ってもんだぜ・・・まるで、伯爵やマダムクラスの実力だ。」
小紅 「・・・そうね、伯爵さまに言われなかったら、ずっとそれがわからないままだったなんて。」
しゅろ 「う~ん・・・おふたりのおっしゃる意味が、ボクには理解できないのですけど?」
デューク 「ふっ、おめぇさんもたいした役者なんだな・・・俺ら、伯爵一派のヴァンパイアってのは、
ある共通の記憶ってのを持つのが特徴なんだよ・・・あるんだろ、その記憶がさ・・・おめぇさんにもよ。」

※ そんなふたりの追求など、どこ吹く風といった感じで、まったく知らぬ素振りを貫く姿勢のしゅろである。
小紅 「・・・ねぇ、しゅろくん。。。いいえ、 “ 偽のくれない ” くんと言ったほうがいいのかな?
あなたの大好きなちょびママを、あたしたちも助けたいのよ・・・だから、協力してほしいの。」
しゅろ 「・・・っうぐ。」
デューク 「けっ、そこにだけは反応すんのかよ。。。まったく現金な野郎だぜぃ w 」
小紅 「・・・あなたの協力が必要なの、お願い・・・マスター・ボルドに会わせて。」
しゅろ 「・・・ !?」

※ その時、デュークの身につけている林檎型のバックルが眩しく光を放ち、3人を異空間へといざなった。
先ほどまで、心地よく聞こえていた波音も消え去り・・・あたりは無音の世界に包まれていた。
デューク 「・・・いまここは閉じられた空間の中だ、周囲に話を聞かれる恐れはまったくなくなったぜ、
それに、おめぇの正体を知ってるのは、ここにいる俺らだけで・・・この先も他の誰かに話す気はねぇ。
まぁ、これまで通りに・・・仲間の誰にも危害を加えないならって事だがな、どうだ観念しろよ・・・兄弟。」
小紅 「・・・くれないくんが、危険なの。。。そうなったら、きっとちょびさんも悲しむことになるのよ。」
しゅろ 「・・・ちょびママが悲しむ?」
小紅 「・・・そうよ、ちょびさんはみんなで揃って、楽しく暮らしたいのよ、もちろん。。。あなたも一緒にね。」

※ 小紅たちの熱い想いに、徐々にだが、心を開こうとする兆しがみえるしゅろ・・・いや、偽くれないである。
小紅 「・・・もう、自分を偽らないで生きていいのよ、あなたの人生はあなたが決めるの!」
しゅろ 「ボクの人生は、・・・ボクが決めてもいいのか、でも、無理だ・・・マスターには逆らえない。」
デューク 「えぇい!・・・じれったい野郎だな~、好きな女くらい自分で守ってみせろ!! ってもんだぜぃ。」
小紅 「・・・そうよ、あなた自身の気持ちで、ちょびさんを助け出してあげるのよ。」
ふたりによる言葉の波状攻撃で、頑なであったしゅろの心の氷は、ゆっくりだが溶け始めていた。
それは繊細さ故に、張り巡らせていた見えない心のバリヤーの崩壊でもあったのだ・・・。

※ 自己を開放していくことにより、これまでは持ち得なかった吸血鬼としての能力が目覚めたのである。
しゅろ 「・・・わかった、マスターのところへ案内してあげるよ。。。そして、ボクがちょびママを守る!」
・・・かつてこれまでに、一度も見たことがないほど自信に満ちたしゅろの顔がそこにあった。
それは、あのくれないの如く・・・まったくどこにも根拠は無いが凄まじい自信の笑顔とよく似ていた。
デューク 「そうこなくっちゃなぁ~兄弟・・・よしっ、そうと決まれば時間もない事だし、さっそく向かうか!」
小紅 「・・・そうしたいのは、山々だけど。。。相手はあのマスター・ボルドだわ、少し準備をしないとね。」
どんな時でも、油断などせず、決して慎重さは忘れない封印継承者・・・小紅である。

※ 一先ず、次の段階へ進む道が開けて安堵する小紅であったが、次なる相手はあの・・・ボルドなのだ。
半ば、あまり疑うことを知らぬしゅろを騙したような形の説得となったが、
彼の中にずっと眠ってきた熱き真の心に訴えかけ・・・新しい自分を発見させる手助けとはなっただろう。
しかし、小紅たちはボルドに会い・・・いったい何をするつもりなのであろうか?
・・・つづく。
ナレーション 「・・・くれない復活に向け、極秘に動き出した小紅たちはまず、しゅろと密会しました。
そして、言葉巧みに・・・彼をそそのかし~。。。見事、無事にボルドへの橋渡しを手に入れたのです。
やはり、しゅろとて・・・基はくれないなのであると、はっきり判明した結果となった訳ですね。
・・・ではでは、またここで、この時間に。。。お会いすることにしましょう。」

※ 通常空間に戻った小紅、デューク、しゅろの3人を、暖かく柔らかい日差しが照らしているかのようです。
2009年08月18日
復活への儀式
まだその事を知らないでいたひとりの男が、・・・独断である行動を起こしていたのだ。
その男の名は、むらさき・・・くれないの実兄で “ 闇の貴公子 ” を名乗る、魔王その人であった。

※ その舞は、見ている者の心を揺さぶり、知らず知らずのうちに惹きつけるという不思議な魅力があった。
それは、光の刃を巧みに操り・・・激しく、それでいて華麗な剣の舞だった。
・・・彼女の名前は、 “ ネネ ” といい。。。現在はカフェ “ 彩 -いろどり- ” のオーナーである。
それはもちろん世間を欺くためにある表の顔というもので、彼女にも隠された別の顔が存在する。
そんな彼女が所属する秘密諜報機関・・・仮に “ M ” エージェンシーとしておこう。
そこは、女性ばかりで構成されており、数名のエキスパートたちが日々、暗躍する組織であるが、
普段はみな・・・カフェなどでお客を癒しているという共通の一面を持つ、謎の秘密結社なのである。
※ とある水着コンテストに潜入捜査で参加した際、セクシーな姿で観客を魅了し、会場を賑わせていた。
そんな謎めいた経歴を持つ彼女が経営しているカフェ、彩 -いろどり-に、
いつもよりもずっと険しい表情をしたむらさきが、定休日にもかかわらず突如訪れたのである。
ネネ 「ごめんなさい、せっかく来てくれたのに・・・きょうは定休日なんですよ ^^ 」
むらさき 「突然の訪問、申し訳ない・・・わたしはコーヒーを飲みに来た訳ではないのですよ、ネネさん。」
ネネ 「・・・あら、あなたは確かくれないさんのお兄さんで。。。教授のむらさきさんと言ったかしら。」
むらさき 「実はその・・・くれないの事でお願いがあってやってきました。」

※ 神妙な面持ちで、ある決意を秘めて・・・弟であるくれないのためにカフェに訪れた “ 闇の貴公子 ” 。
ネネ 「・・・くれないさんに何かあったんですか?」
むらさき 「えぇ、・・・ちょっと困ったことになっていまして。。。」
このネネさんも、くれないの “ 闇ガード ” 時代を知る数少ない知人のひとりであるのだ。
当時は彼女もまだ、とある雅なカフェで働いていたスタッフの一員でしかなかったのだが、
努力を重ね独立し、自分のカフェを持つまでになった・・・もちろん、本来の裏の仕事もこなしつつである。
むらさき 「・・・という訳でして、あなたには是非、あの禁断の舞を披露していただきたいのですよ。」

※ 引き続き軽やかなステップで舞い、魂を揺さぶるかの如く踊り続ける様は、見事なまでに美しかった。
ネネ 「わかりました・・・でしたら特別に舞いましょう。。。渾身の “ 反魂の舞 ” を!」
それは彼女だけが舞える反魂の秘術で、条件次第では、死者をも蘇らせることができるという凄技である。
むらさきは、そこに一縷の望みをかけて・・・彼女のもとへとやってきたのだった。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・どこか、むらさきらしからぬ。。。という表現が一番近いのではないでしょうか?
今回の一連の行動をうまく説明ができません・・・やはり、何かしら企んでのことだと思われます (謎)
さてさて、この先どうなっていくのか・・・まったく予断を許さない状況が続いていきます。
ではでは・・・また次回もこの場所で、お会いする事にいたしましょう。」

※ “ 反魂の舞 ” をじっとみつめるむらさき、その心にあるのは、くれないへの思いなのか、それとも・・・?
2009年08月19日
Iris Strikes Back
ゾラのところへ、再びキャンティからの恐るべき秘密通信が入っていた・・・。
その驚愕の内容は、 " 本日正午、アイリス博士の処刑を執行する! " というものであったのだ。

※ ゾラが駆けつけた場所には、巨大な蜘蛛の巣に貼り付けられ・・・もがき苦しむアイリスの姿があった。
このゾラ主任と、天才科学者アイリスは、共に、むらさきの封印研究施設で3年ほど、
互いに協力しながら、時に競いながら " 封印 " の研究を熱心に進めてきたライバル、いや仲間であった。
しかし、サフランとの交換留学によって・・・アイリスは渡仏し、そこで拉致され洗脳を受けたとされている。
のちに、麗華率いるマダム親衛隊の一員として姿を現し、暗躍していたはずなのだが・・・
それが今回突然、マダム四天王筆頭・・・キャンティより、公開処刑を行う旨の連絡があったのだ。

※ アイリスとて、あの大魔王の・・・いや、 " 堕天使 " の封印を持っており、その力は凄まじいと言える。
現場に到着したゾラは、これもキャンティに仕掛けられた罠だとわかってはいたが、
アイリスをこのままにしておく訳にもいかず・・・蜘蛛の巣から救い出し、近くのお堂の中へと運び込んだ。
ゾラ 「・・・アイリス博士、しっかりして。。。大丈夫?」
アイリス 「・・・あぁ、ゾラ主任、助けてくれたのね・・・ありがとう。」
意識が朦朧としていたアイリスであったが、その返事は思ったよりも、むしろしっかりと受け答えできていた。

※ だが、その直後・・・アイリスは突如、ガスマスクを装着して高らかに笑いながらゾラに言い放ったのだ。
アイリス 「・・・では、そのお礼をしなくてはいけないわよねぇ~。。。これでも喰らいやがれ!」
みるみるうちに、親衛隊の証でもあるタトゥーの隈取が顔に浮かび上がってきたアイリス、
その彼女の身に着けた特殊なガスマスクの後部分から、白い霧状のガスが勢いよく噴霧されたのだった。
ゾラ 「・・・くっ、これは・・・猛毒の、・・・D-MAXガス !?」
アイリス 「・・・流石だわゾラ主任~、これはたしか、あなたが開発した化学兵器だったわよねぇ~っ ♪ 」

※ 自分の開発した毒ガスによって、呼吸困難に陥り、薄れゆく意識の中、それでも闘おうと身構えるゾラ。
アイリス 「充分すぎるほどの致死量だというのに、そんなふらふらになりながらもまだ戦おうとするなんて、
やはり、腐っても蛇神一族の末裔といったところかしら・・・猛毒に対する免疫も持ってるなんてねぇ~ w 」
ゾラ 「・・・こ、これはあなたの意思ととって・・・いいのかしか?・・・アイリス博士。」
まともに呼吸をすることも不自由になりながら、ゾラは気丈にもアイリスを睨みつけた。
アイリス 「あら、主任がいけないのよ・・・私のむらさきに色目を使うから。。。万死に値する愚行だわ!」

※ その時だった、お堂の扉が音もなく開き、そこに現れたのはラフなスタイルに身を包んだ1号であった。
1号 「・・・そこまでよ、アイリス!・・・こっからは、あたしが相手になってあげる!! 」
アイリス 「おまえは、ちょび1号!~何を生意気な、いわば母親同然のあたしに歯向かう気かい !?」
1号 「あたしに母親がいるって言うなら・・・それは、ちょびママだけよ!」
そういうや否や、ちょび1号は毒ガスをもろともせず・・・ゾラを庇うように、アイリスの前に立ちはだかった。
ゾラ 「・・・うううっ、・・・どうして、この場所がわかったの?」

※ それは目にも留まらぬ見事な早業で・・・次々と突きや蹴りをくり出し、アイリスを追い詰めていった。

※ 片や、防戦一方のアイリス・・・所詮、直接の戦闘で1号に勝てるはずもなく撤退を余儀なくされたのだ。
アイリス 「・・・っくぅ、残念だけど、今回は諦めるしかないようだわ、流石は私の造ったモノよねぇ~っ w 」
そう言って、アイリスは毒ガスの充満したお堂をあとにし・・・外へと逃げ出した。
その後を追うようにして・・・、1号に抱えられながらゾラも、なんとか表へ無事脱出することができた。
1号 「・・・あのね、教授が、最近、主任の様子がおかしいから、それとなくガードを・・・って言ったの。」
ゾラ 「・・・そ、そう、あの人が・・・教授がそんなことをあなたに。。。」

※ 1号が見守る中、追い詰められたアイリスは観念したのか・・・立ち止まり、向かってくるゾラと対峙した。
アイリス 「あれだけの毒ガスを吸い込んでもまだ生きてるだなんて・・・それが四天王の底力なのねぇ~。」
ゾラ 「・・・もう一度だけ聞くわ、これはあなたの意思によるものだと思っていいのね?」
再び、同じ内容の質問をするゾラに・・・アイリスは真っ向からこう答えるのだった。
アイリス 「・・・私は、私の道をゆくだけのことよ。。。むらさきは決して誰にも渡さないわ!
その相手がたとえゾラ主任、あなたであろうとも・・・またあの小紅であろうともよ!! ! 」

※ アイリスが少しでも、おかしな行動をすれば~いつでも、やってみせるという意思表示をする1号である。
ゾラ 「あなたがそうだと同じように、あたしもあたしが選んだ道を進むだけのことなのよ・・・アイリス。」
アイリス 「・・・わかったわ、そちらも譲らないという事なのよねぇ~ほんと残念だわ。。。ゾラ主任 w 」
ふたりの女性の熾烈を極める戦いの火蓋が、まさに切って落とされた瞬間であった。
アイリス 「でも今日のところは私の負けって訳よねぇ~あそこで怖いお嬢さんが睨んでることだし、
そうそうに、引き上げるしか方法がないわぁ~っ、・・・またね、主任。。。勝負は次までお預けよ ♪ 」

※ 親衛隊が持つ特殊装備、空間転移リングを使い・・・アイリスは何処ともわからぬ場所へと消え去った。
ゾラが、古(いにしえ)の忌み嫌われた古い家柄・・・蛇神一族の末裔でなければ、
きっと確実にその命を落としていたであろうし、・・・また1号が駆けつけていなければ、あるいは・・・。
ますます激化していく、マダム軍の無差別攻撃に・・・小紅たちはどう対処していけばいいのだろうか。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・やはりというか、当然というか、またもやキャンティの連絡は罠だった訳ですね~っ ^^;
今回のアイリスも、洗脳というよりは・・・ただ己の感情に従い、思うまま行動しているようですし~ (謎)
まぁ・・・これまで、普段無理して抑制してた心が、解放されて出てきただけのこと。。。とも言えますが。
ではでは、次回またここで・・・この時間に、お会いすることに致しましょう。」

※ くれないがいない状態が長く続いているが・・・健気に自分の仕事をこなし、信じて待ち続ける可愛い1号。
2009年08月25日
海の見える丘
渋るローズマリーを説得する為、海が見渡せるとある岬の・・・小高く景色のよい丘の上へと集合していた。
すでに、ボルドとの約束の期日も決まり・・・それが、あと数時間後にまで迫っていた時の話である。

※ ここは、ローズマリーお気に入りのスポットで・・・よく小紅と来る見晴らしのよい絶景の場所なのである。
いつもは、散歩がてら・・・あちこち散策を楽しみながら、てっぺんまで登ってくるのだが、
どうやら今日のローズマリーは、そういう気軽なムードを楽しむ気分ではなかったとみえる。
ローズマリー 「・・・いくらここへ連れて来られても、ローズマリーは許した訳ではないですよ。」
小紅 「うふふ、こんなことくらいで許してもらおうなんて、思ってないわよ・・・ローズマリー姉さま w 」
いつもの手口ではあったが・・・この小紅の笑顔にローズマリーはとても弱かった。

※ 小紅より贈られた、たくさんのバラをあしらったドレス一式を身につけて・・・、実は嬉しいローズマリー。
小紅 「あなたには、あたしがいない間、 " 影武者 " として敵に気付かれないよう振舞っててほしいの。」
ローズマリー 「しかし姫さま、あのボルドのところへ・・・単身ひとりで出向くなんて危険が多すぎます!」
小紅 「大丈夫よ、このデュークさんも異次元からガードしてくれることになってるし。」
ローズマリー 「ふぅ~、やはりもうお決めになられてるという事ですね、・・・よくわかりました。」
小紅 「そう、わかってくれたのね・・・嬉しいわ、ローズマリー。」

※ ようやく話も頃合いかと、木の上からひょうひょうと降りてきた人狼吸血鬼デュークであったが・・・。
ローズマリー 「姫さまの決意はお堅いようですので、ローズマリーも覚悟をしてまいりました。」
デューク 「・・・ほえっ、なんだまだ話ついてなかったのか?」
ローズマリー 「・・・なので、一緒に行ってもらえる頼もしい助っ人をご用意しておくことにしたのです。」
小紅 「うふふ、そういうところ・・・、ローズマリーらしくて、あたし好きよ。」
ふたりは、生まれてきてからずっとの長い付き合いで・・・互いをよく知り尽くしていたと言えるだろう。

※ 己のたったひとりの主として、この命にかえてもと。。。心から小紅を想い、心配しているローズマリー。
ローズマリー 「何度も言いますが、くれぐれもご用心なさってくださいませ・・・小紅さま。」
小紅 「・・・ありがとう、ローズマリーお姉さん。。。あとは頼んだわね。」
ローズマリー 「承知致しました・・・では、任務に戻ります。」
そう返事すると・・・すぐさま、ローズマリーはこの場所をあとにし見えなくなった。
デューク 「そんじゃこっちも、先に待ち合わせ場所に行って・・・下調べしとくよ。。。じゃあとでな w 」
※ ローズマリーもデュークも順番にいなくなり、あとには海の見える丘と・・・ " 疾風 " とだけになった。
小紅 「・・・いまのローズマリーには、まだゼブラのことは言えないわね。」
それは、誰にも聞こえないような声で・・・独り言のように囁かれた台詞だった。。。
少し前、ゼブラの身に起きた悲しい出来事はすでに報告され、小紅の耳にだけは入ってきていたのだ。
小紅 「さて、あたしをサポートしてくれる頼もしい助っ人って、いったい誰なのかしら・・・楽しみだわ。」
そのことを、いまはまだ忘れていようとするかの如く、精一杯明るく見せようとする小紅であった。

※ いつの間にか・・・先ほどデュークがいた同じ枝の上に、1号がハミングしながら座っているではないか。
小紅 「あら、頼もしい助っ人ってあなただったの・・・1号?」
1号 「あい、・・・ローズマリーから小判1枚でこの " 仕置き " 引き受けた w 」
人造人間である1号はいま、・・・とある時代劇の人気シリーズにどっぷりハマってるらしい。
小紅 「・・・それは頼もしいわ、じゃ、 " 仕掛けて仕損じなし! " ってことね。」
1号 「あいあい w 」

※ そしてもうひとり・・・大胆な皮のジャケットに身を包み、そっと近づいてきたのは主任のゾラであった。
ゾラ 「あたしも、及ばずながら、ご一緒させてもらうわ・・・構わないかしら、小紅さん。」
小紅 「命の保障なんて・・・どこにもないですよ、ゾラ主任。」
ゾラ 「・・・えぇ、ご心配なく、その覚悟ならもとより出来ているから。」
新たに加わった助っ人ふたりと共に、丘の上からの素晴らしい景色を望む小紅であった。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・ローズマリーの手配により、新たに1号とゾラが小紅ら一行に加わった。
このあと、いよいよボルトとの直接対面が待っている・・・いったい何が起こるというのだろうか・・・。
ではでは・・・またこの場所で、この時間・・・お会いすることに致しましょう。」

※ 沈みゆく夕陽を眺め、しばしくつろぐ3人・・・しかし、約束の時間はもうすぐそこまでやってきているのだ。
2009年08月26日
記憶の破片・・・。
そのものは、いつも追われていた・・・、そのものは、ただ存在することさえも許されなかったのだ。。。
・・・そのものは、この世界中のどこにも己の翼を休める安住の地はなかったと言えよう。

※ 大きな漆黒の翼をはためかせ、悠々と宙に浮かぶその巨大な生き物を人は " 魔犬 " と呼び恐れた。
その有翼の魔犬は、中世ヨーロッパを中心に数百年に渡り、たびたび姿を現しては、
人々の生活を恐怖のどん底に突き落とした・・・という記録が古い書物にのみ残されているという。
・・・それによると、特に人に危害を加えたとか、村を壊滅させたとかではなかったらしいのだが、
当時の人々は結束し、幾度となく " 魔犬狩り " を行ったが・・・結局、完璧に退治するには至らなかった。
のちに、パタリと姿を現すことがなくなり、 「流石の魔犬も滅びたのだ!」・・・と囁かれるようになっていった。

※ いつしか魔犬の傍らには寄り添う女性の姿をみかけるようになり、その存在は魔犬共々、恐れられた。
彼女は " 魔女 " と呼ばれており、魔犬を操って人々に害をなす邪悪な存在と位置づけられていた。
その彼女も、魔犬と同じで、いつの頃からか姿をみせなくなり、人々の記憶からも消え失せていった・・・。
この頃までは、ヨーロッパに限らず・・・世界中のあちこちでも、怪物などの出没が報告されており、
それは神話・伝承となったり、また歴史の裏側に埋もれていき・・・その実態はわかってないものが多い。
・・・ただ、その姿かたちだけで、忌み嫌われ邪険な扱いを受けたという闇の歴史しか残ってはいないのだ。

※ 異次元空間よりボルドとの待ち合わせ場所に訪れたデュークであったが、そこで思いもよらぬことが !?
海の見える丘で、小紅と別れたデュークは念のため・・・一足先に指定された場所へと向かった。
それは、ボルドらによる何らかの罠が仕掛けられてはいないかと、万が一の用心のためであったのだ。
現場に到着したデュークは念入りに調べてみた結果、たしかに強力な結界は張ってあったが、
それが直接、小紅たちに多大な悪影響をもたらすものではないことがわかったのである。
・・・しかし、その直後、デュークは異なる別の次元へと飛ばされ、不思議な空間へ閉じ込められたのだ。

※ そこでデュークが見たものは、あの魔犬の生い立ちから~人間に追われるまでの映像の破片だった。
デューク 「・・・こ、これは・・・この姿は、・・・ううう、なんだ頭が割れるように痛い!・・・何故だーっ!! ! 」
ボルドが張り巡らせていた結界とリンクする事により、デュークが飛ばされた場所とは・・・、
彼がずっと忘れようと封印していた過去の記憶の断片で、それは己の幼い頃からの生い立ちでもあった。
その凶暴な姿だけで人に追われ、安息することがなかったあの頃、ひとりの心優しき人間の女性と出会い、
ひとときの安らぎを手に入れるものの・・・その彼女はデュークを庇い、目の前で人々に殺されてしまった。

※ これは偶然の結果なのであろうか?~全ての記憶がよみがえり、封印していた力が再び戻ってきた。
・・・その事件で、心身ともにボロボロになったデュークは、あの伯爵を頼って弟子入りし、
己の忌まわしき記憶と共に、自身の変化能力をも一緒に " 封印 " してもらうことにしたのだった。
~あれから既に、また数百年の月日が流れ、いまならやっと受け止めることができるようになったのだ。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・あの有翼の魔犬は、デューク本来の " 狼 " の姿であったという訳なのですね。
人狼であるデュークは、身も心も傷つき疲れ果て・・・伯爵のもとを訪れ、記憶の一部を封印してもらい、
新たに、人狼吸血鬼として人生をリセットし、これまで過ごしてきた・・・ということなのでしょう。
・・・ちなみに、デュークの左肩に乗ってるミニ魔犬が " 封印 " の棺そのものであり、
それを開放することによって、あの巨大な有翼の魔犬の姿へとなれるんだそうです。
ではでは、またこの場所で、この時間・・・お会いすることに致しましょう。」

※ 封印してた忌まわしき記憶を受け入れ、前向きに生きていこうと、そう考えられるようになったデューク。
2009年08月29日
美々 -みみ-
たくさんの木や花といった植物が豊富に茂り、鳥や小動物なども放し飼いにされている・・・
美々がひとりの時でも寂しくないようにと、ボルドが与えた広大なガーデニング・スペースなのである。

※ 気性の激しい一面もあるが、実はこういった気の優しいところこそ、美々本来が持つ性格なのである。
時刻は、ちょうど小紅が " 海の見える丘 " にて、ローズマリーらと話をしていた頃のことであろうか。
普段であれば、我が主・・・ボルド以外のものを招き入れることは決してないのだが、
よほど憤慨していたのか・・・納得していないのだろう、しゅろを直接、自分の庭へと呼びつけたのだ。
美々 「・・・ちょっと、しゅろ!・・・あなたいったいどういうつもりなのよ !?」
しゅろ 「・・・ん?」
・・・すでに、怒り心頭のMAX状態って感じで、やってきたしゅろに食ってかかる美々であった。
※ まだ意識が戻らないちょびママの様子でもずっと見ていたのだろう・・・偽くれないの姿で現れたしゅろ。
しゅろ 「・・・唐突にそういわれても、見当がつかん。。。はて、何のことだ?」
美々 「とぼける気?~あなたが勝手にマスターと小紅を会わせる約束してきたんでしょ、知ってるのよ!」
しゅろ 「あぁ~、・・・そのことか。」
美々 「 " あぁ~ " じゃないわよ!もし万が一、マスターに何かあったら、どうしてくれるつもりなのよ!!
勿論、マスターに限っては、大丈夫だとわかってるけど・・・でも、イヤなの、絶対イヤなのよーっ!! ! 」
マスターの事となると、感情の赴くまま・・・自分を抑えられなくなる美々であった。

※ そこへ、いつからいたのか全く気配を感じさせる事なく、二人の前にボルドが微笑みながら立っていた。
ボルド 「ふふふ、レディの君にしては少し大きな声だね~どうしたんだい?ボクの可愛い子猫ちゃん w 」
美々 「・・・あぁ、マスターすいません。。。はしたないところをお見せしまして。。。」
ボルド 「ちっともかまわないさ・・・そこも美々の素直な一面だし、ボクはとても好きだよ。」
ボルドの態度はいつものように、美々に対して異様なまでにやさしく・・・そして、温かだった。
ボルド 「美々、あまりしゅろを責めないでいておくれ、彼も彼なりに相当悩んだ末のことだろうし、
・・・これもね、ボクはある意味チャンスだと考えているのさ。。。その結果、あの小紅姫と会えるんだしね。」

※ 本当のところ、何を考えているのか、計り知れないのだが・・・このふたりにとっては絶対の存在である。
しゅろ 「・・・マ、マスター。」
ボルド 「何も言わなくていいんだよ、しゅろ・・・あとはボクに任せておけばいいからね。
さぁ、またちょびママのそばについてあげるといい、君といると心なしか彼女の様子がいいようなんだ。」
美々 「・・・ちょびママをどうなさるおつもりなのですか?・・・美々には利用価値があるとも思えません。」
ボルド 「あのね美々、たしかにちょびママも君を見捨てた側のひとりだけど、彼女もまた囚われていたし、
ふつうの人間でしかないただの女性なのだよ、彼女に罪はないんだ・・・もう許してあげるといい。」

※ 気がつけば、しゅろと向かい合うようにし、愛しいマスターの傍らにそっと寄り添っている美々であった。
美々 「・・・はい、マスターがそうおっしゃるなら、美々はそのとおりに。。。」
ボルド 「いいこだね・・・、じゃボクもそろそろ出掛ける準備をする。。。留守番頼んだよ・・・ふたりとも。」
そして、ボルドをひとり残し・・・しゅろはちょびママのところへ、美々は屋敷の方へと戻っていったのである。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・美々はまぁ当たり前ですが、しゅろでさえもマスターに逆らうという事はありえません。
美々やしゅろが持つ記憶は、ボルドが作り上げたものなのですから、それも当然と言えるでしょうね。
自分の意思で決めたはずの " 小紅とボルドの会談 " でさえも、実はしゅろの思惑以前の事かも~ (謎)
ではでは、またこの時間、この場所で・・・お会いすることに致しましょう。」

※ 美々やしゅろを言葉巧みに、己の意のまま操る魔人ボルド、その秘められた真意は誰にもわからない、
はたして彼こそが、あの " 救世主の封印 " の本当の持ち主に相応しい人物と言えるのであろうか・・・。
2009年09月02日
偲ぶ面影
ここでは幼い頃から厳しい修行をしたりと、ローズマリーにとっては思い出深い場所・・・
配下のものには、けっして誰も立ち入らぬようきつく申しつけ・・・ひとりこの屋敷に閉じ篭っていた。

※ 小紅と同じ髪型でかなり伸ばしていたものを、ばっさりと切り・・・ショート・ボブになったローズマリー。
" 海の見える丘 " で、主である小紅に言われ通りに・・・すぐに影武者として振舞うはずであった。
・・・しかし、自分の配下のどこか微妙な不穏の空気に違和感を覚え、
淡々と問い詰めた結果、小紅があえて語ず口止めしていた " ゼブラ " のその後を知ることになる。
そして、ひと時だけでもと・・・ほんのつかの間の時間だけ割いて、この思い出の屋敷にやって来たのだ。
※ ローズマリーにとって、ゼブラは小紅を別にして、一番のライバルであり、また無二の親友でもあった。
もちろん、この屋敷に限ったことではなく・・・ローズマリーらの修行の場所は他にもまだたくさんある。
ただ、この場所は・・・大きくなってからも、ゼブラとの待ち合わせ場所に指定したりと、
特にふたりの思い入れがとても深く、・・・また心癒せる数少ない空間でもあったのだ。
そっと目を閉じれば、いくつもの様々な記憶たちがよみがえってくる特別の場所なのである。
※ 膝を抱え、じっと考え込んだり、寝そべり、当時の書物を紐解いてみたりと~刻々と時間は過ぎていく。
・・・成長してからは、それぞれの任務のこともあり、
定時連絡以外では滅多に会えなかったふたりだったが、
お互いをライバルとして認め合い、ずっと切磋琢磨してきた仲であった。
そんな大きな存在であったゼブラに、もう二度と会う事ができなくなったなんて・・・。

※ この切り株にもたれていると、ふたりでただ黙って・・・寄り添い時間を過ごした記憶がよみがえってくる。
何も言わず、遠くへ旅立ってしまったゼブラ・・・ローズマリーはその理由さえ知らないでいた。
いまはただ、ほんの少しの時間だけ・・・遥かな友へ想いを馳せて、その面影を偲ぶのであった。
・・・これからまた、再び立ち上がって・・・己に課せられた使命を全うするために。。。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・その理由を誰にも知られることなく、ひとり逝ってしまった "はぐれ隠密 " ゼブラ。
このローズマリーにとっては、本当の家族以上の非常に大切な存在であったと思われます。
しばしの間、友であるゼブラを想い・・・偲んでいても、誰も彼女を責めることはできないでしょうね。
ではでは、またこの場所で、この時間・・・お会いすることに致しましょう。」

※ 人前ではけっして弱音を吐かず、いつも平静であったが・・・この時ばかりは、そっと涙したのだった。
2009年09月12日
邪神遊戯
これまでにも特定の人物の前にその姿をみせ、予言などをすることはあったが、
・・・直接、自分から手を下しては、この世界の歴史に携わることはなかったと言えるだろう。

※ 禍々しい光を放ち、妖しく輝くその姿・・・古くから歴史の影で崇められてきた闇世界の神さまである。

※ その邪神に召還されたひとりの女性、その名は " エンマ " 冥府の門番とでも言えばよいだろうか・・・。
エンマ 「お呼びとあり、即参上致しました・・・ご機嫌麗しゅうございます、我が君。」
邪神 「ようきた・・・大儀であったなエンマ、そなたにちと頼みたき事があるのじゃ。」
エンマ 「何なりとお申し付けくださいませ・・・して、如何様な用件でございますか?」
邪神 「うむ、それなのじゃがな・・・。」
・・・冥府の門番とは言うが、その主な役割はかなり重要なものだ。
何人も、許可なく死者を甦らせたりしないようにと・・・常に冥界周辺を見張り続けている。

※ 逆に言えば、この邪神の許可次第では・・・死者を現世に送り還すのも可能だと言うことなのだろうか?
エンマ 「かしこまりました、我が君のご命令とあらば・・・このエンマ喜んで。」
邪神 「たまには顔を見せにくるがよい・・・では、よしなに。」
そのように、短く用件だけを告げると、邪神の姿はもう見えなくなってしまった。
エンマ 「我が君といい、伯爵殿といい・・・まったく、戯れがお好きなようだな。」
・・・つづく。
ナレーション 「・・・性懲りもなく、また新たに登場した新キャラクター、 " 冥府の門番 " こと、エンマ 。
彼女の直属の上司というか、その主に相当するのが・・・あの邪神さまなのである。
さて、邪神直々の申し出とはいったい何なのか・・・それは次回以降きっと明らかになるだろう。
ではでは・・・またここで、この時間にお会いすることに致しましょう。」

※ では、冥界と現世の狭間にあると言われている場所、混沌 -カオス- も・・・このエンマの管轄なのか。
2009年09月17日
死神の鎧
数ある冥界の入り口のひとつ、・・・混沌 -カオス- へ直接出向き、ある人物を保護することにした。
・・・そう、その人物とは復活の時を信じて、ただ気力だけで己を奮い立たせていた彼の事であった。

※ エンマにそっと抱きかかえられるようにして、もう意識すら失くしたくれないがその姿をみせたのである。
" 冥府の門番 " と呼ばれているように、彼女は冥界周辺の監督を一任されてる立場なので、
このくれないが・・・混沌 -カオス- にて、留まっていることはすでに把握していた事象であった。
この件に関しては、古い友人・・・伯爵からも手がまわされていて、じっと見守る意向であったのだ。
・・・しかし、主格にあたる邪神の特命により・・・また新たに違う動きを見せる次第とあいなった。

※ もはや気力も尽き、いまにも混沌 -カオス- に吸収されてしまいそうな非常に危険な状態のくれない。
そのような状態のくれないを早速見つけ出し、自分の執務室のある異空間まで連れてくることは、
・・・このエンマにとっては朝メシ前のなんの造作もないことであった。
そして、いまにも消滅しそうになっていたくれないに仮初めの活力を注入し、手当てを施したのである。
エンマ 「・・・これでよい、あとはこのものが意識を取り戻すのを待つだけじゃ。」

※ まるで眠ったようにぐったりと倒れ、横たわるくれないと・・・涼しい顔で起きるのを待っているエンマ。
・・・程なく、手厚い看護?の甲斐もあってか、くれないはすっと意識を取り戻した。
くれない 「・・・こ、ここは、どこだ?・・・あ、あんたが俺を助けてくれたのか?」
エンマ 「どうやら目が覚めたようじゃな、我が名はエンマ、まだ朦朧としておろうがもう心配は無用じゃ。」
どこかキツネにつままれたように、いぶかしがるくれないをよそに、エンマは淡々としているだけだった。

※ すっと立ち上がり、きびすを返して・・・右手を少し上げ、その掌に光る棒状の物体を出現させるエンマ。

※ やがてそれは、身の丈を越すほどのとても巨大な " 死神のカマ " となり、圧倒的な威圧感をみせた。
そしておもむろに、その巨大なカマを大きく振るって・・・くれないの身体を切り刻んだのである。
くれない 「・・・う、うぎゃーーーーーーっ!! ! ! ! 」
エンマ 「パンパカパーーーーン ♪ あなたは見事、 " 冥府ご愛好感謝キャンペーン " に当選しました。
その栄誉を称えて、ここに " 死神の鎧 " 装備一式を特別に授与致します・・・おめでとうございます。」

※ 切り裂かれたと感じた次の瞬間、くれないの身体には、漆黒の " 死神の鎧 " が装着されていたのだ。
エンマ 「・・・その鎧さえ装着しておれば、混沌 -カオス- において、自由に動くことが可能となる。
だが、そなたの肉体は既に消え失せておるので、現状で現世に還ることはままならん事なのじゃ・・・。
まぁ、まったくもって・・・その方法がひとつもないという訳では、ないのであるがな。。。」
くれない 「・・・ん?・・・ってことは、まだ方法はあるって事なんだな!」
ほんの少し前まで、輝きを失っていたくれないの両の瞳に再び爛々と希望の光がよみがえってきた。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・颯爽と " お姫様抱っこ " をされて~まっぱで登場した、我らが主人公くれない。
邪神さまの戯れの計らいとも露知らず、エンマより " 死神の鎧 " を授けられることとなった。
しかも、それを装着した状態であれば、現世に戻れる可能性も出てきたのだ。
この事は、・・・くれない復活へ向けての、また新たな一歩となるのであろうか・・・?
ではでは、またこの場所で、この時間・・・再びお会いすることに致しましょう。」

※ エンマに与えられた " 死神の鎧 " をまとい・・・なんとか九死に一生を得た形の主人公、くれない。
2009年09月26日
死神の掟
邪神の特命を受けたエンマにより与えられた " 死神の鎧 " のおかげで、何とか免れることができた。
しかも、その " 死神の鎧 " を装備していれば・・・再び現世に行くことも可能であるらしいのだが。。。

※ 特殊な能力が封じ込められてる封印でもあるこの " 死神の鎧 " をまとえば、無限の可能性も・・・?
" 冥府の門番 " ・・・エンマ、彼女は冥界の最高責任者であり、死神たちの管轄もその一環なのだ。
エンマ 「・・・そもそも、正規の死神ではないそなたは、いくらその鎧を身に着けておろうが、
おのずと制限も規制もあり・・・できることにかなりの限りがあるということなのじゃ。」
くれない 「それは理解できる・・・で、それじゃいったい何だったらできるんだ?」
エンマ 「ふっ、そう急くものではないぞ・・・無論、現世に戻ることは可能だが、それにはまぁ条件がある。
・・・けっして、声を立ててはならぬという事と、現世の理(ことわり)には一切かかわらない事じゃ。。。
そのようなことがあれば、強制的に冥界へと送り戻されて・・・二度と現世に行くことは叶わぬ。
ちなみに、その死神の姿は普通のものには見えぬのだが・・・稀には見えてしまうものもおるがなぁ。」
くれない 「・・・み、見られるとなんか不都合でもあるのか?」
エンマ 「いや、特にはないぞ。」
・・・そうきっぱり言い切るエンマに、『な、なんじゃそりゃ~っ!』 と、いささか拍子抜けしたくれないである。

※ どこまでを真剣な内容ととればよいのか、いまいち把握できない " 冥府の門番 " 、エンマの話である。
エンマ 「それにじゃ、もし見えたとしても、その姿をそなたと判別することは誰にもできぬようになっておる。
もしも、・・・まぁ万が一にもだが " 死神の鎧 " をすべて脱ぎ捨てるようなことがあったとしたら、
・・・その時は、その場で一瞬にして、そなたは永遠に消滅してしまうことを固く心に刻んでおくがよいぞ。」
くれない 「・・・承知した、じゃ早速、俺を現世へ行かせてくれ!」
エンマ 「・・・まったく、せっかちというか、忙しないやつじゃのぅ~そなたというものは。」
そう苦笑しながらも、エンマはゆっくりと何かしらの舞を舞い始めるのだった。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・ようやく、あの " 死神の鎧 " が持つ能力の一部が明らかになってきました。
しかし、いくつかの厳しい条件があり、くれないが現世に戻っても何もできないように思うのですが・・・ (謎)
やはり、平行して動いている小紅らによる " くれない復活 " への儀式を待たねばならないのでしょうか。
ではでは、またこの時間・・・この場所で、再びお会いすることに致しましょう。」
※ 軽やかなステップを踏み、優雅に舞を踊るエンマにより・・・現世への扉が、いま開かれようとしていた。
2009年09月30日
死神のライセンス
己の直属の上司にあたる " 冥府の門番 " こと、エンマを出迎えるためにひとりの女性が立っていた。
その彼女の手にある巨大なドクロのカマからも判るとおり、その生業は " 死神 " なのであった。

※ くれないと違い、正式な死神である彼女には " 死神の鎧 " など必要もなく、このカマだけで事足りる。
いまの彼女は死神に登用される際、名前も過去も記憶も・・・全て抹消されており、
ただ " 死神零番 " という名称が与えられているに過ぎないのだが、便宜上 " ゼロ " と呼ばれている。
・・・今回エンマに呼び出されたのは、現世に戻ってくるくれないの保護観察がその目的であろう。
このゼロたちは正規の許可証を持つ " 死神 " であるのだが、くれないは仮免許すら持たない、
半人前以下のド素人・・・いや、ただただ " 死神の鎧 " を装着しているだけの危険な存在なのである。

※ エンマの繋げた閉じた空間を通り、くれないたちはゼロの待つ薄暗い不気味な森へと無事に到着した。
いくつかある出入り口のひとつ、いまだ半獣人たちが住まうという太古の森深くに降り立ったくれないたち。
ゼロ 「・・・お待ちしておりました、エンマさま。。。この者が噂の " 特例 " なのですね。」
エンマ 「出迎えご苦労じゃったな・・・ゼロ、紹介しておこうか~くれない、 そなたの教官となるゼロじゃ。」
くれない 「・・・俺は死神として、この世に戻ってきたというのか?」
ゼロ 「ふっ、戯けたことを言う・・・何の知識も持たぬキミが到底なれるはずもないのよ。」
エンマ 「・・・手続き上のこともあってなぁ、いくら " 特例 " と言えども何でもはまかりならぬのじゃ。」
もちろん、 " 死神 " の資格を手に入れるには相当厳しい難関をクリアしていく必要があるのだが、
そんなことなど、このくれないが知る訳もなく・・・ゼロにとって素っ頓狂な受け答えにとれたのだった。

※ 突然、膨大な量の " 死神 " に関する極秘情報がくれないの頭の中に流れ込み・・・ラーニングされた。
エンマ 「いま得た知識は、その鎧をまとっている間だけ有効なもので・・・脱ぐとデリートされるのじゃ。」
くれない 「・・・何もかもが、仮初めのライセンスってことか~ったく、よくできたシステムなんだな。」
ゼロ 「おい、キミ!・・・誰に対して口を聞いてるんだ !?・・・このエンマさまというお方は、そもそも・・・」
エンマ 「まぁよいゼロ、・・・何しろこの者は、 " 特例 " なのじゃからな、少々のことは気にするでない。」
ゼロ 「・・・はぁ、そう言われるのでしたら、大目に見ることに致しますが。。。」
くれない 「やっぱ大物は話がわかるなぁ~ほんじゃ、教官・・・俺は一足先に行くんで、あとヨロシク!」
ゼロ 「・・・って、こらキミ!。。。あぁ~っ、もうみえなくなってしまった、これじゃ先が思いやられるわ。」
ふたりの心配をよそに、 " 死神の鎧 " をその身にまとったくれないは、一目散に駆け出していった。

※ 残された形のふたりであったが、けっして焦りなどはなく・・・むしろ余裕に満ちた表情そのものだった。
エンマ 「これも全て、我が君の望んだこと・・・我等はただ、流れに身を任し、傍観するだけじゃ。」
ゼロ 「・・・あのお方がお決めになったとあれば、それが摂理となる。。。という事なのですね。」
どこかしら意味深長な台詞を語るふたりを、不気味な森がただやさしく包み込んでいくのであった。
・・・つづく。
ナレーション 「~またもや登場しました新キャラクター、くれないの教官?となる " 死神零番 " ことゼロ。
彼女はくれないと違って・・・正式なライセンスを所持する正規の " 死神 " なのであります。
・・・そもそも、正規の " 死神 " の仕事ってのが、まだよくわかってないのですけどね~っ (謎)
それにしても、小紅たちがボルドのところへ出向いてから、どれくらいの時間が経過しているのでしょうか?
ではでは、またこの時間、この場所で・・・お会いすることに致しましょう。」

※ 勢いよく飛び出したのはいいが、ここがいったいどこなのか・・・わからない事に気づき迷ってしまった。
くれない 「・・・うぉーーーーーっ、方向がさっぱりわからん~俺はどこへ行きたいんじゃーーっ!! ! 」
2009年10月03日
迷いの森にて
その喜びもつかの間・・・勢いよく飛び出したまではよかったが、いきなり迷子になってしまったのだ。
まぁ教官であるゼロのいうことも聞かないで、勝手に飛び出したくれないが全て悪いわけなのだが・・・。

※ ここは昼間でも闇深い森の遥か奥にあたる場所・・・不気味な巨像の前で途方に暮れているくれない。

※ くれないの教官となった死神零番こと・・・ゼロ、正式な " 死神のライセンス " を持つ超エリートである。
すっかり困ってしまったくれないを探しに、ゼロがやって来たのはそれから程なくの事であった。
ゼロ 「・・・ここにいたのね、探したわよ。。。迷子の迷子のくれないクン。」
くれない 「あぁ、なんなんだろうなここって・・・どこへ向かってもまた同じとこにでちまうぜ。」
ゼロ 「ここはね、通称 " 迷いの森 " って呼ばれているところよ、地軸も磁場も特殊なの・・・、
ある決まったルートを正確に通過しないと、一生彷徨って・・・二度と抜け出せないようになってるわ。」

※ 敬愛するエンマに別れを告げて、迷子になったくれないを捜索し、駆けつけてくれた・・・教官のゼロ。
くれない 「なぁ、教官さんよ・・・俺がこの " 死神の鎧 " ってのをもらえた本当の理由って何なんだ?」
ゼロ 「さぁ・・・あたしには解りかねる事だし、興味もないわ・・・ただ与えられた任務を遂行するだけよ。」
くれない 「そっか・・・で、俺があん時消し飛ばされてから、いったいどんくらいの時間が経ってるんだ?」
ゼロ 「ふっ・・・いきなりの教えてクン攻撃は、女子たちに嫌われちゃうぞ w 」
くれない 「・・・あんた、そんなキャラだったのかよ (謎)」

※ まるで生命が宿っている如く、今にも動き出しそうな不気味な巨像・・・ふたりを嘲笑っているかのようだ。
ゼロ 「まぁ、何でもいいけど~それでどこへ行きたかったのかな・・・くれないクン ^^; 」
くれない 「・・・そだな、どうせ何もできないんだったら、いっそマダムんとこへ直接乗り込んでやろうかと。」
ゼロ 「へぇ~、大物狙いなんだね~キミって、・・・いいよ、このゼロ教官が特別に案内してあげるよ。」
案外ノリがよいというか、それでいいのか?というか・・・すんなり安請け合いしてくれたゼロであった。
・・・つづく。
ナレーション 「・・・ " くれない死神編 " に突入して、はや数話も経過してますが、
まったりしてるというか・・・いつもの事なのですが、ちっとも話が進みませんなぁ~ ^^;
・・・で、こっちの本編があたふたとしている間に、な、なんと~作者さま、またまたトチ狂ったみたいでっ w
" kurenai's BLOG(謎) " ・・・という、新しいブログを開設しちゃいました~ www ←お~い!
その内容というのは、こちらの裏話的な・・・舞台裏や裏設定などを披露し、
" より本編がわかりやすく楽しめる! " ・・・という建前のもと、本音はまたうらはらで~っ ♪
・・・大好きな番外編や外伝とか、気軽にできるといいなぁって感じらしいですよ (謎) ←おいおい
ではでは、またこの場所で、この時間に・・・お会いすることに致しましょう。」

※ 頭上に使い魔の " みどり " ちゃんを乗せて、軽く微笑むその姿からは " 死神 " を連想はできない。