2008年09月28日
光り輝くもの -闇と光の邂逅-
・・・別次元の異空間に、その強力な結界と共に。。。黒衣の貴婦人、セント・ライラ号は、
凶悪な堕天使を封印する棺として、長き時間に渡り、その役目を担ってきたのだ。
それが、運命の悪戯に翻弄され、自分も知らず知らずのうちに、邪(よこしま)な意志に操られいた、
・・・若き天才科学者アイリスの手により、ついに開封されて蘇る事となってしまった・・・
かつては天使として存在したが、もうひとつの真の顔に目覚め、邪悪な仮面をつけた悪魔でもある堕天使、
そこに秘められたパワーは絶大であり、それはもう、まったく次元の違う強さを持っていたのだ。
そう魔族の王として、いや魔王の中の魔王・・・大魔王として君臨していたのだった。
それほどまでの力を有していながら、何故、封印される羽目になったのか詳細はわからないが、
その封印に際して、あの暗闇の支配者・・・コードネーム:伯爵が深く関わっていることは明白のようである。
ナレーション 「・・・次元を超えて、この異空間を震撼させている謎の存在の正体とはいったい?
・・・実は、それはくれないたちのすぐ傍に潜んでいたのだ。
そう、彼らのすぐ近くに、もうひとつの大いなる封印が眠っていた事を皆さんは覚えているだろうか・・・
それは、堕天使の封印を解除する際に、生贄として捧げられた小紅が代々継承する封印の事である。
― そもそも封印というものは、小さな箱からもっとも多いものが棺で・・・何か物理的な入れ物にその力を、
特別な方法で封じ込められている・・・というのが研究者の間で知られていた。
これまでにも、伯爵の要塞教会を含む城だとか・・・大魔王の異空間に浮かぶ帆船であるとか、
封印されている力によっては、かなり巨大なものもある事が判明している。―
・・・そして、小紅の持つとされている封印・・・それは、これまでのケースにはまだなかったのだが、
何かモノに封じ込まれているのではなく、人間そのものを器に封印されているというものなのであった。
しかも、それが小紅の一族に一子相伝として、極秘裏に受け継がれてきたという・・・
その封印が持つ特別な力は、宿主である小紅の意志に関わらず、自己防衛本能が自動的に作動し、
今回のように小紅を巧妙に仮死状態にみせ、敵の眼を欺くという荒技を平然とやってのけたのである。。。
そう、封印の力により、小紅が生贄にされて、さも命を落としたかのように周りの者たちに見せていたのだ。
つまり、・・・封印自身が仕掛けた、まことに大掛かりなフェイクであったのである !?」
それまで時空間を越えて、共鳴するかの如く震撼していた音が・・・ある気配の訪れと共に、ふいに止んだ。
その方向、黒衣の貴婦人・・・セント・ライラ号の甲板ちょうど中央の辺りであるが、眩く輝く光を放ち、
・・・その身体を純白の衣装に身を包んで、あの小紅が神々しく現れたのだ。。。
くれない 「・・・こ、小紅なのか。。。?」
小紅 「・・・。」
くれない 「・・・違うのか?・・・どうなんだ返事をしてくれ小紅 !?」
そのくれないの熱い呼びかけに、改めて気付いたかのように・・・小紅はようやく口を開いた。
小紅 「・・・ごめんね、くれないくん・・・あたし、ちょびさんを助けてあげられなかった。。。
それから、・・・たぶん薬でだったと思うけど・・・意識を失ってしまったの。。。
・・・あたし深く眠っていたわ、もう時間なんてどれくらい経ったのかなんて、わからないくらい過ぎて、
どこか遠くの方で、むらさきさんの叫び声が聞こえたわ・・・でも、身体を動かすことができなかったの、
・・・何もできなかった・・・むらさきさんの命の灯火が小さくなり、消えていくのをただ感じていただけで。。。
その直後よ、くれないくんの魂をも揺さぶる叫び声、いえ怒号かしら・・・それを感じたのは。。。
・・・そして、それは、あたしが繋がれていたこの重い鎖を断ち切るだけの充分な威力を持っていたわ。
どうやら、あたしの中にある封印は・・・自己防衛能力にとても優れてはいるのだけど、
あたしの大切な人たちまで、護ってくれるような作動はしなかったのね・・・」
くれない 「・・・そうか、そうだったのか、・・・小紅もまた封印に、・・・関係していたんだな。」
ふと垣間見せた、小紅の表情のかすかな変化を、その時のくれないは気がついてやれなかった・・・
なんにせよ、あまり一度にいろんな事が起こりすぎたのだ・・・それは仕方なかったのかもしれない。
アイリス 「・・・この大魔王たる我輩をも、・・・謀るとは、・・・永く眠りについている間に、・・・この世界も、
・・・少しは、・・・楽しめるように、・・・なっておるのだな。。。」
つい先程まで大魔王による超強力な攻撃を一身に受けていたくれないは、けっして無傷であった訳でなく、
身体中のあちこちに数多くの痛手を受け、全身血まみれ状態であり・・・顔面も蒼白であった。
ヴァンパイアにとっては、より特別な意味をもつ血液が、大量に流れ出てしまっていたのだ・・・
いかな不死身の身体を持つヴァンパイアと言えども、その生命の源でもある血液が流れ出てしまっては、
秘められた能力を発揮するどころか、もう活動すらできなくなってしまうだろう。
特にくれないのように、まだその大いなる力を使いこなせない身にとってそれは物理的な死を意味していた。
だが、そんなくれないの言葉など、まるで気にしない素振りで、アイリスの姿をしたもの・・・大魔王は、
・・・ゆっくりと立ち上がり、・・・こちらに向って音もなく忍び寄ってきた。
くれない 「・・・くっ、小紅、おまえはいいから、いますぐこの場を去れ・・・ここは、俺が引き受けたから!
・・・こんなヤツなんて、クシャミひとつで元の壺に返してくれるわ♪」 ←だから、大魔王違いだってば !?
もう既に、その場に立っているだけでも辛そうなのは・・・誰の目に見ても明らかだったのだが、
仲間の手前もあってか、ただ負けず嫌いなだけなのか、くれないは、精一杯強がってみせた・・・
くれない 「・・・こんな相手、俺一人で充分だしな・・・まだおつりがくるってもんだ、・・・さぁ、はやく!
・・・あんまし、男に恥かかせないで・・・さっさと兄貴を連れて、こっから立ち去ってくれ。。。!! 」
アイリス 「・・・このものは、・・・愚かな人類の中においても、・・・特に愚かな部類に入るとみえるな。。。」
その大魔王の言葉を遮るように小紅は・・・対峙するくれないとアイリスの間に滑り込むように割って入った。
小紅 「・・・大丈夫よ、ありがとうくれないくん。。。
あたしには、まだやらなければならない仕事が残ってるから・・・そこにいるアイリスとね。。。
あなたこそ、ここは・・・あたしに任せて、もうゆっくり休んでくれていいわよ。」
くれない 「・・・ふっ、言ってくれるぜ。。。姿かたちはなんだか神々しくて、アレだけど・・・中身は、
その中身は、いつもの強気な小紅ちゃんのままなんだな・・・逆に、安心したぜぇ。」
全身みるからにボロボロで、傷だらけのくれないであったが・・・こうした小紅とのいつものやりとりは、
・・・さっきまでと違って、本当に心が温かくなれた。
一方、小紅も・・・その緊張した表情は変わらないものの、端整な顔に少し笑顔が戻ってきたように見える。
アイリス 「・・・そなたたちの、・・・戯言に、・・・いつまでも、・・・つきあっておられぬは、・・・ふたりして、
・・・仲良く揃って、・・・塵と化すがよい。。。」
くれない 「・・・なんだと!」
次の瞬間、大魔王は大きく口を開けて・・・とてつもない衝撃波をふたりに目掛けてお見舞いしてきた。
それは一瞬の出来事で、もちろん避ける事などできずに・・・手前にいた小紅などはもろに、
その衝撃を受けてしまったのだ・・・!!
くれない 「・・・うぉっ!・・・しまった、・・・小紅が!! ! 」
アイリス 「・・・ふむ、・・・まずは、・・・ひとりか。。。」
あの直撃をまともにくらったのである・・・大魔王がそう確信したのも、なんら不思議ではなかったが・・・
小紅 「・・・平気よ、くれないくん。
言ったでしょ・・・あたしの持つ封印は自己防衛本能があって、とても防御能力に優れているって。。。
・・・急だったんで、少し驚いたけど・・・なんともないわ。」
アイリス 「・・・なんだと !?。。。」
くれない 「・・・おぉっ、・・・無事なのか、・・・ってあんなのくらっても平気って !?」
周囲の驚きをよそに、小紅は何もなかったかのように・・・そこに立っていた。
・・・間髪入れずに、大魔王が次々と繰り出す衝撃波もことごとく、その身で受け止めてしまったのだが、
いくつかの衝撃は、その勢いを若干失いつつも・・・小紅の後方、くれないにまで届いていた・・・
くれないのお気に入りの紅いライダー・ジャケットの上着も木っ端微塵に破れてしまったのだが、
何よりも・・・その衝撃で、もう立っていられなくなったのだろう・・・その場に座り込んでしまった。
くれない 「・・・す、すげぇ、・・・なんか次元が違う強さだ。。。」
腰を抜かしたままで、くれないは小紅のその能力のすごさに・・・感心していた。
アイリス 「・・・おのれ!・・・かくなる上は、・・・まだ覚醒したばかりで、・・・躊躇っておったのだが、
・・・そうも言ってられんわ、・・・我輩の真の力を、・・・貴様ら虫けらどもに、・・・思い知らしてくれる。。。!」
くれない 「・・・なにをーっ !?・・・かまわねぇ、俺が許可する・・・小紅、その力でぶちのめしてやれ!! 」
小紅 「・・・ところが、そうもいかないのよ・・・くれないくん。。。
さっき言ってなかったけど、あたしの中にある封印って実はまだ目覚めてはいないのよ・・・
つまり眠ったままなの・・・どんな攻撃されても、自己防衛能力であたしを護ってくれるけど、
こちらからは、相手に何かができるってことじゃないみたいなの。。。」
くれない 「・・・えぇぇぇぇぇぇぇーーーーっ !?」
輝く純白のドレスを身に纏い、神々しいまでのオーラを発してしながら・・・いまだ小紅の中にある封印は、
目覚めてさえもなく、眠ったままだと言うではないか・・・
これには・・・さすがの小紅も、ちょっと困った顔をしてみせた。。。
だが、そのふたりを他所に・・・アイリスの、いや大魔王の様子が明らかに違ってきているではないか !?
目は真っ赤に血走っており、天使の輪も消え去り、2本の鋭い角を生やし、口元には尖った牙もみえる・・・
闇の伝承の中で語り継がれてきた、悪魔の姿がそこにあったのだ。。。
さき程までのアイリスは、大魔王とはいえ堕天使であり、・・・まだどこか美しいとも言える姿であったが。。。
いまのアイリスと言えば、とても禍々しく妖艶で・・・天使のヴェールなど脱ぎ捨てた大魔王が、
持っているに相応しい凶悪な風貌をしており、そしてこれが・・・本来の姿の映し身なのであろう。
(・・・大魔王自身も、いとも簡単に消し去れるはずのものに・・・これほどまでに苦労させられるとは、
思ってもいなかったし・・・永き眠りから目覚めたばかりで己が力が万全ではなかったのもあっただろう。。。
また、ある程度はわかっていたが・・・むらさき、くれない、そして、小紅にまでこうも強く抵抗されるとは、
大魔王の当初の計画からは、予測することができなかったのかもしれない・・・)
・・・それは、最終形態とも言える姿であり、脅威の変身能力であったが、かなり無理をしているのか、
大魔王はいまの姿を保つのに、とてつもない精神力を必要としているらしく・・・どこか安定していないようだ。
・・・当然ではあるが、アイリスのもつ器では限界があるので、真の意味で大魔王として、
本来の力を発揮することは・・・まだ不可能であったのだと考えられる。
ただ・・・それでいてさえも、いまのアイリスの姿は毒々しい負のオーラで満ち溢れ、それを見るもの全てを、
恐怖のどん底に陥れるに充分な効果があったのだ !?
くれない 「・・・ちっ、・・・これじゃR.P.G.のラスボスじゃねぇか。。。ったく・・・ぐはーーーーーっ!! ! 」
まだくれないが言い終わらないうちに、大魔王が口から放った渾身の衝撃波は・・・目にも留まらぬ速さで、
おおきく小紅を避けるよう垂直に折れ曲がり、そのまま座り込んでいるくれないへと突き刺さったのだ・・・!
もう動く事もできなかったであろうくれないに、それを避けろ・・・と言うのが無理な話なのである。
その衝撃は凄まじく、くれないのいた辺りは空間が歪んでしまったのであろうか・・・そこには、そこにはもう、
なにもなかったのだ・・・文字通り、塵すら存在しない「無」だけが、そこにあったと言えた。
小紅 「・・・く、くれないくん !?」
アイリス 「・・・くかかかっ!・・・他愛もない、・・・これでいいのだ、・・・これでいいのだーっ。。。!!」
・・・つづく。
ナレーション 「・・・底知れぬ強さを秘めてはいるが、まったく未知数の小紅が復活したのもつかの間、
最終形態へと邪悪な進化を遂げたアイリスこと大魔王の手により、とうとう我らが主人公、くれないは、
思ってたほど活躍することもなく (謎)・・・跡形もなく消し飛んでしまったのだった。。。
ついに、闇の黙示録のページがめくられて・・・人類破滅へのカウントダウンが始まった。。。
たったひとり残されたのは、いまだ覚醒する気配すらない小紅だけである・・・!
いま全ての意志を引き継いで・・・小紅はアイリスと人類の存亡をかけた一騎打ちを仕掛ける !?
では、次回・・・魔王編 -最終章- に御期待下さい。」 ←本当に終われるのか? (謎)
凶悪な堕天使を封印する棺として、長き時間に渡り、その役目を担ってきたのだ。
それが、運命の悪戯に翻弄され、自分も知らず知らずのうちに、邪(よこしま)な意志に操られいた、
・・・若き天才科学者アイリスの手により、ついに開封されて蘇る事となってしまった・・・
かつては天使として存在したが、もうひとつの真の顔に目覚め、邪悪な仮面をつけた悪魔でもある堕天使、
そこに秘められたパワーは絶大であり、それはもう、まったく次元の違う強さを持っていたのだ。
そう魔族の王として、いや魔王の中の魔王・・・大魔王として君臨していたのだった。
それほどまでの力を有していながら、何故、封印される羽目になったのか詳細はわからないが、
その封印に際して、あの暗闇の支配者・・・コードネーム:伯爵が深く関わっていることは明白のようである。
ナレーション 「・・・次元を超えて、この異空間を震撼させている謎の存在の正体とはいったい?
・・・実は、それはくれないたちのすぐ傍に潜んでいたのだ。
そう、彼らのすぐ近くに、もうひとつの大いなる封印が眠っていた事を皆さんは覚えているだろうか・・・
それは、堕天使の封印を解除する際に、生贄として捧げられた小紅が代々継承する封印の事である。
― そもそも封印というものは、小さな箱からもっとも多いものが棺で・・・何か物理的な入れ物にその力を、
特別な方法で封じ込められている・・・というのが研究者の間で知られていた。
これまでにも、伯爵の要塞教会を含む城だとか・・・大魔王の異空間に浮かぶ帆船であるとか、
封印されている力によっては、かなり巨大なものもある事が判明している。―
・・・そして、小紅の持つとされている封印・・・それは、これまでのケースにはまだなかったのだが、
何かモノに封じ込まれているのではなく、人間そのものを器に封印されているというものなのであった。
しかも、それが小紅の一族に一子相伝として、極秘裏に受け継がれてきたという・・・
その封印が持つ特別な力は、宿主である小紅の意志に関わらず、自己防衛本能が自動的に作動し、
今回のように小紅を巧妙に仮死状態にみせ、敵の眼を欺くという荒技を平然とやってのけたのである。。。
そう、封印の力により、小紅が生贄にされて、さも命を落としたかのように周りの者たちに見せていたのだ。
つまり、・・・封印自身が仕掛けた、まことに大掛かりなフェイクであったのである !?」

それまで時空間を越えて、共鳴するかの如く震撼していた音が・・・ある気配の訪れと共に、ふいに止んだ。
その方向、黒衣の貴婦人・・・セント・ライラ号の甲板ちょうど中央の辺りであるが、眩く輝く光を放ち、
・・・その身体を純白の衣装に身を包んで、あの小紅が神々しく現れたのだ。。。
くれない 「・・・こ、小紅なのか。。。?」
小紅 「・・・。」
くれない 「・・・違うのか?・・・どうなんだ返事をしてくれ小紅 !?」
そのくれないの熱い呼びかけに、改めて気付いたかのように・・・小紅はようやく口を開いた。
小紅 「・・・ごめんね、くれないくん・・・あたし、ちょびさんを助けてあげられなかった。。。
それから、・・・たぶん薬でだったと思うけど・・・意識を失ってしまったの。。。
・・・あたし深く眠っていたわ、もう時間なんてどれくらい経ったのかなんて、わからないくらい過ぎて、
どこか遠くの方で、むらさきさんの叫び声が聞こえたわ・・・でも、身体を動かすことができなかったの、
・・・何もできなかった・・・むらさきさんの命の灯火が小さくなり、消えていくのをただ感じていただけで。。。
その直後よ、くれないくんの魂をも揺さぶる叫び声、いえ怒号かしら・・・それを感じたのは。。。
・・・そして、それは、あたしが繋がれていたこの重い鎖を断ち切るだけの充分な威力を持っていたわ。
どうやら、あたしの中にある封印は・・・自己防衛能力にとても優れてはいるのだけど、
あたしの大切な人たちまで、護ってくれるような作動はしなかったのね・・・」
くれない 「・・・そうか、そうだったのか、・・・小紅もまた封印に、・・・関係していたんだな。」
ふと垣間見せた、小紅の表情のかすかな変化を、その時のくれないは気がついてやれなかった・・・
なんにせよ、あまり一度にいろんな事が起こりすぎたのだ・・・それは仕方なかったのかもしれない。
アイリス 「・・・この大魔王たる我輩をも、・・・謀るとは、・・・永く眠りについている間に、・・・この世界も、
・・・少しは、・・・楽しめるように、・・・なっておるのだな。。。」

つい先程まで大魔王による超強力な攻撃を一身に受けていたくれないは、けっして無傷であった訳でなく、
身体中のあちこちに数多くの痛手を受け、全身血まみれ状態であり・・・顔面も蒼白であった。
ヴァンパイアにとっては、より特別な意味をもつ血液が、大量に流れ出てしまっていたのだ・・・
いかな不死身の身体を持つヴァンパイアと言えども、その生命の源でもある血液が流れ出てしまっては、
秘められた能力を発揮するどころか、もう活動すらできなくなってしまうだろう。
特にくれないのように、まだその大いなる力を使いこなせない身にとってそれは物理的な死を意味していた。
だが、そんなくれないの言葉など、まるで気にしない素振りで、アイリスの姿をしたもの・・・大魔王は、
・・・ゆっくりと立ち上がり、・・・こちらに向って音もなく忍び寄ってきた。
くれない 「・・・くっ、小紅、おまえはいいから、いますぐこの場を去れ・・・ここは、俺が引き受けたから!
・・・こんなヤツなんて、クシャミひとつで元の壺に返してくれるわ♪」 ←だから、大魔王違いだってば !?
もう既に、その場に立っているだけでも辛そうなのは・・・誰の目に見ても明らかだったのだが、
仲間の手前もあってか、ただ負けず嫌いなだけなのか、くれないは、精一杯強がってみせた・・・
くれない 「・・・こんな相手、俺一人で充分だしな・・・まだおつりがくるってもんだ、・・・さぁ、はやく!
・・・あんまし、男に恥かかせないで・・・さっさと兄貴を連れて、こっから立ち去ってくれ。。。!! 」
アイリス 「・・・このものは、・・・愚かな人類の中においても、・・・特に愚かな部類に入るとみえるな。。。」
その大魔王の言葉を遮るように小紅は・・・対峙するくれないとアイリスの間に滑り込むように割って入った。
小紅 「・・・大丈夫よ、ありがとうくれないくん。。。
あたしには、まだやらなければならない仕事が残ってるから・・・そこにいるアイリスとね。。。
あなたこそ、ここは・・・あたしに任せて、もうゆっくり休んでくれていいわよ。」
くれない 「・・・ふっ、言ってくれるぜ。。。姿かたちはなんだか神々しくて、アレだけど・・・中身は、
その中身は、いつもの強気な小紅ちゃんのままなんだな・・・逆に、安心したぜぇ。」
全身みるからにボロボロで、傷だらけのくれないであったが・・・こうした小紅とのいつものやりとりは、
・・・さっきまでと違って、本当に心が温かくなれた。
一方、小紅も・・・その緊張した表情は変わらないものの、端整な顔に少し笑顔が戻ってきたように見える。

アイリス 「・・・そなたたちの、・・・戯言に、・・・いつまでも、・・・つきあっておられぬは、・・・ふたりして、
・・・仲良く揃って、・・・塵と化すがよい。。。」
くれない 「・・・なんだと!」
次の瞬間、大魔王は大きく口を開けて・・・とてつもない衝撃波をふたりに目掛けてお見舞いしてきた。
それは一瞬の出来事で、もちろん避ける事などできずに・・・手前にいた小紅などはもろに、
その衝撃を受けてしまったのだ・・・!!
くれない 「・・・うぉっ!・・・しまった、・・・小紅が!! ! 」
アイリス 「・・・ふむ、・・・まずは、・・・ひとりか。。。」
あの直撃をまともにくらったのである・・・大魔王がそう確信したのも、なんら不思議ではなかったが・・・
小紅 「・・・平気よ、くれないくん。
言ったでしょ・・・あたしの持つ封印は自己防衛本能があって、とても防御能力に優れているって。。。
・・・急だったんで、少し驚いたけど・・・なんともないわ。」
アイリス 「・・・なんだと !?。。。」
くれない 「・・・おぉっ、・・・無事なのか、・・・ってあんなのくらっても平気って !?」
周囲の驚きをよそに、小紅は何もなかったかのように・・・そこに立っていた。
・・・間髪入れずに、大魔王が次々と繰り出す衝撃波もことごとく、その身で受け止めてしまったのだが、
いくつかの衝撃は、その勢いを若干失いつつも・・・小紅の後方、くれないにまで届いていた・・・
くれないのお気に入りの紅いライダー・ジャケットの上着も木っ端微塵に破れてしまったのだが、
何よりも・・・その衝撃で、もう立っていられなくなったのだろう・・・その場に座り込んでしまった。

くれない 「・・・す、すげぇ、・・・なんか次元が違う強さだ。。。」
腰を抜かしたままで、くれないは小紅のその能力のすごさに・・・感心していた。
アイリス 「・・・おのれ!・・・かくなる上は、・・・まだ覚醒したばかりで、・・・躊躇っておったのだが、
・・・そうも言ってられんわ、・・・我輩の真の力を、・・・貴様ら虫けらどもに、・・・思い知らしてくれる。。。!」
くれない 「・・・なにをーっ !?・・・かまわねぇ、俺が許可する・・・小紅、その力でぶちのめしてやれ!! 」
小紅 「・・・ところが、そうもいかないのよ・・・くれないくん。。。
さっき言ってなかったけど、あたしの中にある封印って実はまだ目覚めてはいないのよ・・・
つまり眠ったままなの・・・どんな攻撃されても、自己防衛能力であたしを護ってくれるけど、
こちらからは、相手に何かができるってことじゃないみたいなの。。。」
くれない 「・・・えぇぇぇぇぇぇぇーーーーっ !?」
輝く純白のドレスを身に纏い、神々しいまでのオーラを発してしながら・・・いまだ小紅の中にある封印は、
目覚めてさえもなく、眠ったままだと言うではないか・・・
これには・・・さすがの小紅も、ちょっと困った顔をしてみせた。。。
だが、そのふたりを他所に・・・アイリスの、いや大魔王の様子が明らかに違ってきているではないか !?
目は真っ赤に血走っており、天使の輪も消え去り、2本の鋭い角を生やし、口元には尖った牙もみえる・・・
闇の伝承の中で語り継がれてきた、悪魔の姿がそこにあったのだ。。。

さき程までのアイリスは、大魔王とはいえ堕天使であり、・・・まだどこか美しいとも言える姿であったが。。。
いまのアイリスと言えば、とても禍々しく妖艶で・・・天使のヴェールなど脱ぎ捨てた大魔王が、
持っているに相応しい凶悪な風貌をしており、そしてこれが・・・本来の姿の映し身なのであろう。
(・・・大魔王自身も、いとも簡単に消し去れるはずのものに・・・これほどまでに苦労させられるとは、
思ってもいなかったし・・・永き眠りから目覚めたばかりで己が力が万全ではなかったのもあっただろう。。。
また、ある程度はわかっていたが・・・むらさき、くれない、そして、小紅にまでこうも強く抵抗されるとは、
大魔王の当初の計画からは、予測することができなかったのかもしれない・・・)
・・・それは、最終形態とも言える姿であり、脅威の変身能力であったが、かなり無理をしているのか、
大魔王はいまの姿を保つのに、とてつもない精神力を必要としているらしく・・・どこか安定していないようだ。
・・・当然ではあるが、アイリスのもつ器では限界があるので、真の意味で大魔王として、
本来の力を発揮することは・・・まだ不可能であったのだと考えられる。
ただ・・・それでいてさえも、いまのアイリスの姿は毒々しい負のオーラで満ち溢れ、それを見るもの全てを、
恐怖のどん底に陥れるに充分な効果があったのだ !?
くれない 「・・・ちっ、・・・これじゃR.P.G.のラスボスじゃねぇか。。。ったく・・・ぐはーーーーーっ!! ! 」

まだくれないが言い終わらないうちに、大魔王が口から放った渾身の衝撃波は・・・目にも留まらぬ速さで、
おおきく小紅を避けるよう垂直に折れ曲がり、そのまま座り込んでいるくれないへと突き刺さったのだ・・・!
もう動く事もできなかったであろうくれないに、それを避けろ・・・と言うのが無理な話なのである。
その衝撃は凄まじく、くれないのいた辺りは空間が歪んでしまったのであろうか・・・そこには、そこにはもう、
なにもなかったのだ・・・文字通り、塵すら存在しない「無」だけが、そこにあったと言えた。
小紅 「・・・く、くれないくん !?」
アイリス 「・・・くかかかっ!・・・他愛もない、・・・これでいいのだ、・・・これでいいのだーっ。。。!!」
・・・つづく。
ナレーション 「・・・底知れぬ強さを秘めてはいるが、まったく未知数の小紅が復活したのもつかの間、
最終形態へと邪悪な進化を遂げたアイリスこと大魔王の手により、とうとう我らが主人公、くれないは、
思ってたほど活躍することもなく (謎)・・・跡形もなく消し飛んでしまったのだった。。。
ついに、闇の黙示録のページがめくられて・・・人類破滅へのカウントダウンが始まった。。。
たったひとり残されたのは、いまだ覚醒する気配すらない小紅だけである・・・!
いま全ての意志を引き継いで・・・小紅はアイリスと人類の存亡をかけた一騎打ちを仕掛ける !?
では、次回・・・魔王編 -最終章- に御期待下さい。」 ←本当に終われるのか? (謎)
Posted by くれない at 00:00│Comments(0)
│魔王編
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