HOLD Me TIGHT?

くれない

2009年07月17日 03:15


ここは以前、むらさきが “ 魔王  ” として暗躍していた時にアジトにしていた隠れ家である・・・。
その後も、研究所である鉄 -くろがね- の要塞とは別に・・・むらさき個人の根城として活用してきたのだ。  

そんな寂れた場所に・・・馬に乗ったあるひとりの制服姿の女性がやってきたのだが・・・




 ※ 立派な黒馬にまたがってやってきたのは、FBIの新人封印専任捜査官である・・・ゆかり嬢であった。


彼女は、むらさき教授が率い、・・・その東洋一、いや世界一とも謳われている封印研究の成果を、
わかりやすくリポートをするために、本国アメリカより特別に派遣されていたわけだが・・・、
マダム軍との闘いが激化したことにより、所長であるむらさきの判断によって強制送還されていたのだ。


そんな彼女が何故に、この辺鄙な場所へとやってきたかというと。。。


 ゆかり 「・・・ったくぅ~、このゆかりちゃんをのけものにしてさぁ、きっとすごい事があるに違いないわ。」


・・・やはり何か勘違いというか、きちんと事態を把握していないようである。


 ゆかり 「いっくら新人とはいえ~っ、このゆかりちゃんもFBIの立派な端くれなのよ・・・、

 世界に誇る情報網をなめんじゃないかんね~おっと・・・ここね、ミスタ・むらさきの秘密のアジトって ♪」




 ※ どこから調達してきたか、とても毛並みのよい馬を颯爽と乗りこなす・・・乗馬経験は豊富なようである。


 ゆかり 「ここには、教授のもうひとつの顔である “ 魔王 ” としての秘密が隠されているに違いないわ。


 その特ダネを入手するために、上司に偽りの休暇届まで出して・・・わざわざやってきたんだものね。」


何やらブツブツとつぶやきながらも、目指す旧アジト前の建物まで到着したゆかり嬢であった。

そこには、背筋を正し・・・まっすぐな姿勢で腰掛けている黒髪の女性の先客がいた。


・・・その正体は、マダム親衛隊の隊員である “  Bee” であったのだが、
悲しいかな・・・最前線を離れていたゆかりは、まだその事実を把握できてなかったのである。


 Bee 「・・・こんにちは、素敵な馬ね~それに頭もすごくよさそうだわ。」 


 ゆかり 「あら、わかる?・・・・・・そうなの、とても賢い子なのよねぇ w 」




 ※ ざっくばらんに話しかけてきて、馬をやたら撫で回しながら、不審な行動をとる親衛隊隊員のBee


 Bee 「わたしは、むらさき教授のところで家政婦をしている者なの・・・教授に何かご用かしら?」


 ゆかり 「わぉ~、そうなんだ・・・わたしは雑誌の記者なんだけども~何か面白いネタは持ってない?」


 Bee 「・・・そういえば、あの話は知ってるかしら。。。教授が夜な夜なね・・・。」


ふって沸いたような特ダネのスクープ予感に、専任捜査官ゆかりの胸はときめいた。


 ゆかり 「是非とも、ひとつ聞かせて欲しいわぁ~、ねっ、それって~どんな内容な・・・」


・・・しかし、どさっと馬上より転げ落ちたゆかりの口から、その続きを聞けることは永遠になかった。


背後からBeeの指先より、放たれたレーザービームのようなものが、
このゆかりの心の臓を真っ直ぐに貫き・・・一瞬のうちに絶命させられたからである。


そう、彼女は永遠に何も語ることのない・・・ただの虚ろな骸と化してしまったのだ。




 ※ 親衛隊の制服に身を包み、冷静に、何事もなかったかのように、ゆかりであったものを見下ろすBee


 Bee 「悪く思わないでね、あなたがいけないのよ・・・せっかく助かってた命をわざわざ捨てにくるから。」


任務のためなら、どんな非情にもなれる・・・それが、この “ Bee ” たちの恐ろしいところでもある。


 Beeむらさきを待っていたのだけど、とんだエサが手に入ったわ。。。さぁ、何が釣れるのかしらね。」


そんな惨劇のあと、かれこれ数時間が経過しただろうか・・・。
いつもの定時偵察に来たくれないが、まったく何も知らないで・・・この周辺までやってきたのである。


 ゆかり 「・・・きゃーーーーっ!、助けてーっ!! 」


警戒しながら遠くを偵察していたくれないの耳に、聞き覚えのある悲鳴めいたものが届いた。


 くれない 「ん?・・・あの声はたしか。。。」


背中にある紅の2枚の翼を巧みに操り、くるっと向きを反転させて・・・声のした方へと急いだのである。




 ※ 少し先のホバークラフトの上にいるのは、先ほどBeeにより絶命させられた・・・ゆかりであった。


 くれない 「やっぱりそうか、間違いない・・・あれはFBIから派遣されてた、ゆかりって人だな。

 しかし・・・たしか、もうこっちは危険だからって本国へと送り返されたはずだったけどなぁ~。」


くれないは、低空飛行しながら近づき、目の前を旋回しつつ・・・ゆかりのそばにすっと降り立った。


 くれない 「いま悲鳴が聞こえたみたいけど、大丈夫だったのか?」


 ゆかり 「・・・おぉ、ミスタ・くれない。。。いいところにきてくれたわ。

 さっきまで、そこに黒髪の同じ顔をした女性たちが群れてこっち見てたのよ!・・・怖かったわぁ。」


 くれない 「うげげ!・・・そいつらは、マダムの親衛隊の “ Bee ” って、やっかいなやつらだぞ。

 大丈夫だったか?・・・何もされなかったか?・・・あいつらは女子供だろうが容赦なんてしないからな。」


それを聞いて、ゆかりは顔が青ざめたようになって・・・ちょっとふらついた。




 ※ このくれないが気がつかないのだから・・・ここにいるのは、もしや本物のゆかり嬢なのであろうか?


 くれない 「とにかく、ここにいたら危険だ。。。場所を変えないとな・・・よし、すぐ移動しよう。」


 ゆかり 「我々、FBIで極秘に入手したある情報を持ってきたんだけど、ずっと尾行されてる気がして・・・」


そう言いながら、ゆかりは予告もなしにくれないの大きな胸へと躊躇なく飛び込んだ。


 ゆかり 「・・・やだ、怖いわ。。。ねっ、お願い・・・少しの間でいいの、このままでいさせて。」


 くれない 「えっ・・・いや、その・・・なんて言うか、ま、まぁ・・・少しくらいだったら、あれなんだが。。。」


 ゆかり 「この際だから言っちゃうけど、実はずっと気になっていたのよ・・・貴方のことが。」


そんな腕の中のゆかりの突然の告白に、戸惑うばかりのくれないに、尚も畳み掛ける専任捜査官である。


 ゆかり 「でもね、貴方には・・・1号さんや小紅さんがいるじゃない、ゆかりずっと歯痒かったのよ。」




 ※ もちろん、これまではそういう対象として彼女を意識したことはなかったくれないであったのだが・・・。


ごく一般的な男の立場としていうなら、女性から告白されて・・・そう悪い気はしないものである。


 ゆかり 「貴方が、吸血鬼だってことも承知で言ってるのよ、なんだったら・・・今すぐにでも、

 この首筋に、その牙を立てて血をすすってもかまわないの・・・もし、お望みならば。。。それ以上だって。」


 くれない 「い、いや、その気持ちはうれしいが・・・そ、それはできない。」


若干、しどろもどろになりながらも・・・くれないは精一杯の理性でもって、己が衝動を抑え込んでいた。


 ゆかり 「・・・いいのよ、この身体を思うまま、貴方だけのものにしてほしいの。」


尚も力いっぱい抱きついてくるゆかりの大胆な行動に、翻弄されながらもまだなんとか耐えていた。


 ゆかり 「誰にも何も言わないわ・・・たとえ一度きりの契りでもかまわない、ねぇ、・・・お願いよ!」


そう言って、髪をかるくかきあげて・・・白いうなじを見せながら挑発してくる姿は、
吸血鬼の一員であるくれないの本能を揺さぶるに充分足りている仕草であったのだ・・・。




 ※ くれないの耳元で囁く様に誘惑してくるゆかりの白い顔に、あの “ Bee ” の証でもある隈取が・・・ !?


 ゆかり 「・・・きつく抱きしめていてね。。。そう、永遠に離れないように、ギュ~っと力強くよ。」


耳たぶをなぶる様に、熱い吐息をかけながら・・・ゆかりの姿をしたものは、ぐいぐいと腕で締め付けてくる。 

それは、まるで万力のようなすごいパワーで、くれないをしっかり固定させて身動きできないようにした。


 くれない 「・・・っくぅ、なんて力なんだ。。。ダメだ、動けん!」 


ついに、その正体を現した!・・・やはり、ゆかりではなく “ Bee ” の変身であったのだ。


・・・こともあろうに、ゆかりの生皮を器用に剥ぎ取り、すっぽりとそれを被っていたという、
あまりにも類を見ない非常に悪質な手段でもって、このくれないさえも騙していた訳なのである。


 くれない 「くっ、貴様は・・・やはり、Beeか!・・・て、てめぇ、彼女をいったいどうしたんだ!! 」 


 Bee 「けけけ・・・心配するな、直に会えるさ・・・あの世でだけどな w 」   

 
 

 ※ 両のまなこから、妖しく光を発し・・・その全身を半径2m四方だろうか、透明のバリヤーが包み込んだ。


 くれない 「・・・なんてこった、抵抗などできない弱いものを !?」


 Bee 「くっくっくっ、あたしゃ~慈悲深いって有名なんだよ・・・何の苦痛も感じさせずに、

 楽に逝かせてやったさぁ~、きっと自分が死んだことにも気づいてないくらいにね!・・・あははっ!! 」  


みるみると目に見えないバリヤーみたいなものがくれないたちをすっぽりと包み覆ってしまったのだ。


 Beeむらさき本人がターゲットだったけど、まぁいいさ・・・おまえで我慢してやるよ。。。

 このあたしと一緒に地獄までランデブー♪・・・って洒落込むとするかぃ~、ほら、光栄に思うんだね w 」   


この “ Bee ” は、特殊な任務を自ら名乗りを上げて、ここで待ち構えていた一種の人間爆弾なのである。

まさしく・・・自爆テロをかけることにより、その命と引き換えに絶大な効果を得る特攻部隊なのであった・・・。


 Bee 「・・・すべては、マダムのために!。。。マルゴさま万歳!! 」




 ※ まばゆいまでの閃光の中、Beeの自爆によって・・・くれないの身体は木っ端微塵に消し飛んだのだ。 


 くれない 「う、うぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!! ! 」 


特殊なバリヤーであったのだろう、凄まじい衝撃であったにもかかわらず、
直径4mを越えては・・・なんら影響が出ることもなく、周りの建造物にもまったく被害は及ばなかった。


・・・しかし、そのバリヤーの中に閉じ込められていたくれないは、
文字通り塵ひとつ残ることなく、跡形もなく、この世から姿を消し去ってしまったのである。



                                                           ・・・つづく。



 ナレーション 「・・・ついに、恐れていたように、マダム軍の手段を選ばないやり方に、

 こちら側の被害者が出てしまいました。。。そして、くれないもまた然り・・・。 


 ただ、吸血鬼であるならば・・・一握りの灰でもあれば、そこから復活できる可能性もあります。

 しかしながら・・・その灰さえもなく木っ端微塵となると、その方法さえももはや不可能だと言えるでしょう。


 この先、どんどんと犠牲者がでてしまうのでしょうか・・・ではまた次回、お会いしましょう。」




 ※ こんな風に、七夕飾りの前で佇むくれないの勇姿を、また見れる日がやって来るのでしょうか? (謎)
闇の黙示録編 第三部