記憶の破片・・・。

くれない

2009年08月26日 05:21


それは凄まじく鋭い爪を持ち、凶暴な牙を剥き出しにし、巨大な翼で羽ばたく黒きケモノの姿であった。

そのものは、いつも追われていた・・・、そのものは、ただ存在することさえも許されなかったのだ。。。
・・・そのものは、この世界中のどこにも己の翼を休める安住の地はなかったと言えよう。




 ※ 大きな漆黒の翼をはためかせ、悠々と宙に浮かぶその巨大な生き物を人は " 魔犬 " と呼び恐れた。


その有翼の魔犬は、中世ヨーロッパを中心に数百年に渡り、たびたび姿を現しては、
人々の生活を恐怖のどん底に突き落とした・・・という記録が古い書物にのみ残されているという。


・・・それによると、特に人に危害を加えたとか、村を壊滅させたとかではなかったらしいのだが、
当時の人々は結束し、幾度となく " 魔犬狩り " を行ったが・・・結局、完璧に退治するには至らなかった。


のちに、パタリと姿を現すことがなくなり、 「流石の魔犬も滅びたのだ!」・・・と囁かれるようになっていった。


 

 ※ いつしか魔犬の傍らには寄り添う女性の姿をみかけるようになり、その存在は魔犬共々、恐れられた。


彼女は " 魔女 " と呼ばれており、魔犬を操って人々に害をなす邪悪な存在と位置づけられていた。

その彼女も、魔犬と同じで、いつの頃からか姿をみせなくなり、人々の記憶からも消え失せていった・・・。


この頃までは、ヨーロッパに限らず・・・世界中のあちこちでも、怪物などの出没が報告されており、
それは神話・伝承となったり、また歴史の裏側に埋もれていき・・・その実態はわかってないものが多い。


・・・ただ、その姿かたちだけで、忌み嫌われ邪険な扱いを受けたというの歴史しか残ってはいないのだ。


 

 ※ 異次元空間よりボルドとの待ち合わせ場所に訪れたデュークであったが、そこで思いもよらぬことが !?


海の見える丘で、小紅と別れたデュークは念のため・・・一足先に指定された場所へと向かった。

それは、ボルドらによる何らかの罠が仕掛けられてはいないかと、万が一の用心のためであったのだ。


現場に到着したデュークは念入りに調べてみた結果、たしかに強力な結界は張ってあったが、
それが直接、小紅たちに多大な悪影響をもたらすものではないことがわかったのである。


・・・しかし、その直後、デュークは異なる別の次元へと飛ばされ、不思議な空間へ閉じ込められたのだ。


 

 ※ そこでデュークが見たものは、あの魔犬の生い立ちから~人間に追われるまでの映像の破片だった。


 デューク 「・・・こ、これは・・・この姿は、・・・ううう、なんだ頭が割れるように痛い!・・・何故だーっ!! ! 」


ボルドが張り巡らせていた結界とリンクする事により、デュークが飛ばされた場所とは・・・、
彼がずっと忘れようと封印していた過去の記憶の断片で、それは己の幼い頃からの生い立ちでもあった。 


その凶暴な姿だけで人に追われ、安息することがなかったあの頃、ひとりの心優しき人間の女性と出会い、
ひとときの安らぎを手に入れるものの・・・その彼女はデュークを庇い、目の前で人々に殺されてしまった。


 

 ※ これは偶然の結果なのであろうか?~全ての記憶がよみがえり、封印していた力が再び戻ってきた。


・・・その事件で、心身ともにボロボロになったデュークは、あの伯爵を頼って弟子入りし、
己の忌まわしき記憶と共に、自身の変化能力をも一緒に " 封印 " してもらうことにしたのだった。


~あれから既に、また数百年の月日が流れ、いまならやっと受け止めることができるようになったのだ。



                                                            ・・・つづく。



 ナレーション 「・・・あの有翼の魔犬は、デューク本来の " " の姿であったという訳なのですね。 


 人狼であるデュークは、身も心も傷つき疲れ果て・・・伯爵のもとを訪れ、記憶の一部を封印してもらい、

 新たに、人狼吸血鬼として人生をリセットし、これまで過ごしてきた・・・ということなのでしょう。


 ・・・ちなみに、デュークの左肩に乗ってるミニ魔犬が " 封印 " の棺そのものであり、

 それを開放することによって、あの巨大な有翼の魔犬の姿へとなれるんだそうです。


 ではでは、またこの場所で、この時間・・・お会いすることに致しましょう。」


 

 ※ 封印してた忌まわしき記憶を受け入れ、前向きに生きていこうと、そう考えられるようになったデューク
闇の黙示録編 第三部