ソラマメブログ
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2009年07月29日

黒&白の旋律(メロディ)

参謀であるむらさきの報告により、ゆかり嬢が凶弾に倒れ・・・犠牲になったこと、
・・・そして、くれないが現在、消息不明になっていることが皆に知らされた。

そのこともあり、ローズマリーは定時連絡も兼ねて・・・急ぎゼブラと落ち合うことにした。




 ※ 自ら進んで “ はぐれ隠密 ” として・・・過酷な任務に身を投じる凄腕のくのいち、・・・その名はゼブラ


今回、待ち合わせ場所として、彼女が指定してきたのは地中海を望むとある別荘地であった。

ますます激化するマダム軍の攻撃・・・それに伴い監視の目も当然激しくなり、
これまでのように、潜入しながらスパイ活動を続けていくのもかなり厳しい状況となってきた。


以前は、世界各国から派遣されている間者も数多くいたのだが、
見つかり次第、闇から闇へと処分されており・・・その数も激減している現状である。


マダム軍による “ スパイ狩り ” は・・・もうすぐそこまで追跡のの手が伸びていると言えるだろう。




 ※ 自称: “ 通りすがりの踊り子 ” として世界中どこへでも単身、諜報活動に出向くゼブラに休息はない。


ゼブラが毎回指定してくる場所は、とても景色がよく・・・ひと気のないリゾート地であることが多い。

これは、ローズマリーにせめてもの気分だけでも味わってもらおうという、
同じく激しい任務についている者同士だからわかる・・・ゼブラからの心遣いと言えた。


本当であれば、お洒落をしたり・・・恋をしたりと、そういうお年頃であるのだが、
彼女たちの背負った哀しい運命は、そんな当たり前のことですら許されるはずもなかった。


・・・けれども、それよりも、もっと熱い想いが彼女たちの中にあることは間違いない事実であったのだが。




 ※ いつものように定刻通り、寸分の狂いもなく待ち合わせ場所に姿をみせた黒いドレスのローズマリー


すぐに、水辺に腰掛けて佇んでいるゼブラの姿をみつけ、同じように横に座った。


 ゼブラ 「・・・うふふ、元気そうでよかったわローズマリー。。。それで、あたしの姫さまのご機嫌はどう?」


 ローズマリー 「えぇ、・・・やっぱり少し落ち込んでおられるみたいだわ。」  


 ゼブラ 「そっかぁ、まぁ知り合いがあんなことになったんだもの・・・しかたないわね。

 それに、あのくれない氏が行方不明って件も・・・実のところは怪しいものだしねぇ。。。」




 ※ 屈託なく微笑む幼馴染のゼブラに対し、その身を案じ・・・とても複雑な心境のローズマリーであった。


彼女たちも、それなりに深い経験を積んできたエキスパートである・・・

入手した乏しい情報だけで判断することはなく、
総合的にあらゆる可能性を考慮し、物事を全体的に考察するクセが身に染みついているのだ。


 ローズマリー 「あれは、明らかに・・・むらさきさまのお考えがあっての発表だと思われるわ。」


 ゼブラ 「・・・うふふ、あのお方も相当に食えない殿方だともっぱらの評判だものねぇ~ ♪

 あっ・・・当然なんだけど、いま言ったことはあたしの姫さまには、絶対内緒にしといてよね w 」   




 ※ 本能的に何者かの気を感じ取り・・・心配な目をするローズマリーをそそくさと送り出そうとするゼブラ


はぐれ隠密 ” という特殊な任務に携わるゼブラは、誰よりも危険に対するアンテナが敏感であった。


 ゼブラ 「あぁ、ごっめ~ん。。。あたしさ、このあと情報提供者と会うことになってるんだよね・・・

 そいでさぁ、悪いんだけど~、今日のところはこのへんで、おいとましちゃうわ ^^; 」


 ローズマリー 「それは、しかたないことね・・・わかってると思うけど、くれぐれも油断はしないで。」


 ゼブラ 「あいあ~い、ほんと心配性なんだから~会えてよかったわ、またね、ローズマリー姉さん w 」  


普段から、少し強引な性格だとわかっていたので、ローズマリーもあまりおかしくは思わなかった。   




 ※ そのふたりのやりとりを気配を殺し、そっと岩陰から様子を伺っていたのは・・・あのスージーであった。


なかば強引に、ローズマリーを追い返した形になったが、なんとか危険区域から離すことには成功した。

それで気が抜けたのか、ぺたんっと、その場にしゃがみこみ・・・力なく座り込むゼブラである。


 ゼブラ 「ふぅ~、そこでコソコソと隠れてる方、もう出てきていいわよ・・・堂々と姿をみせたらどうなの?」 


 スージー 「あらあら、威勢がいいわぁ~・・・たしか、自称:通りすがりの踊り子さんだったわよね w

 仲間をこっそり逃がしてあげるなんて~、浪花節っていうのかしら?・・・泣っかせるわねぇ~っ www 」   


そんな悪意に満ちた毒々しい台詞を吐きながら、スージーはその姿を悠々とみせるのだった。




 ※ まるで見下すように、眼前のゼブラを睨みつけ・・・無言の威圧で相手を圧倒するスーツ姿のスージー


 ゼブラ 「通称、気まぐれスージー・・・しかしてその実態は、マダム四天王筆頭。。。キャンティ女史ね。」


 キャンティ 「ふふふ・・・、なかなかお利口なネズミさんだことねぇ。。。褒めてさしあげてよ!

 でも残念よね~、せっかく苦労して逃がしてあげたみたいだけど、さっさと、あなたを殺したら~っ、

 すぐあとを追って彼女にも死んでもらうことになるんだものね~・・・あははははははっ。w 」


 ゼブラ (・・・ダメだわ、この圧倒的な実力の差を埋めることは不可能ね。。。ふっ、しかたないかな。)  


どう足掻いてみても、その持てる力の差は歴然としており、万に一つも勝ち目などなかった。




 ※ 獲物を見据えた猛獣の如く、スージー・・・いや、キャンティのハンターとしての顔つきが変わっていく。


 キャンティ 「いろいろと嗅ぎまわってくれてたようだけど、ただ泳がしてあげてただけなのよぉ~っ、

 あなたやローズマリーが死ねば・・・あの小紅姫ったら、どんな顔するんでしょうね~楽しみだわ w 」  


 ゼブラマダムの右腕とも言われ、その実力は確かなようだけど・・・あんた、ほんと性格悪いわよね!」


 キャンティ 「・・・あら、褒められちゃったわ。。。お礼に丁重に葬ってあげないとね~っ www 」 


そのキャンティが攻撃態勢に入るまさに直前・・・一瞬先に行動に移ったのはゼブラの方であった。

・・・全神経を集中させ、持てるすべての力を込めて。。。その生涯、最期となる “ 舞 ” を披露したのである。




 ※  “ はっ! ” “ ハーッ!! ” “ 破ーっ!! ! ” ・・・すさまじい気合のもと、渾身の一撃が放たれたのだ!


その舞から繰り出される必殺の一撃は・・・自らの命を力と変えて攻撃する究極の技、最終奥義であった。

一方、キャンティも油断していた訳ではなかったが、
ゼブラの決死の覚悟が強かったこともあり、避ける間もなく、まともに直撃をくらってしまったのである。


 キャンティ 「・・・ぅぅぅううううううおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーっ!! ! 」


しかしながら、やはりというか、・・・その攻撃でさえもキャンティに止めを刺すまでには至らなかった・・・ 


 キャンティ 「。。。うううっ、窮鼠猫を噛むだっけ・・・やるじゃないか、まったく、たいしたもんだよ。。。

 まぁ、こっちがただのネコじゃなかった訳なんだけどさぁ~、それにしても・・・このあたし相手に、

 ・・・くっ、ここまでの深手を負わせるなんてねぇ~っ、これだから面白いねぇ・・・人間ってのはさっ !? 」   




 ※ まるで眠るように静かに横たわるゼブラを、そっと抱き寄せて・・・妖しく満足げに微笑するキャンティ


・・・力尽きて、もう二度と動くこともしなくなってしまったゼブラを傍らに引き寄せ、
自分自身もかなり満身創痍のキャンティは、ベンチに腰掛け・・・その亡骸を愛しげに愛撫した。


 キャンティ 「くっくっく・・・壮絶だったねぇ~、これじゃ流石のあたしも一歩も動けないって訳だわ。

 あんたのその命を懸けて友を救った行為に免じて、今回は諦めるとするよ・・・あっはっはっはっ w 」   


眼鏡の向こうの相貌を、妖しく輝かせて・・・マダム四天王筆頭、キャンティは高らかに笑った。


 キャンティ 「まぁ、敬意を表してさ、あたしの力の源である水のところへ・・・あんたを葬ることにするよ w 」 




 ※ 滝壺へと打ち捨てられたゼブラの骸、・・・やっと彼女にもゆっくりできる時間が訪れたのかもしれない。


こうして、またひとり貴重な命が消え、・・・新たな犠牲者となってしまった。

マダム軍による包囲網は、音もなく忍び寄り・・・もうほんのすぐそばまで迫ってきているのだ。




                                                          ・・・つづく。



 ナレーション 「・・・次から次へと、くれない軍団側の被害は広がっていきます。 

 このまま、巨象に踏み潰される蟻のように・・・抗うことなく消し飛ばされてしまうだけなのでしょうか?


 たとえ、この先・・・くれないが現世によみがえる事があったとしても、

 その時にはもう取り返しのつかない事態に陥ってるかもしれないのです。


 ・・・では、またこの時間に、ここでお会いしましょう。」




 ※ 清らかな水の流れにその身を任せ、ゆるりと受けた傷を癒す四天王筆頭、・・・何思うのかキャンティ




 ※ この時のローズマリーは、ゼブラが命をかけて・・・我が身を守ってくれたことをまだ知る由もなかった。  

Posted by くれない at 11:13Comments(0)闇の黙示録編 第三部

2009年07月20日

混沌 -カオス-

前回のむらさきの隠れ家周辺における・・・ “ 魔王のアジト前の惨劇  ” は、
実は、監視カメラにもれなく記録されており、その主であるむらさきの知ることとなったのだ・・・。

・・・さらに詳細を調査するべく、他の誰にも教えずにこの場所までやってきた訳である。




 ※ 映像に残されていた通りの場所に立ち、何か情報がないかと仔細に現場を捜査する魔王むらさき


 むらさきゆかり嬢・・・、彼女がこっちへ戻ってくることは充分考えられる範囲内の事象であったが、 

 まさか、監視をつけておいたはずのFBIの目をすり抜けてくるとは・・・、そこは誤算であったと言えるな。」


そう、FBIの知人を通じて派遣されていた新人の封印専任捜査官、ゆかりは “ Bee  ” の一撃により、
あえない最後を遂げ、その生皮を剥がされてしまい・・・それを、くれないの殺害に利用される破目になった。


 むらさきヴァンパイアという、特殊かつ強力なパワーを持つ存在のくれないでさえ、

 その正体がすぐに判断できないほどの完璧な変身術・・・やはり、マダム軍の持つ脅威の科学力、

 ・・・いや、それだけではない恐るべき力は、想像以上のものであると言える結果となったか。」


ひとり現場を物色するかのように徘徊するむらさきは、ここで起きたことを冷静沈着に解析していた。

それは・・・とても被害者の身内のものではないような、ある種とても冷めた分析であったと言えるだろう。




 ※ 魔王と化した時にみせる、この2枚の大きな黒い翼が・・・彼の姿をより一層、孤高なものへと映し出す。


 むらさき 「・・・さて、この事実を隠さず皆に伝えるべきか、否か。。。どうすることにしようか。

 ただ、くれないに関しては・・・まだわからぬ事もある、これらのデータだけでは判断も出来かねないな。」 


どうやら、くれないの件については保留、ゆかり嬢の件は皆に報告するということに決めたらしい。

・・・利用できるものは、たとえそれがどのような内容であっても、うまく活用し役立てるということらしい。


そう、彼がもし判断を誤ることがあれば・・・それはすなわち、くれない軍団壊滅の引き金となってしまうのだ。


しかし、そのようなプレッシャーともいえる重圧を、むらさき自身が感じているのかは不明であるが・・・


 むらさき 「・・・あの映像から判断するしかないが、直径4mほどのドーム型の遮断された空間、 

 すぐにこいつを何とかしないと、これからもまた新たな犠牲者がでてしまうだろうな。」


強大なマダム軍に対し、まだまだ非力であるくれない軍団の参謀としては、
これくらいのことで、悲しんでる時間など持ち合わせていない・・・ということであろうか。。。




 ※ その頃、跡形もなく吹き飛んでしまったくれないは、深い、深い~深遠のの中にただただ漂っていた。


 くれない (・・・ここはいったい~~、どこなんだろう~~、俺はどうしてしまったんだろうか~~。) 


そこには上も下もなく、広いのか狭いのか・・・その境目もわからないめいた暗黒の空間であった。

もしかしたら、・・・時間という概念も存在しないのかもしれない。。。


 くれない (・・・あぁ、なんだか~~、とても気持ちがいいな~~、このまま溶けてしまっても~~、

 かまわんかもしれん~~、もうなんだか疲れてしまった~~、俺はここで休むことにすっかな~~。)


くれないは、どこか耐え難いその誘惑にいつしか抗うことも忘れ、その身をゆだねようとしていた。


 ・・・ 「・・・何を弱音を吐いておるのだ、・・・そこは、“ 無 ” の中なのだぞ、・・・しっかり意識を持たんか、

 ・・・それくらいで根を上げるとは、・・・我れらヴァンパイアの風上にもおけんわ、・・・この痴れ者めが!」


それは、とても聞き覚えのある・・・あの方のどこか暖かい叱責の声であった。

・・・どうやら異空間より心話を飛ばし、直接くれないの心に語りかけてきているらしい。



 
 ※ いまくれないの身体を形成してるのは、生きていた時の記憶に基づいたものであり、実存のではない。


 くれない 「・・・おぉ~~、そのお声は、たしかに我が師匠~~、お懐かしゅうございますぅ~~、

 お元気でおられましたか~~、その節は大変お世話になりました~~、本日もよいお日柄で~~。」


 伯爵 「・・・戯け、・・・何を寝惚けておるのじゃ、・・・我れには、そのようなバカ弟子など、・・・おらぬわ。

 ・・・よいか、・・・そなたは冥府の入り口を彷徨っているのだ、・・・このままの状態では近いうちに、

 ・・・たとえヴァンパイアといえども、・・・混沌と同化すれば、・・・二度とよみがえることが叶わんのだぞ。」


 くれない 「・・・えぇっ !?~~、 それは困ります~~、どうすればいいんですか~~。」


 伯爵 「・・・まったく、・・・そなたには手がかかるな、・・・よいか、・・・しっかり自分を持て、・・・そこは、

 ・・・強い意識を持つものしか、・・・その存在を許されんところなのじゃ、・・・生きる意志を示すのだ。」


半ば呆れたといえる態度ではあったが、やはりどこか暖かな言葉の響きであった。




 ※ 伯爵の言葉が、くれないの中に流れ込むと・・・失われていた力が再びみなぎってくるのがわかった。


 くれない 「俺にはまだ、やらねばならん事がたくさんあるんだ~~!・・・このままではおれん~~!! 」


 伯爵 「・・・そなたの身体は、・・・いまは無いものなのだ、・・・故に、・・・すぐに復活という訳にはいかぬが、

 ・・・まだ打つ手がない訳ではない、・・・そのためにも、・・・ここでカオスと一体化してはならぬのだ。」


この伯爵の言葉を深く噛み締めて、くれないは己を再認識し・・・なんとか留まることが出来た。

だが、完全に復活するには・・・現世に己の肉体を持たなくてはならないようだ。


・・・いったい、その方法とは何なのであろうか?


                                                         ・・・つづく。



 
 ナレーション 「・・・残念ながら、普通の人間でしかなかったゆかり嬢は、現状のままでは、

 もう二度と再び、生きて現世に帰ってくることはできないようである・・・。


 しかし、またもや伯爵の助言などにより、真の意味での消滅を免れたくれないには、

 ・・・まだいくらかの可能性が残されていることが判明した。


 さて、その復活の儀式に必要なものとは何なのであろう・・・それは誰の手によって行われるのだろうか?


 ではでは、また次回・・・ここでお会いしましょう。」     


 

 ※ その復活の時まで、己自身を見失わないようにひとり懸命に奮い立たせているくれないであった。   

Posted by くれない at 10:14Comments(4)闇の黙示録編 第三部

2009年07月17日

HOLD Me TIGHT?

ここは以前、むらさきが “ 魔王  ” として暗躍していた時にアジトにしていた隠れ家である・・・。
その後も、研究所である鉄 -くろがね- の要塞とは別に・・・むらさき個人の根城として活用してきたのだ。  

そんな寂れた場所に・・・馬に乗ったあるひとりの制服姿の女性がやってきたのだが・・・




 ※ 立派な黒馬にまたがってやってきたのは、FBIの新人封印専任捜査官である・・・ゆかり嬢であった。


彼女は、むらさき教授が率い、・・・その東洋一、いや世界一とも謳われている封印研究の成果を、
わかりやすくリポートをするために、本国アメリカより特別に派遣されていたわけだが・・・、
マダム軍との闘いが激化したことにより、所長であるむらさきの判断によって強制送還されていたのだ。


そんな彼女が何故に、この辺鄙な場所へとやってきたかというと。。。


 ゆかり 「・・・ったくぅ~、このゆかりちゃんをのけものにしてさぁ、きっとすごい事があるに違いないわ。」


・・・やはり何か勘違いというか、きちんと事態を把握していないようである。


 ゆかり 「いっくら新人とはいえ~っ、このゆかりちゃんもFBIの立派な端くれなのよ・・・、

 世界に誇る情報網をなめんじゃないかんね~おっと・・・ここね、ミスタ・むらさきの秘密のアジトって ♪」




 ※ どこから調達してきたか、とても毛並みのよい馬を颯爽と乗りこなす・・・乗馬経験は豊富なようである。


 ゆかり 「ここには、教授のもうひとつの顔である “ 魔王 ” としての秘密が隠されているに違いないわ。


 その特ダネを入手するために、上司に偽りの休暇届まで出して・・・わざわざやってきたんだものね。」


何やらブツブツとつぶやきながらも、目指す旧アジト前の建物まで到着したゆかり嬢であった。

そこには、背筋を正し・・・まっすぐな姿勢で腰掛けている黒髪の女性の先客がいた。


・・・その正体は、マダム親衛隊の隊員である “  Bee” であったのだが、
悲しいかな・・・最前線を離れていたゆかりは、まだその事実を把握できてなかったのである。


 Bee 「・・・こんにちは、素敵な馬ね~それに頭もすごくよさそうだわ。」 


 ゆかり 「あら、わかる?・・・・・・そうなの、とても賢い子なのよねぇ w 」




 ※ ざっくばらんに話しかけてきて、馬をやたら撫で回しながら、不審な行動をとる親衛隊隊員のBee


 Bee 「わたしは、むらさき教授のところで家政婦をしている者なの・・・教授に何かご用かしら?」


 ゆかり 「わぉ~、そうなんだ・・・わたしは雑誌の記者なんだけども~何か面白いネタは持ってない?」


 Bee 「・・・そういえば、あの話は知ってるかしら。。。教授が夜な夜なね・・・。」


ふって沸いたような特ダネのスクープ予感に、専任捜査官ゆかりの胸はときめいた。


 ゆかり 「是非とも、ひとつ聞かせて欲しいわぁ~、ねっ、それって~どんな内容な・・・」


・・・しかし、どさっと馬上より転げ落ちたゆかりの口から、その続きを聞けることは永遠になかった。


背後からBeeの指先より、放たれたレーザービームのようなものが、
このゆかりの心の臓を真っ直ぐに貫き・・・一瞬のうちに絶命させられたからである。


そう、彼女は永遠に何も語ることのない・・・ただの虚ろな骸と化してしまったのだ。




 ※ 親衛隊の制服に身を包み、冷静に、何事もなかったかのように、ゆかりであったものを見下ろすBee


 Bee 「悪く思わないでね、あなたがいけないのよ・・・せっかく助かってた命をわざわざ捨てにくるから。」


任務のためなら、どんな非情にもなれる・・・それが、この “ Bee ” たちの恐ろしいところでもある。


 Beeむらさきを待っていたのだけど、とんだエサが手に入ったわ。。。さぁ、何が釣れるのかしらね。」


そんな惨劇のあと、かれこれ数時間が経過しただろうか・・・。
いつもの定時偵察に来たくれないが、まったく何も知らないで・・・この周辺までやってきたのである。


 ゆかり 「・・・きゃーーーーっ!、助けてーっ!! 」


警戒しながら遠くを偵察していたくれないの耳に、聞き覚えのある悲鳴めいたものが届いた。


 くれない 「ん?・・・あの声はたしか。。。」


背中にある紅の2枚の翼を巧みに操り、くるっと向きを反転させて・・・声のした方へと急いだのである。




 ※ 少し先のホバークラフトの上にいるのは、先ほどBeeにより絶命させられた・・・ゆかりであった。


 くれない 「やっぱりそうか、間違いない・・・あれはFBIから派遣されてた、ゆかりって人だな。

 しかし・・・たしか、もうこっちは危険だからって本国へと送り返されたはずだったけどなぁ~。」


くれないは、低空飛行しながら近づき、目の前を旋回しつつ・・・ゆかりのそばにすっと降り立った。


 くれない 「いま悲鳴が聞こえたみたいけど、大丈夫だったのか?」


 ゆかり 「・・・おぉ、ミスタ・くれない。。。いいところにきてくれたわ。

 さっきまで、そこに黒髪の同じ顔をした女性たちが群れてこっち見てたのよ!・・・怖かったわぁ。」


 くれない 「うげげ!・・・そいつらは、マダムの親衛隊の “ Bee ” って、やっかいなやつらだぞ。

 大丈夫だったか?・・・何もされなかったか?・・・あいつらは女子供だろうが容赦なんてしないからな。」


それを聞いて、ゆかりは顔が青ざめたようになって・・・ちょっとふらついた。




 ※ このくれないが気がつかないのだから・・・ここにいるのは、もしや本物のゆかり嬢なのであろうか?


 くれない 「とにかく、ここにいたら危険だ。。。場所を変えないとな・・・よし、すぐ移動しよう。」


 ゆかり 「我々、FBIで極秘に入手したある情報を持ってきたんだけど、ずっと尾行されてる気がして・・・」


そう言いながら、ゆかりは予告もなしにくれないの大きな胸へと躊躇なく飛び込んだ。


 ゆかり 「・・・やだ、怖いわ。。。ねっ、お願い・・・少しの間でいいの、このままでいさせて。」


 くれない 「えっ・・・いや、その・・・なんて言うか、ま、まぁ・・・少しくらいだったら、あれなんだが。。。」


 ゆかり 「この際だから言っちゃうけど、実はずっと気になっていたのよ・・・貴方のことが。」


そんな腕の中のゆかりの突然の告白に、戸惑うばかりのくれないに、尚も畳み掛ける専任捜査官である。


 ゆかり 「でもね、貴方には・・・1号さんや小紅さんがいるじゃない、ゆかりずっと歯痒かったのよ。」




 ※ もちろん、これまではそういう対象として彼女を意識したことはなかったくれないであったのだが・・・。


ごく一般的な男の立場としていうなら、女性から告白されて・・・そう悪い気はしないものである。


 ゆかり 「貴方が、吸血鬼だってことも承知で言ってるのよ、なんだったら・・・今すぐにでも、

 この首筋に、その牙を立てて血をすすってもかまわないの・・・もし、お望みならば。。。それ以上だって。」


 くれない 「い、いや、その気持ちはうれしいが・・・そ、それはできない。」


若干、しどろもどろになりながらも・・・くれないは精一杯の理性でもって、己が衝動を抑え込んでいた。


 ゆかり 「・・・いいのよ、この身体を思うまま、貴方だけのものにしてほしいの。」


尚も力いっぱい抱きついてくるゆかりの大胆な行動に、翻弄されながらもまだなんとか耐えていた。


 ゆかり 「誰にも何も言わないわ・・・たとえ一度きりの契りでもかまわない、ねぇ、・・・お願いよ!」


そう言って、髪をかるくかきあげて・・・白いうなじを見せながら挑発してくる姿は、
吸血鬼の一員であるくれないの本能を揺さぶるに充分足りている仕草であったのだ・・・。




 ※ くれないの耳元で囁く様に誘惑してくるゆかりの白い顔に、あの “ Bee ” の証でもある隈取が・・・ !?


 ゆかり 「・・・きつく抱きしめていてね。。。そう、永遠に離れないように、ギュ~っと力強くよ。」


耳たぶをなぶる様に、熱い吐息をかけながら・・・ゆかりの姿をしたものは、ぐいぐいと腕で締め付けてくる。 

それは、まるで万力のようなすごいパワーで、くれないをしっかり固定させて身動きできないようにした。


 くれない 「・・・っくぅ、なんて力なんだ。。。ダメだ、動けん!」 


ついに、その正体を現した!・・・やはり、ゆかりではなく “ Bee ” の変身であったのだ。


・・・こともあろうに、ゆかりの生皮を器用に剥ぎ取り、すっぽりとそれを被っていたという、
あまりにも類を見ない非常に悪質な手段でもって、このくれないさえも騙していた訳なのである。


 くれない 「くっ、貴様は・・・やはり、Beeか!・・・て、てめぇ、彼女をいったいどうしたんだ!! 」 


 Bee 「けけけ・・・心配するな、直に会えるさ・・・あの世でだけどな w 」   

 
 

 ※ 両のまなこから、妖しく光を発し・・・その全身を半径2m四方だろうか、透明のバリヤーが包み込んだ。


 くれない 「・・・なんてこった、抵抗などできない弱いものを !?」


 Bee 「くっくっくっ、あたしゃ~慈悲深いって有名なんだよ・・・何の苦痛も感じさせずに、

 楽に逝かせてやったさぁ~、きっと自分が死んだことにも気づいてないくらいにね!・・・あははっ!! 」  


みるみると目に見えないバリヤーみたいなものがくれないたちをすっぽりと包み覆ってしまったのだ。


 Beeむらさき本人がターゲットだったけど、まぁいいさ・・・おまえで我慢してやるよ。。。

 このあたしと一緒に地獄までランデブー♪・・・って洒落込むとするかぃ~、ほら、光栄に思うんだね w 」   


この “ Bee ” は、特殊な任務を自ら名乗りを上げて、ここで待ち構えていた一種の人間爆弾なのである。

まさしく・・・自爆テロをかけることにより、その命と引き換えに絶大な効果を得る特攻部隊なのであった・・・。


 Bee 「・・・すべては、マダムのために!。。。マルゴさま万歳!! 」




 ※ まばゆいまでの閃光の中、Beeの自爆によって・・・くれないの身体は木っ端微塵に消し飛んだのだ。 


 くれない 「う、うぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!! ! 」 


特殊なバリヤーであったのだろう、凄まじい衝撃であったにもかかわらず、
直径4mを越えては・・・なんら影響が出ることもなく、周りの建造物にもまったく被害は及ばなかった。


・・・しかし、そのバリヤーの中に閉じ込められていたくれないは、
文字通り塵ひとつ残ることなく、跡形もなく、この世から姿を消し去ってしまったのである。



                                                           ・・・つづく。



 ナレーション 「・・・ついに、恐れていたように、マダム軍の手段を選ばないやり方に、

 こちら側の被害者が出てしまいました。。。そして、くれないもまた然り・・・。 


 ただ、吸血鬼であるならば・・・一握りの灰でもあれば、そこから復活できる可能性もあります。

 しかしながら・・・その灰さえもなく木っ端微塵となると、その方法さえももはや不可能だと言えるでしょう。


 この先、どんどんと犠牲者がでてしまうのでしょうか・・・ではまた次回、お会いしましょう。」




 ※ こんな風に、七夕飾りの前で佇むくれないの勇姿を、また見れる日がやって来るのでしょうか? (謎)  

Posted by くれない at 03:15Comments(2)闇の黙示録編 第三部

2009年07月13日

麗華の決意

前回、本意ではないものの・・・可愛い後輩の研究留学生サフランを、
見事・・・・一撃で打ち倒してしまったマダム四天王のひとりゾラは、とても複雑な思いでいっぱいだった。

そこを怒涛の如く登場した、マダム親衛隊隊長である麗華に促されて・・・この場をそっとあとにする。




 ※ ここ壮大なる羊蹄山のふもと・・・ニセコ町において、女たちの攻防が静かに繰り広げられていたのだ。


そして、そのゾラが立ち去ったすぐあとに・・・麗華の前にあの伯爵が姿を現したのだった。


深き闇の帝王でもある “ 吸血鬼  ” の伯爵は、長く留守にしているとはいえ、
麗華にとって主であるマダムマルゴの唯一の夫という特別な立場の存在である。


この麗華の願い・・・それは、“  マダム伯爵が共に仲睦まじく暮らし、
そこに、ご一緒にボルド坊ちゃまもおられる ” ・・・という、実は単純な、しかし、相当に困難な事だったのだ。


現在、伯爵はとある理由により、もう何百年以上という長い年月・・・
かつて深く愛しあった・・・妻であるマルゴのところへは一度も戻っていない。

そんな伯爵がまだマルゴと共に暮らしていた遥か昔に、
麗華マルゴに新たに命を吹き込まれ、この世に再びよみがえったのである。


・・・麗華は、発見された時、完璧な状態で “ 封印  ” を施されていた “ ミイラ ” であったのだ。

実際、発掘し見つけたのは伯爵であったのだが、それを開封し復元したのは妻のマルゴであった。


その時以来、麗華は忠実にマルゴのために、とても献身的に尽くしてきたということになる。


・・・ちなみに、発掘された “ ミイラ ” はもう一体あり、
それが誰なのかはもう言うまでもない事なのだが、あのバレンシュタインその人である。

  (その彼が、麗華にとって夫であったのか、また兄弟であったのか、・・・その関係は不明のままなのだ。)




 ※ そんな麗華の願いも、伯爵に一喝されてしまい、どうもできないと思い知らされてしまったのだが・・・。


あまりにも哀しく、またまっすぐな瞳で立ちすくむ麗華をみて、
不憫にでも思ったのだろうか、少しの沈黙の後、伯爵はこう切り出した。


 伯爵 「・・・とはいえ、・・・そなたのあれに尽くす態度、・・・我れは、・・・感心しておるのだぞ。」


 麗華 「だ、旦那さま・・・もったいないお言葉であります。・・・麗華はただ当たり前のことをしてるだけで。」  


 伯爵 「・・・そうはいうが、・・・なかなかにはできぬ事だ、・・・礼をいおう、・・・麗華。」


この思いがけない伯爵の感謝の言葉が、ちょっと思い込みの激しい麗華の琴線のどこかに火をつけた。


 麗華麗華は、これからもずっと・・・これまで以上に奥さまのために尽くしていくことを誓いますわ!」 


 伯爵 「・・・ふっ、・・・そなたはいつも真っ直ぐなのだな、・・・そういう生き方もまたまことなのかもしれん。」 


眼前の伯爵の微妙な心の揺れは、もう半ば舞い上がっている麗華に気づかれることはなかった。

孤高な “ 闇の支配者  ” 、伯爵もまた素直になれない煩わしい想いを抱えているのであろう。


 伯爵 「・・・我れともあろうものが、・・・戯言であったな、・・・あまり無理をするでないぞ、・・・麗華。」 


この去り際に伯爵が言った台詞などは・・・ほとんど麗華の耳に届いてなかったようである。




 ※ 時空を歪ませ、サイケに景色を染めて、その姿を潜めた伯爵、一瞬、かすかに微笑んだようにみえた。


すぐ目の前から、伯爵が消え去ったあとも・・・麗華はひとり自分の心の中に惑っていた。

おそらく・・・脳内より、大量であろうドーパミンがどくどくと溢れ出ていたのだ。。。


 麗華 (・・・旦那さまが、この麗華に頼まれたのだわ。。。奥さまと、そして、坊ちゃまと共に暮らせるよう、

 これからも尚いっそう励むようにと!・・・そうだわ、その為ならこの麗華・・・命さえも惜しいと思わない!! )


この時の麗華は、明らかに自分の考えに酔いしれていた。


 麗華 「もうしばらくだけ、お待ちくださいませ!・・・奥さま、旦那さま・・・そして、ボルド坊ちゃまーっ!! 」 


静まり返った羊蹄山のふもとには、そんな麗華の魂の叫びだけが・・・いつまでもこだましていたのだ。



                                                            ・・・つづく。



 ナレーション 「・・・麗華さまは、如何な理由か不明だが、封印されていた “ ミイラ ” だったんですね。

 いったい、いつの時代に誰がどんな目的で “ 封印  ” したのか・・・まったくなのですけど。。。 


 しかし、それを復元?してしまうマダムマルゴの能力もまた不可思議なのでありますが、

 それにしても麗華さまって、思い込んだら・・・なんとやら~、ほんと正しい方向に進んでほしいものです。


 ・・・では、また次回、ここにてお会いしましょう。」




 ※ 迎えに来たはずのサフランなど、気にも留めずに・・・ただ妖しい想いに浸っている様の麗華であった。  

Posted by くれない at 02:27Comments(2)闇の黙示録編 第三部

2009年07月05日

パピヨンの舞

ごく短い間ではあったが・・・むらさき封印研究施設、 鉄 -くろがね-の要塞にて、
この主任のゾラと研究留学生サフランは、同じマダムの命により寝所を共に研究に励んだ仲である。 

しかし、運命の女神はこのふたりをここ、・・・雄雄しくそびえ立つ羊蹄山のふもとを戦いの舞台としたのだ。




 ※ サフランの次々と繰り出す攻撃をなんとかかわしていたゾラであったが、ついに捕らえられてしまった。


それはまるで、蝶が舞うかのように大きく優雅な技の連続であった。

サフランとの間合いの限界を見定めて、ずっとかわしてはいたのだが、
どんどん激しくなる一方の攻撃に、もはやなす術もなくなっていたのだ・・・。


 ゾラ (・・・っく、このままでは、いつかやられてしまう!) 


そう考えたのもつかの間、逃げ続けるゾラの背後を、ついにサフランに押さえられてしまったのだ!!


全神経を研ぎ澄まして、サフランの攻撃を察知してきたゾラであったが、
その相手であるサフランが背後において、1人、2人、3人と・・・増えていくではないか !?

さらに、4人、5人、6人・・・10人、11人。。。と、
まるで分身の術かのよう残像を残し、等しく同じ気配のサフランが増殖していく!


 ゾラ 「・・・これは、ガーネットの!! 」


そうゾラが叫ぶのと、いっきに12人にまで増えたサフランが、
・・・またひとつに重なり攻撃を仕掛けてきたのはほぼ同時であった。 




 ※ 辛うじて、直撃だけは避けたが・・・サフランの華麗な分身の舞の一撃をくらってしまったゾラである。


マダム四天王のひとり、ガーネットはあらゆる格闘技、武術の達人で・・・
他の誰よりも、その筋において長けており・・・自らマダムの護衛役をしているほどである。

サフラン本人は、おそらくまだその事実を知らないであろうが、
彼女は、そのガーネットの細胞からマダムが錬金術を駆使して造り上げたクローン人間であった。


・・・まぁ、当然、その素晴らしいまでの武闘家としての素質は備わっていた訳である


 サフラン 「・・・流石です、ゾラ主任。。。あれをかわすとはお見事です。」


 ゾラ 「・・・く、褒めてもらえて、光栄だけど・・・、あなたがまだ完全じゃなくてよかったわ。」


 サフラン 「何を言うですか・・・わたしはもう完璧です!」


 ゾラ 「いいえ、残念ながら、あなたの額の “ パピヨンの紋章 ” はまだ眠ったままだわ。」


そう・・・完璧な状態の “ パピヨンの舞 ” であったならば、ゾラはこうしていま立っていられなかっただろう。

あんなに攻撃をされながらも・・・また痛む左肩を押さえつつも・・・、
このゾラの口調はサフランに対し、どこまでもどこまでも優しかった。    


同じ四天王同士でも、筆頭だが性悪なキャンティとは違い、
とても実直なガーネットとは、共にお互いを尊重し合う間柄であったし・・・交遊もそれなりにはあった。


でも、何よりも・・・サフランはいっときでも一緒に過ごした仲間であり、いまでも可愛い愛弟子なのだ。




 ※ 少し山手側に立つサフランを見上げていたゾラであったが、次の瞬間にはその背後に回っていた!


何の素振りも見せずにゾラは、左手のリングが輝き瞬間移動する直前のサフランのすぐ後ろに立った。


これぞまさしく、目にも留まらぬ早業といえばいいのか・・・テレポーテーションなどではなく、
実際にゾラがこの距離を脅威の瞬発力を持って、瞬時に移動したのであった。


マダム親衛隊が装備している左手のリングには近距離であれば、
ある程度自由に・・・物理的にワープが可能な装置が組み込まれている。

この間の小樽運河で、ちょびさんがやったように、連動する仲間たちを呼ぶことも可能なようであるが・・・


ゾラに背後に回られた刹那、またそのリングの力によって、
山手からふもとへと、すぐさま瞬間移動をしたサフランであったが・・・その動きを見逃すゾラではなかった。


ゾラもまた、獲物を見据えた蛇の如く・・・鋭利な鎌首をもたげて、
移動から着地したサフランの左肩目指して、膝からの一撃をお見舞いしたのである。


 サフラン 「・・・きゃーーーーっ!」


その攻撃力も、その場所さえも・・・サフランが放ち、
ゾラが受けた一撃と合い等しいものであったのだが、受ける側のキャパの差がものをいい、
まだまだ耐久力においても未熟なサフランは絶叫し、その場に倒れ気絶してしまったのだ。




 ※ ゾラの放ったニー・キックは、寸分狂いなく正確に己が受けた力をそのまま相手に返した形となった。


このゾラがちょっと本気を出せば、こうなることはわかっていた。


だが、可愛いサフランをできれば傷つけたくなかったので・・・、
執拗な攻撃をかわしつつ、ずっと逃げ回っていたのだが、
サフランの戦闘能力が予想以上に高かった為、仕方なしに、最後の手段をとったと言う訳だが・・・


そこは、古の忌み嫌われた “ 蛇神 ” の血が流れているという一族の末裔のゾラである。

目には目を、歯に歯を・・・ということだろうが、もう少し手加減してもよかったのかもしれない。


 ゾラ 「・・・ごめんね、サフラン。」 


己の一撃で、ぐったりと倒れてしまったサフランを見下ろしながら、ゾラは寂しくそうつぶやいた。


 ゾラ 「さて、どうしようかしら・・・また、教授のところへ連れて行くのもね。。。」 


またしても、考えあぐねていたゾラであったが、
いざという時の人質になるのは、自分だけでよいのだ、・・・そう己ひとりならどうとでもできるから。

そういう意味もあって、以前、このサフランマダムのところへと送り返したのである。


しかし、次の瞬間・・・時空間を歪ませて、もの凄い波動がこちらへ向って突進してくるのがわかった。




 ※ どのような原理であるか、皆目見当もつかないが・・・空間を突き破り、あの麗華さまが突如目の前に!


 麗華 「・・・そこまでよーーーっ!、ゾラさん!! 」


凄まじい圧倒的な存在感を持って、マダム親衛隊隊長である麗華が、
野獣の如きスピードで、サフランをはさみ対峙するように・・・ゾラの目の前に立ちふさがったのである。


 麗華 「このサフランは、マダムから親衛隊で預かってる大事な娘さんなの・・・

 ここからは、この麗華に任せてもらいますわ。。。ゾラさん」


 ゾラ麗華さま、・・・ですけども。」  


 麗華 「またキャンティさんに、謀られ連れ出されて・・・こういう事になったのは謝るわ。 

 でもね・・・これはマダムのお考えになっていることなのよ。」


 ゾラ 「・・・では、ガーネットは承知してることなのですか?」


 麗華 「・・・これはマダムのご意志によるものなの・・・わかるわよね、ゾラさん。」


大恩あるマダムのご意志・・・そう言われてしまえば、もう何も言えなくなるゾラであった。  

どこかやりきれない虚ろな気持ちで、さっきまで戦場であったこのニセコ町を寂しくひとり後にするゾラ


そして、あとに残されたサフランと、その彼女を迎えにきた麗華の前に・・・、あのお方が姿を見せた。




 ※ まったく気配さえも感じさせずに、いつからそこにいたのか~あの伯爵麗華の前に現れたのである。


 伯爵 「・・・騒々しいと思えば、・・・そなたであったか、・・・久しいな、・・・息災であったか、・・・麗華。」 


 麗華 「・・・はっ、だ、旦那さま!・・・旦那さまにおかれましてはご機嫌麗しゅう。。。」


 伯爵 「・・・ふっ、・・・麗しゅうもないがな、・・・まぁよい。」  


 麗華 「旦那さま・・・奥さまが、マルゴさまがお待ちです!・・・さぁ、麗華と一緒に参りましょう。」


 伯爵 「・・・あれのことは言うな、・・・おまえの顔を見に参っただけだ。」  


 麗華 「しかし、奥さまはいまでもずっと・・・旦那さまがお帰りになるのを待っておられるのです!」


 伯爵 「・・・くどいぞ、・・・麗華、・・・我は、・・・会えぬのだ。」


その伯爵の強い口調には、流石の麗華も二の句を告げなかった。  


・・・辺りには、羊蹄山から吹きおろす静かな風だけがそよそよと流れていたのである。



                                                     ・・・つづく。



 ナレーションサフランゾラ麗華、・・・また、伯爵マルゴの思いを知ってか否か、

 ・・・今日も悠然とそびえ立つ羊蹄山は、ただそこにあり、全てをみているだけである。


 そうそう、何百年も前に、伯爵は出て行っているのだが・・・それを顔見知りの麗華さまって、

 けっこうな長寿さんなのですよね。。。登場人物のみなさん、ご長命で羨ましいです。 


 ではでは、また次回・・・ここで、お会いしましょう。」




 ※ 遥か遠く過ぎ去った日々に想いをよせ、ひとり悠久の時を生きる闇の帝王・・・ヴァンパイア伯爵。  

Posted by くれない at 18:50Comments(2)闇の黙示録編 第三部

2009年07月02日

ゾラとキャンティ -邂逅!羊蹄山-

・・・その頃、マダム四天王筆頭であるキャンティは単身、羊蹄山のふもとはニセコ町にいた。

非常時にのみ使う、緊急連絡の暗号通信を送り、
同じく四天王のゾラを極秘でここへ呼び出したのだ。




 ※ 涼しい顔をして、平気で悪事を企てるキャンティ・・・それすらも四天王筆頭としての条件なのだろうか。


このキャンティの持つ能力は、に包まれており・・・ほとんど知られていない。


マダムの子ら学園  ” においても非常に優秀で、幼い頃からその頭角を現していた・・・
自らもとても有能であるのだが、他人を使うことにも長けていてマダムにその実力を買われている。


・・・実は、四天王制度を確立したのも彼女の案によるものだと言われているのだ。


そんな彼女の有する封印の力は、いまだ明らかになっていないが、
いくつもの顔を併せ持つ彼女に畏敬の念を抱く者も、数多く存在しているのも事実である。


 キャンティ 「ごめんなさいねぇ~、多忙なあなたを急に呼び出したりしちゃって・・・ゾラ。」


 ゾラ 「それは、かまわないけど・・・で、何用なのかしら?」  


同じマダムの信頼厚い四天王同士であるのだが、ゾラキャンティは何かとぶつかることが多かった。




 ※ 四天王は、それぞれ得意分野があり、緊急時以外はあまり接触する機会がないシステムとなってる。


・・・どちらかと言えば研究好きの寡黙で実直なゾラと、
自由きままに暗躍を企てるキャンティは以前からあまり相性がよくなかったのだ。


お互い、どちらも優秀であるが故にそこもまた問題となっていたが・・・
しかし、表面上は大人としての態度を崩すまでの事態には・・・これまで至ってなかった。
 

 キャンティ 「今日、あなたを呼び出したのは他でもなくてねぇ~・・・そろそろ戻ってきてもらえないかと、

 そういう事なのよ、ゾラ・・・無論、手ぶらでは困るのだけど。」


 ゾラ 「・・・それはマダムの意向なのかしら?」


 キャンティ 「いいえ、マダムはあなたが可愛いんだもの・・・何もおっしゃりはしないわ。

 これはねぇ~・・・四天王筆頭としてのあたし個人の意向なのよ。」 


 ゾラ 「・・・それじゃ、聞けないわね。。。と言ったらどうするつもり・・・キャンティ。」 


 キャンティ 「あら、それは困ったわねぇ~、さて、どうしたらいいのかしら・・・悩んじゃうわ、あたし。」 




 ※ もちろん、このふたりがぶつかり合えば・・・どちらも無傷で済まないことは百も承知している間柄だ。


かなり危険で気まずい空気が、こののどかなふもと周辺を包みこんでいたのだが・・・


 キャンティ 「そうねぇ~・・・だったらまた出直してくるわ、それまでに考え直してちょうだいね・・・ゾラ。」  


 ゾラ 「・・・あたしの気持ちは変わらないと思うわ。」


・・・互いに睨み合ったまま一歩も譲る気配もなく、まさしく、一触即発のムードである。 


 キャンティ 「そうそう、忘れるところだったわぁ~・・・あなたにお土産持ってきてるのよ、ゾラ。」


そう言ったキャンティの眼は冷たい輝きをみせ、さしものゾラをもゾクっと緊張させた。


 キャンティ 「・・・どうしても、あなたに会いたいって言うから特別に連れてきてあげたの。

 ちゃんとお相手してあげてねぇ~、可愛がってたあなたの後輩だものねぇ~・・・ゾラ主任。」 


目の前まで押し迫ってくるようなキャンティの眼がさらに異様な輝きを増し、
するどい怪光をはなったかと思うと・・・ゾラの左側に、覚えのある気配が突然現れてきたのだ!




 ※ 眩いピンクの輝きを放ち、突如空間を裂いて姿を見せたのは少し前に送り出したはずの少女であった。


 

 ※ 一瞬、その少女の出現に気をとられた隙に、四天王筆頭・・・キャンティの姿は忽然と消え失せていた!


・・・そうして、入れ替わるように現れたのは、むらさきとふたりで自分の未来は自分で切り開くようにと、
マダムの下へ送り出したはずの見習い研究生、あの可愛いサフランの変わり果てた姿であった。


 ゾラ 「・・・サフラン!」


 サフラン 「・・・会いたかったです、ゾラ主任。」


 ゾラ 「そう、ガーデニアには会えなかったのね。・・・心配してた通りになった訳か。」


こういう形での再会も、・・・多分にあるだろうとある程度の予測はしていたゾラである。


 サフラン 「・・・主任、お願いがあります。」

 
 ゾラ 「・・・何かしら?」


 サフラン 「これを、くらえ!! 」  


 ゾラ 「・・・っくぅ。。。!」


そういうと・・・有無を言わさず、サフランは懇親の力を込めて、ゾラに襲いかかってきた。


 

 ※ マダム親衛隊の制服に身を包み、どこか大人びた面持ちではあるが間違いなくサフランであった !?


その一撃は、とっさに避けたゾラであったが、なおもサフランの攻撃の手は休まることを知らなかった。

全て、寸でのところでなんとか身をかわしつつも・・・ゾラはじっと考えあぐねていたのだ・・・。


ついさっき、再会を果たしたばかりのこの優雅で雄大にそびえ立つ羊蹄山のふもとニセコ町は、
たったいま、・・・このふたりにとっての虚しい戦場と化したのである。



                                                           ・・・つづく。



 ナレーション 「・・・知略家であるキャンティから見て、裏切り者同然のゾラへの置き土産は、

 あの可愛らしい少女であったサフランがすっかり変貌してしまい、刺客となったものであった。


 だが、ゾラとても・・・、みすみす命をとられる訳にもいかない、
 ・・・かといって傀儡状態にあるサフランをどうあしらうか、まだ決めかねているようである。


 はたして・・・このまま、サフラン阿修羅への道を歩むことになるのだろうか・・・?!


 ではではまた次回まで。。。この続きを楽しみにし、・・・お待ちください。」  




 ※  現在、キャンティの手に落ちてるとはいえ、真に“ パピヨンの紋章  ”が目覚めれば・・・あるいは (謎)  

Posted by くれない at 03:13Comments(0)闇の黙示録編 第三部