混沌 -カオス-

くれない

2009年07月20日 10:14


前回のむらさきの隠れ家周辺における・・・ “ 魔王のアジト前の惨劇  ” は、
実は、監視カメラにもれなく記録されており、その主であるむらさきの知ることとなったのだ・・・。

・・・さらに詳細を調査するべく、他の誰にも教えずにこの場所までやってきた訳である。




 ※ 映像に残されていた通りの場所に立ち、何か情報がないかと仔細に現場を捜査する魔王むらさき


 むらさきゆかり嬢・・・、彼女がこっちへ戻ってくることは充分考えられる範囲内の事象であったが、 

 まさか、監視をつけておいたはずのFBIの目をすり抜けてくるとは・・・、そこは誤算であったと言えるな。」


そう、FBIの知人を通じて派遣されていた新人の封印専任捜査官、ゆかりは “ Bee  ” の一撃により、
あえない最後を遂げ、その生皮を剥がされてしまい・・・それを、くれないの殺害に利用される破目になった。


 むらさきヴァンパイアという、特殊かつ強力なパワーを持つ存在のくれないでさえ、

 その正体がすぐに判断できないほどの完璧な変身術・・・やはり、マダム軍の持つ脅威の科学力、

 ・・・いや、それだけではない恐るべき力は、想像以上のものであると言える結果となったか。」


ひとり現場を物色するかのように徘徊するむらさきは、ここで起きたことを冷静沈着に解析していた。

それは・・・とても被害者の身内のものではないような、ある種とても冷めた分析であったと言えるだろう。




 ※ 魔王と化した時にみせる、この2枚の大きな黒い翼が・・・彼の姿をより一層、孤高なものへと映し出す。


 むらさき 「・・・さて、この事実を隠さず皆に伝えるべきか、否か。。。どうすることにしようか。

 ただ、くれないに関しては・・・まだわからぬ事もある、これらのデータだけでは判断も出来かねないな。」 


どうやら、くれないの件については保留、ゆかり嬢の件は皆に報告するということに決めたらしい。

・・・利用できるものは、たとえそれがどのような内容であっても、うまく活用し役立てるということらしい。


そう、彼がもし判断を誤ることがあれば・・・それはすなわち、くれない軍団壊滅の引き金となってしまうのだ。


しかし、そのようなプレッシャーともいえる重圧を、むらさき自身が感じているのかは不明であるが・・・


 むらさき 「・・・あの映像から判断するしかないが、直径4mほどのドーム型の遮断された空間、 

 すぐにこいつを何とかしないと、これからもまた新たな犠牲者がでてしまうだろうな。」


強大なマダム軍に対し、まだまだ非力であるくれない軍団の参謀としては、
これくらいのことで、悲しんでる時間など持ち合わせていない・・・ということであろうか。。。




 ※ その頃、跡形もなく吹き飛んでしまったくれないは、深い、深い~深遠のの中にただただ漂っていた。


 くれない (・・・ここはいったい~~、どこなんだろう~~、俺はどうしてしまったんだろうか~~。) 


そこには上も下もなく、広いのか狭いのか・・・その境目もわからないめいた暗黒の空間であった。

もしかしたら、・・・時間という概念も存在しないのかもしれない。。。


 くれない (・・・あぁ、なんだか~~、とても気持ちがいいな~~、このまま溶けてしまっても~~、

 かまわんかもしれん~~、もうなんだか疲れてしまった~~、俺はここで休むことにすっかな~~。)


くれないは、どこか耐え難いその誘惑にいつしか抗うことも忘れ、その身をゆだねようとしていた。


 ・・・ 「・・・何を弱音を吐いておるのだ、・・・そこは、“ 無 ” の中なのだぞ、・・・しっかり意識を持たんか、

 ・・・それくらいで根を上げるとは、・・・我れらヴァンパイアの風上にもおけんわ、・・・この痴れ者めが!」


それは、とても聞き覚えのある・・・あの方のどこか暖かい叱責の声であった。

・・・どうやら異空間より心話を飛ばし、直接くれないの心に語りかけてきているらしい。



 
 ※ いまくれないの身体を形成してるのは、生きていた時の記憶に基づいたものであり、実存のではない。


 くれない 「・・・おぉ~~、そのお声は、たしかに我が師匠~~、お懐かしゅうございますぅ~~、

 お元気でおられましたか~~、その節は大変お世話になりました~~、本日もよいお日柄で~~。」


 伯爵 「・・・戯け、・・・何を寝惚けておるのじゃ、・・・我れには、そのようなバカ弟子など、・・・おらぬわ。

 ・・・よいか、・・・そなたは冥府の入り口を彷徨っているのだ、・・・このままの状態では近いうちに、

 ・・・たとえヴァンパイアといえども、・・・混沌と同化すれば、・・・二度とよみがえることが叶わんのだぞ。」


 くれない 「・・・えぇっ !?~~、 それは困ります~~、どうすればいいんですか~~。」


 伯爵 「・・・まったく、・・・そなたには手がかかるな、・・・よいか、・・・しっかり自分を持て、・・・そこは、

 ・・・強い意識を持つものしか、・・・その存在を許されんところなのじゃ、・・・生きる意志を示すのだ。」


半ば呆れたといえる態度ではあったが、やはりどこか暖かな言葉の響きであった。




 ※ 伯爵の言葉が、くれないの中に流れ込むと・・・失われていた力が再びみなぎってくるのがわかった。


 くれない 「俺にはまだ、やらねばならん事がたくさんあるんだ~~!・・・このままではおれん~~!! 」


 伯爵 「・・・そなたの身体は、・・・いまは無いものなのだ、・・・故に、・・・すぐに復活という訳にはいかぬが、

 ・・・まだ打つ手がない訳ではない、・・・そのためにも、・・・ここでカオスと一体化してはならぬのだ。」


この伯爵の言葉を深く噛み締めて、くれないは己を再認識し・・・なんとか留まることが出来た。

だが、完全に復活するには・・・現世に己の肉体を持たなくてはならないようだ。


・・・いったい、その方法とは何なのであろうか?


                                                         ・・・つづく。



 
 ナレーション 「・・・残念ながら、普通の人間でしかなかったゆかり嬢は、現状のままでは、

 もう二度と再び、生きて現世に帰ってくることはできないようである・・・。


 しかし、またもや伯爵の助言などにより、真の意味での消滅を免れたくれないには、

 ・・・まだいくらかの可能性が残されていることが判明した。


 さて、その復活の儀式に必要なものとは何なのであろう・・・それは誰の手によって行われるのだろうか?


 ではでは、また次回・・・ここでお会いしましょう。」     


 

 ※ その復活の時まで、己自身を見失わないようにひとり懸命に奮い立たせているくれないであった。 
闇の黙示録編 第三部