2009年03月27日
マダム・マルゴ
数百年以上という永い年月の間、伯爵とその夫人マルゴはずっと愛を育んできた。
それはそれは、周囲も羨むほどの仲睦まじいふたりであったのだが・・・
いつしか夫である伯爵は、妻マルゴにある疑問を抱くようになっていたのである。
※ 雪深い人里離れた大自然の中においても、このマルゴの魅力は衰える事なく全てを魅了してやまない。
どうしても己の中に存在するその疑問を払拭できない伯爵は、
思い切って妻のマルゴに直接聞いてみることにした・・・
伯爵 「マルゴ、そなた・・・もしや子を宿しているのではないのか?」
マルゴ 「・・・えぇ、その通りですわ・・・あなた。」
伯爵 「やはりそうであったか・・・それはなんとなくわかってはいたのだが・・・で、いつからなのだ。」
マルゴ 「はい、あたくしがあなたのもとへ嫁いでくるその直前からですわ。」
なんという事だろう・・・マルゴはすでに身篭った状態で伯爵のところへやって来たと言うのだ。
伯爵 「しかし、そなたは確かに・・・。」
マルゴ 「えぇ、もちろん・・・あたくし、あのような夫婦の契りは、あなたが初めてですわ。」
伯爵 「うむ、つまりそなたは・・・処女受胎をしていたという訳なのだな。」
※ 衝撃の告白であったのだが愛妻マルゴはあくまでも優しく微笑みいつもと変わらぬ振る舞いであった。
マルゴ 「あたくし、あなたの妻になる決意をしたときに、この子を授かったのです。」
伯爵 「・・・。」
マルゴ 「そして、あなたに嫁ぎ、あなたの愛の庇護のもと・・・この子は順調に育ってきましたの。
そのあなたの絶大なパワーの恩恵を受け、すくすくと大きくなってきてますわ。」
伯爵 「そなたは、我々の知り得る種族とは違う生態系のものだということなのか・・・。」
マルゴ 「あなたのおっしゃるように、あたくしと同一個体の種族といえるのは、
この地球上にはこの子を他に存在していないようですわね。
・・・どこかまったく違う次元から迷い込んできたとでも言えばいいのかしら。」
ということは、この美しい伯爵夫人であるマルゴの正体は、
我々の地球とは違う次元に所属する生命体ということなのであろうか・・・ !?
さすがの闇を統べる帝王、伯爵であっても・・・この驚愕の事実には驚かざるを得なかった。
※ 目の前にいる愛しい妻が、一瞬だが何か得体の知れない謎の不気味な存在に思えた伯爵であった。
マルゴ 「この子は将来きっと、あなたのようにこの地球を全て統治するようになるわ。」
そう言いながら微笑み、大事そうにお腹をさするマルゴであった。
伯爵 「それで、その・・・出産の予定というのはいつ頃になるのだ?」
マルゴ 「そうですわね・・・この調子ですと、たぶんあともう2~3百年ほどですわ。」
伯爵 「そうか、いろいろと正直に話してくれてありがとう・・・マルゴ。」
マルゴ 「うふふっ、はやく生まれておいで・・・あたくしの坊や。」
そのすぐ後、部屋を後にした伯爵は・・・やはりというかショックを隠しきれないでいた。
本来、闇の世界を統治するほどの実力の持ち主である伯爵であるのだが、
我が愛する妻のことになるとどうも勝手が違うというか・・・
冷静ではいられないのか、いろいろと思うこともあるようであった。
伯爵 「・・・しかし、わたしのマルゴに対する想いはなんら変わる事はないのだ。」
・・・と低くつぶやいたのだが、
それは自分自身に強く言い聞かせるように放った独り言であったのかもしれない。
※ それからあっという間に数十年の歳月が過ぎ冒頭にある雪深い北欧の地にふたりはやって来たのだ。
・・・この頃、伯爵は精力的に活動の範囲を広げていた。
闇を統べるものとして、己に従わない幻獣やモンスターを封じる能力は有している。
無論、彼は闇の世界において、
右に出るものがいないほど絶対的な存在であった・・・
だが数千年という単位で稀に、強大な敵が現れたりしていたのだ。
そうそれは、この世界のあちこちに眠っているという、
“ 封印 ” なるものが解かれるなどして、そこからとんでもない力を持った、
(・・・主に邪悪な、)存在が息を吹き返すからである。
ここ何百年という間、特に強大な相手など目覚める事はなかったのであるが、
・・・ここ数年というもの、なにか予兆ともとれる奇妙な出来事が呼応するかの如く頻繁に起こっていた。
伯爵 「・・・これは何かよからぬ事が起こる前兆に違いない。」
実際、この世界には “ 光 ” の側に属するものも、
まぁ伯爵ほど抜きんでた実力者は皆無だったが・・・、
“ 人間 ” という弱くはかない短命な種族に、
・・・その力を引き継がれ細々と存在してはいたのだ。
本来、伯爵は闇サイドを統治する代表であるが、けっして邪悪なものではない事をここに追記しておく。
※ これまで我が物顔で伯爵の領地内で勝手していた雪ユニコーンであるが、当然ながら服従させた。
それから間もなくの事である・・・予感していたとおり、
大いなる “ 大魔王 ” の封印が解かれ、各地で被害が相次いでいた。
( この大魔王とは、いうまでもなく・・・のちにアイリスに憑依するあの大魔王のことである。)
また伯爵も何度か直接、対決を試みたのだが・・・、
その度に力を増して強くなっていく大魔王に苦戦を強いられ決着がつかなかった。
そうして、異例中の異例のことであるが・・・
伯爵たち闇のものと、人間たち光のものの混成でチームをつくり、
邪悪で強大な大魔王と対峙することになったのである。
そのチームに人間側として参加したひとりが、
あの小紅のご先祖さまにあたる当時の封印継承者 “ 小鈴 ” というまだ若い女性であった。
そのような大魔王との熾烈を極めた壮絶な戦いについては、
またいつか詳しく延べる機会もあろうかと思うので、それまでお待ちいただきたい。
※ 愛する妻や雪オオカミたちに見送られ、固い決意を胸に秘め・・・ひとり旅立ち戦いに赴く伯爵である。
伯爵 「マルゴ・・・今回に限っては、もう二度と戻ってこれないかもしれぬ。」
マルゴ 「あたくし、いつまでも・・・ずっとあなたの帰りをお待ちしております。」
そう言って送り出したマルゴであったが、夫である伯爵が戻ってくることはなかった。
そう・・・あの時以来、伯爵は愛するマルゴのところへは帰ってきていない・・・
いや、どちらかと言えば・・・帰れない事情ができたといった方が正しいのかもしれない。
なんとか皆で大魔王をセント・ライラ号に封印した後も、伯爵は帰ってきていないのである。
・・・彼は己自身を要塞教会ごと封印し、とある一族に管理を任せ、永く深い眠りについたのであった。
そして、伯爵がいなくなったことにより、予定よりもまた数百年以上余計に、
実際には・・・あれから1千年ちょっとかかってやっとボルドが誕生することになるのだ・・・。
結果として放置された形のマルゴだが、いまも変わらず伯爵の妻であり、愛する夫の帰りを待つ身である。
それ故に、自らを伯爵の夫人であるという意味合いを込めて、
“ マダム・マルゴ ” と名乗り、それがずっと現在まで至り、そう呼ばれているのであった。
・・・はたして、かって深く愛し合ったこのふたりが再び会いまみえる時がやってくるのだろうか。
マダム過去編 - 完 -

※ 結局、伯爵夫人としてその遺産を全て相続する形になるが、表舞台に出るのはまだずっと先の話だ。
それはそれは、周囲も羨むほどの仲睦まじいふたりであったのだが・・・
いつしか夫である伯爵は、妻マルゴにある疑問を抱くようになっていたのである。

※ 雪深い人里離れた大自然の中においても、このマルゴの魅力は衰える事なく全てを魅了してやまない。
どうしても己の中に存在するその疑問を払拭できない伯爵は、
思い切って妻のマルゴに直接聞いてみることにした・・・
伯爵 「マルゴ、そなた・・・もしや子を宿しているのではないのか?」
マルゴ 「・・・えぇ、その通りですわ・・・あなた。」
伯爵 「やはりそうであったか・・・それはなんとなくわかってはいたのだが・・・で、いつからなのだ。」
マルゴ 「はい、あたくしがあなたのもとへ嫁いでくるその直前からですわ。」
なんという事だろう・・・マルゴはすでに身篭った状態で伯爵のところへやって来たと言うのだ。
伯爵 「しかし、そなたは確かに・・・。」
マルゴ 「えぇ、もちろん・・・あたくし、あのような夫婦の契りは、あなたが初めてですわ。」
伯爵 「うむ、つまりそなたは・・・処女受胎をしていたという訳なのだな。」

※ 衝撃の告白であったのだが愛妻マルゴはあくまでも優しく微笑みいつもと変わらぬ振る舞いであった。
マルゴ 「あたくし、あなたの妻になる決意をしたときに、この子を授かったのです。」
伯爵 「・・・。」
マルゴ 「そして、あなたに嫁ぎ、あなたの愛の庇護のもと・・・この子は順調に育ってきましたの。
そのあなたの絶大なパワーの恩恵を受け、すくすくと大きくなってきてますわ。」
伯爵 「そなたは、我々の知り得る種族とは違う生態系のものだということなのか・・・。」
マルゴ 「あなたのおっしゃるように、あたくしと同一個体の種族といえるのは、
この地球上にはこの子を他に存在していないようですわね。
・・・どこかまったく違う次元から迷い込んできたとでも言えばいいのかしら。」
ということは、この美しい伯爵夫人であるマルゴの正体は、
我々の地球とは違う次元に所属する生命体ということなのであろうか・・・ !?
さすがの闇を統べる帝王、伯爵であっても・・・この驚愕の事実には驚かざるを得なかった。
※ 目の前にいる愛しい妻が、一瞬だが何か得体の知れない謎の不気味な存在に思えた伯爵であった。
マルゴ 「この子は将来きっと、あなたのようにこの地球を全て統治するようになるわ。」
そう言いながら微笑み、大事そうにお腹をさするマルゴであった。
伯爵 「それで、その・・・出産の予定というのはいつ頃になるのだ?」
マルゴ 「そうですわね・・・この調子ですと、たぶんあともう2~3百年ほどですわ。」
伯爵 「そうか、いろいろと正直に話してくれてありがとう・・・マルゴ。」
マルゴ 「うふふっ、はやく生まれておいで・・・あたくしの坊や。」
そのすぐ後、部屋を後にした伯爵は・・・やはりというかショックを隠しきれないでいた。
本来、闇の世界を統治するほどの実力の持ち主である伯爵であるのだが、
我が愛する妻のことになるとどうも勝手が違うというか・・・
冷静ではいられないのか、いろいろと思うこともあるようであった。
伯爵 「・・・しかし、わたしのマルゴに対する想いはなんら変わる事はないのだ。」
・・・と低くつぶやいたのだが、
それは自分自身に強く言い聞かせるように放った独り言であったのかもしれない。

※ それからあっという間に数十年の歳月が過ぎ冒頭にある雪深い北欧の地にふたりはやって来たのだ。
・・・この頃、伯爵は精力的に活動の範囲を広げていた。
闇を統べるものとして、己に従わない幻獣やモンスターを封じる能力は有している。
無論、彼は闇の世界において、
右に出るものがいないほど絶対的な存在であった・・・
だが数千年という単位で稀に、強大な敵が現れたりしていたのだ。
そうそれは、この世界のあちこちに眠っているという、
“ 封印 ” なるものが解かれるなどして、そこからとんでもない力を持った、
(・・・主に邪悪な、)存在が息を吹き返すからである。
ここ何百年という間、特に強大な相手など目覚める事はなかったのであるが、
・・・ここ数年というもの、なにか予兆ともとれる奇妙な出来事が呼応するかの如く頻繁に起こっていた。
伯爵 「・・・これは何かよからぬ事が起こる前兆に違いない。」
実際、この世界には “ 光 ” の側に属するものも、
まぁ伯爵ほど抜きんでた実力者は皆無だったが・・・、
“ 人間 ” という弱くはかない短命な種族に、
・・・その力を引き継がれ細々と存在してはいたのだ。
本来、伯爵は闇サイドを統治する代表であるが、けっして邪悪なものではない事をここに追記しておく。

※ これまで我が物顔で伯爵の領地内で勝手していた雪ユニコーンであるが、当然ながら服従させた。
それから間もなくの事である・・・予感していたとおり、
大いなる “ 大魔王 ” の封印が解かれ、各地で被害が相次いでいた。
( この大魔王とは、いうまでもなく・・・のちにアイリスに憑依するあの大魔王のことである。)
また伯爵も何度か直接、対決を試みたのだが・・・、
その度に力を増して強くなっていく大魔王に苦戦を強いられ決着がつかなかった。
そうして、異例中の異例のことであるが・・・
伯爵たち闇のものと、人間たち光のものの混成でチームをつくり、
邪悪で強大な大魔王と対峙することになったのである。
そのチームに人間側として参加したひとりが、
あの小紅のご先祖さまにあたる当時の封印継承者 “ 小鈴 ” というまだ若い女性であった。
そのような大魔王との熾烈を極めた壮絶な戦いについては、
またいつか詳しく延べる機会もあろうかと思うので、それまでお待ちいただきたい。

※ 愛する妻や雪オオカミたちに見送られ、固い決意を胸に秘め・・・ひとり旅立ち戦いに赴く伯爵である。
伯爵 「マルゴ・・・今回に限っては、もう二度と戻ってこれないかもしれぬ。」
マルゴ 「あたくし、いつまでも・・・ずっとあなたの帰りをお待ちしております。」
そう言って送り出したマルゴであったが、夫である伯爵が戻ってくることはなかった。
そう・・・あの時以来、伯爵は愛するマルゴのところへは帰ってきていない・・・
いや、どちらかと言えば・・・帰れない事情ができたといった方が正しいのかもしれない。
なんとか皆で大魔王をセント・ライラ号に封印した後も、伯爵は帰ってきていないのである。
・・・彼は己自身を要塞教会ごと封印し、とある一族に管理を任せ、永く深い眠りについたのであった。
そして、伯爵がいなくなったことにより、予定よりもまた数百年以上余計に、
実際には・・・あれから1千年ちょっとかかってやっとボルドが誕生することになるのだ・・・。
結果として放置された形のマルゴだが、いまも変わらず伯爵の妻であり、愛する夫の帰りを待つ身である。
それ故に、自らを伯爵の夫人であるという意味合いを込めて、
“ マダム・マルゴ ” と名乗り、それがずっと現在まで至り、そう呼ばれているのであった。
・・・はたして、かって深く愛し合ったこのふたりが再び会いまみえる時がやってくるのだろうか。
マダム過去編 - 完 -

※ 結局、伯爵夫人としてその遺産を全て相続する形になるが、表舞台に出るのはまだずっと先の話だ。
Posted by くれない at 15:24│Comments(0)
│闇の黙示録編 第二部
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